VS-2-1当科における腹腔鏡補助下肝切除術の標準化の試み広島大学大学院先進医療開発科学講座外科学大下彰彦、板本敏行、天野尋暢、黒田慎太郎、田澤宏文、谷本新学、小林剛、田代裕尊、浅原利正、大段秀樹【緒言】近年、開腹下肝切除の豊富な経験と手術器具の目覚ましい進歩から、腹腔鏡(補助)下肝切除の症例数も増加傾向にある。しかし、その手術手技は各施設でさまざまであり、未だ標準術式が確立されていないのが現状である。【目的】今回我々は、当科における手術手技を供覧し、腹腔鏡(補助)下肝切除の標準術式確立に向け討論したい。【適応】腫瘍は腹腔鏡でApproachできる肝区域に存在。良性腫瘍の場合は腫瘍径を考慮に入れず、悪性腫瘍の場合は腫瘍径3cm以内(突出型は5cmまで可)、画像上、単純結節型で脈管浸潤がないことなどである。背景肝の肝機能は開腹手術と同様に、予備能で術式を判断している。【手術手技】当科での腹腔鏡補助下肝切除は、シンプルに腹腔鏡下の肝の脱転と小開腹下の肝離断で構成される。肝の脱転は、右葉、左葉いずれの場合も、LCSを用いて鎌状間膜と三角間膜、冠状間膜を切離して行う。肝離断は空気塞栓を予防するため小開腹下に行い、Gaslessとする。肝離断に先立つ前凝固は肝の線維化が著明な症例に対して行い、マイクロ波、ラジオ波、TissueLinkなどを使用する。肝離断は小開腹下に行ういわゆるHybridmethodで、基本的に開腹時と同様CUSAとバイポーラーで行う。LCS、TissueLink、VIOなどのデバイスを駆使すると離断時間の短縮につながる。【結果】1996年8月から2009年7月まで26例の腹腔鏡(補助)下肝切除を経験した。手術時間と出血量の中央値はそれぞれ260分、150g、輸血率は3.8%であった。重篤な合併症はなくMortalityは0%、MorbidityはClavien分類のGradeIII以上が2例(7.7%)で、昀近5年間の術後在院日数は平均10.2日であった。【考察】腹腔鏡補助下肝切除は周術期成績も開腹下手術と比べ遜色なく、安全な術式と考えている。今後も適応症例には積極的に導入していきたい。VS-2-2系統的肝切除時の造影超音波による肝切離面判定について社会保険下関厚生病院外科坂田晃一朗、西村拓、岡田敏正、中邑光夫肝切除時における切除領域判定には、一般的にはグリソン阻血法・色素注入法により肝表面変色域から区域間のメルクマールである肝静脈を指標として切離を行うが、特に亜区域切除の折は切離面の一部でその指標を失う事となる。我々は、第二世代造影超音波剤であるsonazoidを用いて、切除領域阻血時或いは非切除領域阻血時にクッパーフェーズにて、切除前には凹凸不正な切離面を同定し理想的な切離面判定を行い、切除後には残肝部血流を同定することで遺残の有無を確かめる事が可能である事を経験した。その実際につきビデオにて供覧し報告する。【症例】HCC(S7・1)。右後区域グリソンテーピングにより後区域変色域を確認。Sonazoidを用いて切除領域阻血時にクッパーフェーズにて、切離面を同定し、色素(インジコカルミン)にてマーキングし、後区域+S1切除術施行。切離後、造影超音波にて遺残の有無を確認。肝切除時にSonazoidを用いた造影超音波検査下に系統的切除を施行した。本法は切離面判定において治療ナビゲーションとして有用であると考えられた。VS-2-3生体肝移植ドナーにおける門脈血流支配領域を考慮した完全左葉グラフト採取手技徳島大学外科学森根裕二、島田光生、宇都宮徹、居村暁、池本哲也、花岡潤、金本真美、岩橋衆一、斎藤裕【はじめに】当科では成人間生体肝移植においてドナー安全性を考慮したSpiegel葉付き拡大左葉グラフトを第一選択とし、グラフト容積の増量を目的とした前区域の一部(medialrightlobe:mRL)を付加している(Transplantation2009)。