製品ライフサイクルマネージメントとは何か?:関連寄稿文献(PLM:ProductLifecycleManagement)製品定義(ProductDefinition)の重要性とPLM(ProductLifecycleManagement)動向ここ1~2年の間にPLM(製品ライフサイクルマネージメント:ProductLifecycleManagement)と言う言葉を製品設計の現場でも耳にしていることと思う。PLMとは全く新しい概念なのだろうか?それとも新しいツールなのか?何をしてくれるのだろうか?ビジネスの環境の変化やIT実装の進歩により、ビジネスソリューションは過去のポイントソリューションから企業全体、いや企業間含めてのソリューションへと進んでいる。様々な期待、また疑問があろう。ここではPLMについて動向、それを企業の現場で実践するための基本的事項で避けては通れない製品定義(ProductDefinition)や課題&推奨事項について述べる。1.企業をドライブする製品のライフサイクル?企業の多くは原材料を仕入れ、それを加工することで、製品を生産、在庫、流通することでビジネスを行って来た。一般に言われるサプライチェーン活動である。また、製品の生産にはその製品の企画、設計&詳細設計、試作、生産準備など社内外との設計のコラボレーションを行っている。所謂、デザイン・サプライチェーン活動である。過去の大量生産(MassProduction)のビジネスモデルから、多品種少量(MassCustomization)のビジネスモデルに変化し、更にビジネスのスピードの高速化や顧客含めてサプライチェーンがグローバル化していることは承知の事実である。最近のこの環境に於いて、上工程としての設計と下工程の生産&製造と言う関係が、過去の様にモノを中心とした生産重視のシケンシャルな関係ではもはや市場の競争力を得ることを出来ない。上述のサプライチェーンを含む、企画からフィールドサポート以降までを含む、製品のライフサイクルに於ける様々な活動を社内外共に密に結合することは必須であり、トレンドである。米国CIMdata社では企業のビジネスをドライブする重要なライフサイクルを3つのカテゴリーに大類している(図1:参照)。それぞれのライフサイクルは、以下の様な固有なオペーションにフォーカスする:製品の定義-製品の定義に関する生成とメンテナンス、“知的”資産製品の生産-実際の製品に関する生産とメンテナンス、“物理的”資産運用の支援-人、設備、資金など運用環境図1:企業のドライブする3つのライフサイクル(CourtesyofCIMdata)それぞれのライフサイクルは製品の全ライフサイクルに関係し、製品のアイデアの段階から始まり、製品が完全に終焉を迎える迄、カスタマサポートの必要がなくなるまで、またそれらに関わる情報が不必要になるまで続く(所謂、揺りかごから墓場迄)。製品の定義ライフサイクルは企業の製品定義を表現する知的財産の作成、コミュニケーション、コントールに責任をもつ活動にフォーカスする。このライフサイクルの中で取り扱うものは要件、仕様書、デザイン、技術計算書、解析情報、変更に関する情報、その他の製品定義データとなる。製品の生産ライフサイクルは、企業の生産活動の遂行に必要な資源、技術、スケジュールを中心にしたデータを基に生産のライフサイクルを通してマネージされる。三番目のライフサイクルはビジネスの運用面であり、要員、資産、会計など情報が運用ライフサイクルを通して取り扱われる。3つの分離したライフサイクルだが、実体はそれらが互いに緊密に統合されてなければならない。それらライフサイクルの間の調和、コミュニケーション、そしてコラボレーションの必要性、そしてシリアルでなくパラレルであることは言うまでもない。このコンセプトは業界の中で良く理解されていることであり、また異なった表現でも語られている。しかし、製品の定義にポイントを当てると、新製品を創る基であり、品質やコストを左右する企業の利益を生み出す知的資産でありながら、中々企業の中で理解されてない部分でもある。製品の定義には機構系CADだけではなく、電気系、ソフトウエア、そして様々な文書が必要であり、重要なことは明確な形での製品への要件があっての製品の定義である。2.企業は何で商いをしているか、知的資産:製品定義とは?企業の日々の生業(ビジネス)を考えてみよう。材料を仕入れ、加工し、組み立てて、物流に流す、そして保守と、所謂、サプライチェーンであり、材料を仕入れるインバウンド・サプライチェーン、製品を流通させるアウトバウンド・サイプライチェーンとなる。これらは、上述の“製品の生産”であり、企業に於ける“物理的”資産である。企業の多くはこれらのサプライチェーンに対する最適化、すなわち在庫の圧縮、流通の効率化を高めることを図って来た。これは過去のモノ不足時代の大量生産のビジネスモデルでは企業の利益に貢献をした。しかし、時代が変化し、消費者の多様なニーズ、更にグローバル化など環境変化に俊敏に答えるために設計をも巻込んだサプライチェーン、すなわち切れ目のない、またはコンカレント(またはサイマル)な、製品定義情報の“一気通貫”システムや仕組が必要となって来た。そこで、“物理的”資産である製品の生産に際して、どのように要件を満たすのか、どのように造らなけれならないのか、どのように品質を高めたらよいのか、そして保守はどうするなどの原点はどこにあるのだろうか?それは明確な要件定義、それに基づく構想設計、詳細設計、製造プロセス、検査基準などである(多くは形骸化され社内標準などで定められていることだろう)。もしくは設計&製造現場の担当者の中に刻み込まれたりしている場合もあろう。これらが“知的”資産であり、製品の定義と言ってよい。