111.1.51,300kW4,600kWIPP561321121.2.212183451.3.SISI21第2章第2章第2章第2章新技術等の概要新技術等の概要新技術等の概要新技術等の概要2.1.ゴム引布製起伏堰の利用技術の確立(昭和(昭和(昭和(昭和60606060年度~平成7年度調査)年度~平成7年度調査)年度~平成7年度調査)年度~平成7年度調査)概要分類昀終成果の形態キーワード適用範囲ゴムダム、可動堰、ゴム引布製起伏堰、自動倒伏、資機材合理化、設備合理化、施工性向上、保守管理省力化、電力量増加、堆積土砂排除、沈砂池省略、落差拡大、洪水位上昇防止、湛水池容量維持昀大扉体高さ6m、昀大径間長50m程度ゴムダムは、ゴム引布製の袋体に空気又は水を注入して膨らませたものを扉体とする可動堰である。洪水時の自動倒伏機能を有しているため、湛水池内に堆積又は流入する土砂の流水による自然排除が可能であり、その結果ダム上流の河床及び洪水位の上昇防止、湛水池容量の維持が期待できる。このゴムダムを水力発電設備として利用した場合、湛水池容量の維持により沈砂効果が期待できることによる沈砂池の省略、ダム高の利用による落差の拡大、湛水容量を利用した調整運転による発電電力量やL5出力の増加、操作機構が単純で信頼性が高いことによる倒伏・起立操作の自動化・遠隔化、優れた耐久性による維持管理の省力化、などが可能となる。本技術開発は、ゴムダムのこれらの機能を高度に利用し、中小水力地点の経済性を高めようとするものである。222.1.1.新技術の概要(1)目的ゴムダムの自動倒伏機能を水力発電に利用することにより、取水ダムの湛水池容量の維持、その結果としての沈砂効果による沈砂池の省略、ダム高の利用による落差の拡大、湛水容量を利用した調整運転による発電電力量やL5出力の増加、操作機構が単純で信頼性が高いことによる倒伏・起立操作の自動化・遠隔化、優れた耐久性による維持管理の省力化などが期待できる。本技術開発は、ゴムダムのこれらの機能を高度に利用し、中小水力地点の経済性を高めようとするものである。図図図図2222----1111----1111ゴムダム概要図(平面)ゴムダム概要図(平面)ゴムダム概要図(平面)ゴムダム概要図(平面)図図図図2222----1111----2222ゴムダム概要図(正面)ゴムダム概要図(正面)ゴムダム概要図(正面)ゴムダム概要図(正面)23図図図図2222----1111----3333ゴムダム概要図(断面)ゴムダム概要図(断面)ゴムダム概要図(断面)ゴムダム概要図(断面)(2)適用上の基本条件ゴムダムを流れ込み式水力の取水ダムとして適用する場合の基本条件は、以下のとおりである。ダム高及び径間長の決定については、現地河川の諸条件を十分に検討してその限界が決定されなければならないが、現時点では現地における袋体の接着等の実績がなく、工場で完成体まで製作されてから現地に搬入され下部工に取付けられるので、工場から現地までの運搬条件(昀大積載重量)をも考慮する必要がある。a.ダム高(ゴム袋体高さ)ゴムダムの高さの限界は、洪水時の土砂竹木等による倒伏阻害に対する影響を考慮して決定される。技術的には10m程度まで作成可能と考えられるが、実質的には6m程度が限界であるとされている(黒谷大型ゴムダム検討委員会((社)ダム・堰施設技術協会))。b.径間長(河川横断方向の長さ)1基のゴムダムの径間長の限界は、技術的には100mを越えるものも製作可能(実際にアメリカにおいては100mを越えるものも存在する)であるが、我国の河川の状況を考えると、効率的に土砂等を排除するためには50m程度が限界と考えられている。(3)採用に当たっての検討事項ゴムダム採用に当たっては、以下の基本事項について検討を実施し、ゴムダムを採用するうえでの基本構想(目的)を明確なものとする必要がある。a.