今回、安全にドナー手術を行うために我々が行っている工夫について供覧するとともに門脈segmentationをもとに門脈左枝灌流領域を検討した。【手術手技】肝門部でグリソン右一次分枝と左肝動脈を昀小限に剥離した後、肝部下大静脈前面の剥離、hangingmaneuver用のテーピングを行う。右グリソンクランプにより確認したdemarcationlineよりも約1cm右肝寄りで肝切離を開始し、前区域枝左縁に沿って綿テープまで行う。これにより肝S5とS8の一部はグラフト側へ加算される。加算された前区域の一部は中肝静脈系のdrainageveinが温存されているため、術後1週間程度で良好なperfusionを呈する。肝実質離断後、左肝管切離予定部位にクリップでマーキングし、胆道造影を施行し切離部位決定する。色素を用いてグラフトおよび残肝の胆汁漏テストを施行した後、胆管切離しグラフト摘出する。【門脈左枝灌流領域の検討】当科における生体肝移植ドナー19人を対象とし、RegionGrowingSoftwareを用い、全肝容量、Linearcuttingによる左葉容量、門脈左枝根部をplotし、門脈segmentationにより門脈左枝灌流容量を測定した。全肝容量1203±217ml、左葉容量416±85g、門脈左枝灌流容量399±83gであった。門脈左枝灌流領域がV8枝分岐部でMHVを越えmRLの一部を灌流する症例は14例(73%)存在し、V8枝と胆嚢床の中間部でMHVを越えmRLの一部を灌流する症例は4例(21%)存在した。MHVとの距離は5.5(4.5-6.7)mm、解剖学的左葉に比べ9.5(1-25)ml増量し、左葉グラフト選択時頭側のmRL付加の有用性が証明された。【まとめ】我々の行っている手術手技により生体肝移植ドナーにおける門脈血流支配領域を考慮した完全左葉グラフト採取が可能である。VS-2-4肝門部胆管癌に対する外科的治療戦略山口大学大学院消化器・腫瘍外科学坂本和彦、飯田通久、徳久善弘、前田祥成、吉田晋、鈴木伸明、為佐卓夫、吉村清、上野富雄、岡正朗肝門部胆管癌の治療法として外科切除が昀も長期生存を期待しうる治療法である。しかし肝門部胆管切除を伴う肝切除は、肝胆膵領域において高難度手術であり、また大量肝切除を必要とすることが多く、術後肝不全が問題となる。当科における根治的かつ安全な切除を目指した肝門部胆管癌に対する外科的治療戦略を紹介する。(術前)肝門部胆管癌の水平・垂直進展範囲は減黄処置前のMDCTで評価する。この時点で切除予定肝を判定し、残肝側への胆道ドレナージを行う。胆汁中の癌細胞の播種を予防するために内視鏡的ドレナージを基本とする。肝機能評価はICG15分値にて行うが、減黄不十分な症例では評価が困難なため、アシアロシンチを用いて評価する。同時に切除後の機能的残肝ボリューム評価も行い、術後肝不全のおそれがある症例には門脈塞栓術を施行する。塞栓2週後にアシアロシンチで再評価を行う。(手術)MDCTの情報を基に主病変側の肝葉切除が行うが、胆管と肝動脈との解剖学的位置関係を考慮し右葉側切除を基本とする。ただし残肝機能的に右葉側切除が困難な場合は左葉側切除+右肝動脈切除再建を行う。(ビデオ)今回、当科で行った肝門部胆管癌切除例における右葉側切除ならびに左葉側切除+肝動脈切除再建症例について供覧する。VS-2-5SingleIncisionLaparoscopicSurgery(SILSTM)による胆嚢摘出術-安全な導入のための手術手技の標準化と初期成績-福山市民病院外科井谷史嗣、吉岡孝、熊野健二郎、野島洋樹、久保慎一郎、浅海信也、佐々木寛、黒瀬洋平、山下哲正、室雅彦、金仁洙、高倉範尚SingleIncisionLaparoscopicSurgery(SILSTM)は、新たな内視鏡手術手技として導入されつつあるが、従来の内視鏡手術に比較して難易度は高く標準化もされていないのが現状である。