この定義が曖昧であれば、製品の生産に於いて、曖昧なモノが産まれるだろう、または生産現場で手直しということになる(実はこの生産現場での手直しもある意味では品質を設計側にシフト出来る要素であると筆者は考える)。この“知的”資産のマネージメント&プロセスを確実に行うことにより、設計と生産の距離を限り無く近付け、材料&資材の無駄の無い手配、そして再利用を促し、また変更管理も各組織、更にパートナーを含んで利益を得る仕組を作り上げることが出来る。企業の財産はここにある訳で、“知的”資産と言われる所以であり、企業のモノづくりの原点でもある。それでは製品の定義とは具体的にどんなものなのか?一例として、米国ICM(InstituteofConfigurationManagement)が提唱し、実装が進んでいるCMII手法を参照する。この手法自体は古典的なConfigurationManagementに溯る。主にDoD(U.S.DepartmentofDefense)に代表される軍関係や航空宇宙などの分野での利用により、その目的のために管理体系が作られていた。所謂、管理のための管理であり、また紙ベースでもあった。しかし、この手法は製品定義のライフサイクルのマネージメント手法と言う点で定着しており、広く米国(並びに欧州)で現場の技術となっており、産学でもカリキュラムが作られている。昨今のモノづくりの現場で、ProductConfigurator、ProductionProcessConfiguratorとかSaleseConfiguratorなどが存在するバックボーンでもある。ICMでは古典的なConfigurationManagementを独自に発展させ、昨今の環境の変化に対応すべく企業のビジネスプロセスの改善(利益を創出する)への手法=CMIIプロセスを開発し、彼自身のコンサルティングビジネスに使用し、またモノづくり現場での実装の手法の訓練のワークショップを通じて実装技術者の認定制度(全世界で約3,000人を超える。筆者もその1人)を進めている。CMIIプロセスには多くの基本的な手法があり、その一つとして図2の製品定義(物理アイテムの階層)を参照いただきたい。非常に単純ではあるが製品定義の基礎の全てを含んでいる。最上位は要件の明確化であり、当該製品への要件は何か、例えば、性能、仕向け地の規格(法的なものなど)、製造要件、諸々のものがあるが、当該製品&企業のビジョンによって決まるものである。これが製品の全てを決定する。図2:製品の定義:例、物理アイテムの階層(CourtesyofICM)この要件をベースをしたデリバリーアイテム、すなわち最終製品についての定義である。それには実装機能等どのような働きをするか、どのように造るかなどを明確にする。これらはブツとしのモノづくりではなく、所謂、論理的なブツを造ることを意味する。そして実際の構成展開となるが、ここでは大きく、「Make」と「Buy」に大別して展開を図る。前者は内製品であり、後者は標準品とか購入品であり、それらに附随する固有の各種ドキュメント(要件、機能仕様、検査仕様、品質、製造プロセス、図面など諸々)が結び付けられる。そして、これらの製品定義を基にライフサイクルマージメント(変更管理)を進めようと言うものである。この製品定義が、古典的な例として、フロッピーディスクを考えてみよう。要件から構成展開までが、教則本のように同じものが出来るかと言うと、それは各企業によって異なる。理由は企業のビジネスのビジョンである。ある企業は樹脂の材料までの展開を、ある企業はラベルだけで他は購入品であるかも知れない。ビジネスのビジョンあっての製品定義であり、構成展開である。モノづくりの現場からはそんなものをやっても品質だか実際の手順は、ブツを目の前にしてやると言う声が聞こえそうが気がするが、実はそれらも現場のノウハウであり、形骸化して行かなければ伝承も出来ないし、パートナーとのコミュニケーションも今の時代では期待出来ない。ICMのこのCMIIプロセスは製品の定義の手法だけでは実現するものでない。要件定義、構成展開、品番体系、変更管理の手法、クローズドループ・プロセス、QCD改善策、ライフサイクル&トレーサビリティ、計画管理、PDM/ERP他を含むシステム実装課題、更に組織的な改善(BPRそのものではない)を含めてのトータルな手法であることを明記しておく。尚、ICMでは独自に彼らのCMIIプロセスを満足するアプリケーションを認定しており、ベンダーの対応も充実してきた。これについては表1:CMII認定アプリケーションを参照されたい。3.PDM、そしてPLMへと企業のライフサイクル、また一つの要素である製品定義について、ビジョンや手法面から簡単に説明したが、本来でこれらを実践するための一つの製品データ/定義マネージメント(PDM)が長き渡りに語られ、利用され、存在し、PDMと言う言葉が定着して来た。業界では、同様にその中で製品ライフサイクルマネージメントについて、既に語られて来ていたことは承知の事実であろう。それでは最近表面に出て来たPLMとの関係はどうなっているのだろうか、また、違いはあるのだろうか?PDMと言う言葉が定着したのが1995年くらいであろう。それ以前はPIMやEDMなど多くの事が存在した。最近では、業界(ユーザー&ベンダー両方)で製品データ、いや製品定義情報を昨今のインターネット&グローバルなビジネス環境に対応させるため、更に如何に効率的に且つ正確に製品を創り&マネージメントをライフサイクルを通して統合的に行うために以下の様な多くの言葉が業界の中で発信されるようになった:製品ライフサイクル(ProductLifecycle)製品定義(ProductDefinition)コラボレーティブプロダクトコマース(CPC)製品ナレッジマネージメント(PKM)製品データ/定義マネージメントCAE/CAM/CAE、MCAD、EDA、CASEコラボレーションコラボレーティブマニフ