堆砂形状沈砂池省略の可能性、上流河床の上昇抑制効果、利用落差拡大の検討を行うための基礎資料を得ることを目的として、堆砂形状(平衡河床形状)の推定を行う。b.湛水池内の沈砂効果沈砂池省略の可能性について検討するために、浮遊砂濃度の縦断、鉛直分布及び掃流砂の移動層厚を推定することによって湛水池の沈砂効果を評価する。24c.河川への治水的影響ゴムダム操作は、ダム上・下流の河道に対して治水上問題の生じない条件の下で行なわなければならない。このため、ゴムダムの起伏による下流河道ネック断面の水位変動量及び上流河道の洪水位を検討し、治水上の制約条件を満足するようにゴムダムの操作条件を設定しなければならない。d.沈砂池の省略の可能性湛水池内の沈砂効果及び取水口流入許容土砂条件などを考慮して、沈砂池省略の可能性を判断する。e.上流河床の上昇抑制効果堆砂形状(平衡河床形状)の検討結果及び上流洪水位の計算結果より、上流河床の上昇抑制効果を評価する。f.利用落差の拡大効果洪水時の浸水問題等により、上流断面の洪水位あるいは河床高が制限される地点においては、固定ダムの場合に比べて利用落差の拡大を図ることができるため、その効果を検討しなければならない。g.運転管理の省力化倒伏・起立機構の自動(遠隔操作)化、維持管理の容易性など、運転管理の省力化の効果について評価する。h.関連法規との関係関連諸法規を熟知し、マニュアルの趣旨を十分に考慮して検討する。(4)期待し得る効果ゴムダムは、流れ込み式水力の取水ダムとして用いた場合、以下のような効果を期待することができる。・1基当りの径間長が長い(昀大50m程度)ため、多くの場合中間にピアーが必要なく河道のほぼ全幅を1径間とすることが可能である。さらに、敷高を河床に近い高さとすることにより、ゴムダム倒伏時の通水断面を従前の河川横断面に近づけることができるため、河道の従前の洪水疎通能力をほとんど阻害しない。したがって、湛水池内に堆積する土砂及び流入する土砂を流水により自然に排除することが可能であり、その結果、ダム上流の河床及び洪水位の上昇防止、湛水池容量の維持が期待できる。・上記の効果により、浸水問題等によりダム高が制限されるような地点においては、固定堰に代えてゴムダムを用いることにより、洪水位を抑えたうえ、ダム高相当分の利用落差の拡大を図ることができる。・上記の効果により、湛水池は常時ある程度の池容量を維持でき、一定の沈砂効果を持つと考えられることから、沈砂池を省略できる可能性がある。25・操作機構が単純で信頼性も高く、操作の無人化が可能となるため、運転・操作・管理に関わる経費節減を図ることができる。・ゴム袋体は、工場製品であり現場では据付工事のみとなることから、工期の短縮が期待できる。また、軽量であるため搬入・据付が容易である。・なお、水位変化による袋体の変形、Vノッチ現象の発生など、ゴムダムの柔構造に起因する現象から、水位制御や放流量制御などの機能については従来の形式の取水ダムに比べてやや劣る。(5)検討経緯本技術開発の検討経緯は、以下のとおりである。a.新利用構想の技術的検討(昭和60年度)b.ケース・スタディ地点及び検討項目の選定(昭和60年度)向山計画地点、丹波計画地点、只見第二計画地点を対象に検討c.問題の抽出・対策の評価(昭和60年度)d.基本設計・経済性評価(昭和60年度)e.技術基準(案)の作成(昭和61~63年度)技術基準(案)概成の検討f.実証プラント設計(昭和62年度)実証地点(黒谷計画地点)を選定し、基本設計を実施g.実証試験要領(案)作成(昭和62~平成元年度)h.模型実験(昭和63年度)マニュアル内容の充実を図るために模型実験を実施i.実証試験(平成2~6年度)電源開発・黒谷発電所取水ダム(径間長34.5m、ダム高6.0m、出力19,600kW)にて実施された。j.実証試験データの分析・評価(平成6~7年度)k.設計・運転操作管理に関するマニュアル(案)の作成(昭和61~平成7年度)設計基準等の充実262.1.2.