1事業事前評価表(技術協力プロジェクト)作成日:平成21年3月16日担当部署:農村開発部乾燥畑作地帯第二課ブルキナファソ事務所1.案件名ブルキナファソ国「養殖による農村開発促進計画」2.協力概要(1)プロジェクト目標とアウトプット本プロジェクトでは、ブルキナファソ国(以下、ブ国)の自然・社会経済条件に合った適切な内水面養殖手法及びその普及ガイドラインを、パイロットプロジェクト等の実施を通じて取りまとめると共に、その過程を通じて関係者の能力向上を図り、ブ国農村部において養殖普及を推進するための体制を整備する。(2)協力期間:2009年6月~2012年6月(3年間)(3)協力総額(日本側):2.5億円(4)協力相手先機関協力実施機関:農業・水利・水産資源省水産資源総局(DGRH)対象地域の同省州事務所及び県事務所(5)国内協力機関:農林水産省(6)裨益対象者及び規模:【候補対象地域】バゼガ県、ウエ県、カディエゴ県、ケネドゥグ県、ウブリテンガ県、ズンドェゴ県、コモエ県、サンギエ県、サンマテンガ県、グルマ県、ブルグ県(プロジェクト開始当初の現況調査にて、対象地域を6県程度に絞り込む)【直接裨益者】・水産資源総局技官17名・州事務所及び県事務所の水産担当技官および普及員(対象地域6県)39名・農漁民グループ(対象地域6県)18グループ約450名【間接裨益者】・プロジェクトサイト周辺住民3.協力の必要性・位置付け(1)現状及び問題点ブ国は、西アフリカの内陸に位置し、国土面積は274千km2(日本の70%)、人口は約13.6百万人である(2006年)。比較的良好な経済成長にもかかわらず広範な貧困状況は依然として改善されておらず、人間開発指数は0.370と177カ国中176位に位置する最貧国の1つである(2007年)。国民の46.5%が貧困ライン以下の生活水準にあり、特に人口の80%が生活する農村部の貧困率は52.3%と高くなっている(2003年)。これは、農村部の低い成人識字率(23.6%)、高い乳幼児死亡率(10%)、困難な安全な水へのアクセス(61%)に顕著に現れている。2ブ国の2006年の水産物消費量は30,500tであり、そのうち輸入水産物が21,000tを占めている。国内生産量は8,000~10,000t/年で推移しているが、その内養殖による生産量はわずか300t/年に過ぎない。ブ国における養殖は、1979年にバゼガ養殖センターが建設されたことに始まり、その後いくつかの養殖プロジェクトが実施されたが、未だ根付くには至っていない。ブ国は「水産資源の管理・開発に関する国家戦略と優先計画(SNPPDGRH)」(2003年)に基づき、養殖施設(5箇所)の活用、河川やダム貯水池への稚魚放流、飼料生産センター整備、水産物流通システムの強化、ダム貯水池での囲い網養殖試験などの事業を行っているが、十分な成果を上げていないのが現状である。このような状況のもと、ブ国政府は農牧主体の農家経営に養殖活動を導入し、農村地域の貧困削減と食糧安全保障を目指す技術協力プロジェクトを我が国に要請した。(2)相手国の政策上の位置付けブ国政府は、2000年に貧困削減戦略(CSLP)を策定し、その実施に向け、農業分野においては2004年に「2015年に向けた農村開発戦略(SDR)」を策定している。なお、水産セクターでは、これら上位計画に基づいた「水産資源の管理・開発に関する国家戦略と優先計画(SNPPDGRH)」が策定され、優先プログラムとして①漁業生産量の増大、②養殖振興と水産物生産の多様化、③水産物の付加価値の向上、④参加型の水産資源管理の促進、⑤漁業関連産業従事者の能力強化を挙げている。本プロジェクトは、このうち②養殖振興と水産物生産の多様化に位置づけられる。(3)我が国援助政策との関連、JICA国別事業実施計画上の位置付け本プロジェクトは、協力プログラム「農業・農村開発プログラム」のコンポーネントに位置づけられ、水資源(水産資源)の有効活用を通じて、農村部の栄養改善に貢献することを目的とする。