われわれは2008年12月よりSILSTMによる胆嚢摘出術を開始し現在まで13例に施行してきたなかで,CriticalView(CV)など安全性の確保に必要な手順を得るための手術手技がほぼ標準化出来たので手技および手術成績を紹介する。手術手技:まず臍部を約2cm切開し,VersastepTMニードルを穿刺し気腹後5mmトロッカーを挿入しカメラポートとし,右上にPediportTM,左上にLiNAPORTTMを挿入する。副損傷のないことを確認後に右上腹部よりミニループリトラクタTMを挿入し胆嚢底部を把持展開し,次の3通りのアプローチを用いて手術を施行する。1:パラレルアプローチ(通常の鉗子操作),2:クロスオーバーアプローチ(鉗子を交差し,左手で画面右の鉗子を,右手で画面右の鉗子を操作する),3:クロスハンドアプローチ(クロスオーバーアプローチの手を左右交差して行う)まず右手の把持鉗子をクロスし画面の左で胆嚢を把持し術野を展開する。先端可変式のフック鉗子で胆嚢管、胆嚢動脈を剥離し、criticalviewを確認した後にそれぞれをクリッピング切離す。前半をクロスオーバー、後半をクロスハンドアプローチで胆嚢を切離し5mmポートを12mmポートに入れ替えプラスチックバッグを挿入し胆嚢を摘出する。手術成績胆嚢摘出術:13例(女性6例,63±14歳)の手術時間は93.6±3.2分(49-150)で1例に胆嚢管拡張のため12ポート追加を追加したのみで術中胆汁漏出も軽度のものが1例に認められたのみであった。結石の流出は無かった。criticalviewは全例に確認でき、周術期合併症は無く術後在院日数は4.4±1,3日であった。以上よりSILSは手技を標準化することで安全に施行可能であるが今のところ内視鏡外科学会技術認定医に限定した導入であり、今後の本術式の安全な展開にはトレーニングシステムの構築が急務であると考えられる。VS-2-6SMA神経叢全周温存郭清・膵頭十二指腸切除術(SMAPP-PD)の手技と成績広島大学大学院病態制御医科学講座外科首藤毅、村上義昭、上村健一郎、林谷康生、中島亨、繁本憲文、大毛宏喜、末田泰二郎【目的】近年、膵頭十二指腸切除術における上腸間膜動脈(SMA)神経叢切除を含む拡大後腹膜郭清は難治性下痢により術後QOLを低下し、生存率向上に寄与しないことが証明された。一方、術後補助化学療法としてGemcitabineの再発抑制効果が報告され、膵癌治療は必要充分なR0手術と術後早期の補助化学療法が求められている。膵頭十二指腸切除術における剥離面癌陰性化のためのSMA神経叢を全周温存したリンパ節・神経叢郭清の手技と成績を供覧する。【手術手技】ポイントは動脈先行処理とSMA神経叢全周温存を伴うSMA背側の剥離面癌陰性化にある。膵下縁で上腸間膜静脈(SMV)を露出しSMA神経叢前面を郭清。横行結腸の足側で大動脈前面を露出し後腹膜郭清の左縁を規定。空腸動脈を中枢に辿りSMA神経叢左側面を露出し第1空腸動脈(J1)を結紮切離。左側から大動脈との間のSMA背側組織を可及的に郭清。SMVとの間でSMA神経叢右側面を露出しSMA神経叢ごとテーピング。J1結紮糸を辿り下膵十二指腸動脈(IPDA)との共通幹を結紮切離。胃十二指腸動脈を結紮し膵切離して動脈先行処理。膵鉤部から頭側に向けて門脈分枝を処理しSMA神経叢以外の周囲組織を膵頭部に付けて一括切除。肝十二指腸間膜の郭清を行い膵頭十二指腸を摘出する。【成績】膵頭部領域癌の術前MD-CT診断でSMA神経叢浸潤無を適応とし、2006年10月から53例に施行(門脈合併切除36%)。手術時間中央値362分、出血量中央値1060g、無輸血率87%、術後合併症発症率21%、術後止痢薬使用率13%、難治性下痢なし、R0達成率81%、術後補助化学療法(GEM+S1)83%に施行、開始時期中央値19日、術後入院期間中央値23日。【結論】SMAPP-PDは確実にIP