経済性に関するケース・スタディ結果(1)ケース・スタディ対象地点の概要ケース・スタディは、向山地点(日置川水系日置川)、丹波地点(多摩川水系多摩川)、只見第二地点(阿賀野川水系只見川)の3地点を対象として、ゴム堰案と固定堰案などとの経済性を比較した。対象地点の概要は、表表表表2222----1111----1111のとおりである。表表表表2222----1111----1111ケース・スタディ対象地点の概要ケース・スタディ対象地点の概要ケース・スタディ対象地点の概要ケース・スタディ対象地点の概要163.0(km2)119.7(km2)1802(km2)()450m3/Y/km2353m3/Y/km2140m3/Y/km21/1701/801/1301/2404080m4080m15030080100d651)10cm2)8.5cm12cm10cm15cm1.3cm1)d6565%2)(2)ケース・スタディの検討手順ケース・スタディは以下の手順に従い、対象地点ごとに実施した。①現地調査結果より、堆砂シミュレーションモデルを用いてゴム堰に対する堆砂形状の経年変化を予測する。②ゴム堰による湛水池内の沈砂効果を浮遊砂濃度分布計算により確認し、沈砂池省略の可能性を判断する。また、Saltation(掃流砂の移動形式のひとつで、河床面を跳躍しながら流送されるものをいい、跳躍高さを掃流砂の移動層厚と考えることができる。)計算により、取水口敷高の検討を行なう。③ゴム堰上流の河床上昇から、既設道路、家屋などの洪水時浸水の可能性を判断して、利27用落差拡大の可否を判断し、拡大可能な場合についてはそれにともなう増分発電電力量を計算する。④湛水池内の有効容量を利用した調整運転(高効率運転)を検討し、発電電力量を計算する。⑤以上の検討項目を総合し、さらに固定堰、ゴム堰、鋼製ゲート堰について比較検討ケースを設け、経済性を比較し、その効果を把握する。⑥ゴム堰のゴム部高さは、全て実証試験により安全が確認された5mとして検討する。(3)経済性の比較結果a.向山地点向山地点については、検討ケースとして固定堰案、ゴム堰案(流れ込み式、調整池式)、鋼製ゲート堰案(流れ込み式、調整池式)の5ケースについて検討を行なった。各ケースの条件は、表表表表2222----1111----2222のとおりである。表表表表2222----1111----2222向山地点の検討ケースと条件向山地点の検討ケースと条件向山地点の検討ケースと条件向山地点の検討ケースと条件経済性比較の結果は表表表表2222----1111----3333のとおりであり、検討ケースの内kWh当り建設単価で昀も経済的となるのはB-1のゴム堰案(流れ込み式)のケースであり、沈砂池の省略、利用落差の拡大(4.2m)の効果により固定堰A案と比較して、建設単価を約6%低減することが可能となる。なお、表表表表2222----1111----4444に向山地点の工事費の内訳を示す。28表表表表2222----1111----3333向山地点の経済性比較結果向山地点の経済性比較結果向山地点の経済性比較結果向山地点の経済性比較結果B.C.A.B-1B-2C-1C-2()4,1354,4354,4054,4854,45518518536539962326232PkW2,7003,1002,9003,1002,900EMWh14,37716,35615,86416,35615,864L5kW9031,0291,3171,0291,317/kWh28827127827428160表表表表2222----1111----4444向山地点の工事費内訳向山地点の工事費内訳向山地点の工事費内訳向山地点の工事費内訳1821821826060601221221227979795959592020202,2842,5082,5521,7111,8891,9