(4)他ドナーとの関係台湾は、集約的な養殖センターの設置・運営を行う「バグレ養殖プロジェクト(PEP)」、養殖関係者の能力強化を目的とする「水産業活動支援プロジェクト(PACAFA」を実施すると共に、水産物流通と漁具へのアクセス改善の拠点となる「水産物調達流通センター(CADIPP)」の整備を行っている。また、FAOによる水資源の有効活用を目指す農業集約化プロジェクト(PIAME)、DANIDA(デンマーク)による地域ごとの農業開発支援プログラム(PADAB)も養殖活動をコンポーネントとして含んでいる。これら既存案件の成果・教訓は、本プロジェクトの実施において参考となる。4.協力の枠組み本プロジェクトでは、ブ国農村部において小農が実践可能な内水面養殖手法及びその普及ガイドラインを、粗放養殖と半集約養殖を中心に取りまとめる。また、その過程を通じて、水産担当技官、普及員等の能力向上を図り、養殖普及を推進するための体制を、計画作成と3人材育成の両面から整備する。〔主な項目〕(1)協力の目標(アウトカム)1.協力終了時の達成目標(プロジェクト目標)と指標・目標値【プロジェクト目標】対象地域において養殖普及を推進するための体制が整備される。【指標】1.養殖手法及びその普及ガイドラインに基づく具体的な普及計画が、農業・水利・水産資源省において承認される。2.同普及計画の実施に必要な人員(水産担当技官○○名、普及員××名)が育成される。2.協力終了後に達成が期待される目標(上位目標)と指標・目標値【上位目標】対象地域において、養殖が農・漁民によって持続的に実践・普及される。【指標】2017年までに対象地域において、●●サイトで養殖が実践される。(2)成果(アウトプット)と活動成果1:対象地域において適切な養殖手法が提示される。【活動】1-1候補対象地域1(11県)の土地条件、気候条件、農・漁民グループの状況、養殖実施状況、水産物販売状況、種苗・餌料入手先等にかかる現況調査を実施する。1-2過去の養殖プロジェクトについて、その成功要因・失敗要因を分析する。1-3上記の結果を基に、対象地域を6県程度選定する。1-4関係者(水産担当技官、普及員等)を対象に、パイロットプロジェクトを適切に実施するための基礎的研修を行う。1-5粗放養殖のパイロットプロジェクトを実施・モニタリングする。1-6DGRHが現在実施している半集約養殖(囲い網・網生け簀養殖)の問題分析と現地に適応した手法への改良を試みる。1-7パイロットプロジェクト関係者を対象に、他の優良事例サイト等の視察研修を行う。1-8パイロットプロジェクト等の結果を分析する。1-9対象地域に適した養殖手法2を取りまとめる。【指標】・粗放養殖のパイロットプロジェクト及び半集約養殖の技術改良が△△箇所で実施・モニタリングされる。・適切かつ具体的な養殖手法が提案される。1候補対象地域は、粗放養殖パイロットプロジェクトが実施可能なこと、DGRHの養殖普及の既存サイト、アクセス状況、DGRHの優先度、裨益者の活動状況を考慮して選定した。2対象地域において奨励すべき養殖技術及び経営のポイントから構成される。4成果2:対象地域における養殖普及ガイドライン3が作成される【活動】2-1養殖普及の方策を検討するため、専門家とC/Pがギニア・ベナンなど近隣国の視察を行う。2-2成果1の結果を踏まえ、養殖実践マニュアル等の普及ツールを作成する。2-3対象地域における養殖普及ガイドラインを提案する。2-4上記ガイドラインに基づいた、養殖普及のための人材育成研修を行う。【指標】・養殖実践マニュアル等の普及ツールが農業・水利・水産資源省において承認される。・養殖普及ガイドラインが対象地域□□県分作成される。・水産担当技官■■名、普及員△△名が研修を受ける。(3)投入(インプット)①日本側(総額約2.5億円)・長期専門家①チーフアドバイザー/養殖、②業務調整/研修・短期専門家①餌料生産②種苗生産技術・本邦または第三国研修員年間1名程度(養殖技術)・供与機材車両、バイク、パイロットプロジェクト実施に必要な機材等・プロジェクト活動費パイロットプロジェクト実施に必要な費用、研修用資料・教材の作成、ローカルコンサルタント傭上等②ブ国側カウンターパート人件費、施設・土地、プロジェクト実施に必要な費用(日本側現地支出額の約10%)(4)外部要因(満たされるべき外部条件)1)前提条件①ブ国側のプロジェクトに関わる予算が確保される。②プロジェクト実施に必要な種苗が適期に十分供給される。2)成果達成のための外部条件プロジェクト関係者が何名も離職しない。3)プロジェクト目標の達成のための外部条件ブ国の養殖振興政策が変化しない。4)上位目標達成のための外部条件プロジェクトに影響する大規模な自然災害等が起こらない。3対象地域において養殖を普及する際の基本的な方針(ターゲットの選定、アプローチの方法、養殖手法の選択等)及び留意点を取りまとめたもの。55.評価5項目による評価結果(1)妥当性本プロジェクトは、以下の理由から妥当性が高いと判断できる。(政策との整合性)・本プロジェクトの目標及び活動内容は、「2015年に向けた農村開発戦略(SDR)」の戦略目標である「農業生産の増加と多様化」とその水産分野に係る優先活動として挙げられている「養殖振興と水産物生産の多様化」に合致する。(我が国との関係及び技術の優位性)・我が国は2005年以降、農業・農村開発政策アドバイザーの派遣及びJOCV養殖隊員により粗放養殖パイロットプロジェクトを実施すると共に、その成果をセミナーを通じて水産担当技官に還元してきた。加えて、2007年に短期専門家を派遣し養殖ポテンシャルを調査する等、既に養殖に関する協力の実績を有している。また、同じ西アフリカ地域のギニア・ベナンで先行する養殖技術協力で蓄積した経験や教訓を活用することが可能である。(アプローチの妥当性)・ブ国においては養殖が一般的ではないことから、対象地域の地域的特性を踏まえた粗放的な養殖の試行を中心としつつ、現在実施されている囲い網・網生簀養殖の問題分析と現地に適応した手法への改良を模索し、一つのプロトタイプを確立していく本プロジェクトのアプローチは適切である。(2)有効性本プロジェクトは、以下の理由から有効性が見込まれる。・プロジェクトの実施を既存の水産行政体制を活用して行うことにより、ブ国の現状に沿った養殖手法や普及ガイドラインの策定が期待できる。(3)効率性本プロジェクトは、以下の理由から効率的な実施が見込まれる。・多くの投入を必要としない粗放的な養殖形態を中心に試行すること、半集約養殖については実施機関の既存サイトを活用し、技術形態を実証することから、機材等の投入を必要最小限に抑えることが可能である。(4)インパクト本プロジェクトのインパクトは以下のように予測できる。(面的拡大)・養殖の普及のためには、創意工夫を通じて現地に適応した普及形態・手法を確立することが不可欠であり、本プロジェクトによりプロトタイプが確立できれば、他ドナーの養殖振興への関心、利用できる水域数・面積からも、早期面的展開の可能性は高いと考えられる。(5)自立発展性以下のとおり、本プロジェクトによる効果は、相手国政府によりプロジェクト終了後も継続さ6れるものと見込まれる。(政策面)・本プロジェクトは、政府が策定した「農村開発戦略」、「水産資源の管理・開発に関する国家戦略と優先計画」に基づき、養殖の普及を支援するものである。中長期的な政策に当面変化はなく、本プロジェクトの効果が継続・拡大されていく可能性が大きい。(技術面)・ブ国の自然条件、農村部の地域的特性に配慮したその土地に適した養殖手法を採用することにより、技術面での自立発展性は高いと思われる。・餌料に関し現地で調達可能な材料・