もともと縦書きの文章を横書きにしているので、文中の右、左を上、下に直して読まなくてはならない部分があります。以下の文章は原文のまま、右、左として書いてあります。連続意見書第一財務諸表の体系について連続意見書第二財務諸表の様式について連続意見書第三有形固定資産の減価償却について第一企業会計原則と減価償却第二商法と減価償却第三税法と減価償却大蔵省企業会計審議会企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書連続意見書第一財務諸表の体系について(昭和35.6)一財務諸表の体系の統一企業が決算に際し作成すべき財務諸表に関して、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下単に財務諸表規則という。)、商法および税法の規定は必ずしも同一ではない。これが企業会計の実務に種々の支障を来たしている現状にかんがみ、これら諸法令における財務諸表の体系を、企業会計原則に示されているものにできるだけ一致するよう改めることが望ましい。二企業会計原則と財務諸表規則企業会計原則は、財務諸表として、次の五つのものをあげている。損益計算書剰余金計算書剰余金処分計算書貸借対照表財務諸表付属明細表財務諸表規則に定める財務諸表の体系は、企業会計原則と実質的には同じである。もっとも財務諸表規則では、欠損金およびその処理に関するものには、特に欠損金計算書および欠損金処理計算書という名称を付している。しかし、これらはそれぞれ、剰余金計算書および剰余金処分計算書の一形態にほかならないので、ことさらに別個の財務諸表であるかのような誤解を招くおそれのある名称を付する必要はないであろう。三企業会計原則と商法商法第二百八十一条は、取締役が定時総会の会日より二週間前に監査役に提出すべき書類として、次の五つのものを挙げている。財産目録貸借対照表営業報告書損益計算書準備金及利益又ハ利息ノ配当ニ関スル議案この規定に基づいて、商法における財務諸表の体系を考察すると、次の諸点が問題となる。1財産目録財産目録が初めて法律上の制度としてとり入れられたもは、債権者の保護、具体的には支払能力の測定を目的としてのことであり、そこでは貸借対照表は、単に財産目録の要約表と考えられていたにすぎない。ここにおいて貸借対照表は、財産目録から作成されなければならないという思想が確立されるに至った。ところが、企業会計において損益計算の重要性が強調されるにつれて、貸借対照表と損益計算書とは有機的関連を保つべきことが認識されるようになった。このためには、貸借対照表をも含めて、財務諸表は、正確な会計帳簿に基づいて作成しなければならない。ここにおいて財産目録と決算貸借対照表との関係は切断され、財産目録は決算貸借対照表作成の手段としての機能を喪失するに至り、現在においては、財産目録は貸借対照表に記載された資産および負債の明細表としての意義を有してはいるが、企業の財政状態の表示としての貸借対照表の機能を充分に発揮させるためのスケジュールの制度が発展するに伴って、決算報告書としての財産目録はその意義を失うに至った。かくて、今日では財産目録は、決算報告書としての財務諸表の体系からとり除かなければならない。2財務諸表付属明細表財務諸表は、企業の利害関係者が企業の財政状態および経営成績に関する判断を行なうための基本的な情報を提供すべきものである。しかし今日の企業は複雑にして、かつ、高度な発展を遂げたので、貸借対照表および損益計算書だけでは、企業に対する正しい判断を行なうのに必要な情報をうることができない。このような事態に対処するための一つの方策としてスケジュールの制度が発達してきた。企業会計原則は、スケジュールの制度の一環として財務諸表付属明細表を財務諸表の体系の中にとり入れている。財務諸表付属明細表は、財務諸表における重要な科目について、期末残高の内訳若しくは期中の増減を明らかにするため、会計帳簿に基づいて作成されるものである。商法は、このような企業会計原則における財務諸表付属明細表を財務諸表の体系にとり入れることを明らかにすることが望ましい。この場合、問題になるのは、企業会計原則における財務諸表付属明細表と商法第二百九十三条の五に規定する計算書類付属明細書との関係である。既に述べたように、財産目録を財務諸表の体系から除外するとすれば、計算書類付属明細書は、財産目録に代って資産および負債の明細表としての役割を果すことが要請されることになる。したがって、計算書類付属明細書は、その内容、作成時期などを再検討し、商法の規定を改めることによって、財務諸表付属明細表と同一の役割を果しうるものとすることができるであろう。3営業報告書営業報告書は、一般に、営業の経過および会社の状況についての文書による報告であると解釈されている。かかる営業報告書は必ずしも会計帳簿に基づいて作成される報告書ではないので、これを財務諸表の体系から除くことが望ましい。なお、商法には、営業報告書についての具体的規定がなく、現に作成されている営業報告書は、その形式、内容ともに多種多様で統一を欠き、また営業報告書が財務諸表の関連書類としての性格をもあわせ有することにかんがみ、営業報告書の作成方法とその記載事項については、新たに規定を設けることが望ましい。4剰余金計算書企業における資本の構成が複雑化するに伴なって、利害関係者が企業の財政状態および経営成績について正しい判断を行なうのに必要な情報を得られるように、剰余金の変動に関する報告書としての剰余金計算書を財務諸表の体系のうちにとり入れることが必要になってきた。特に、毎期の経営成績を正確に報告することをもって、損益計算書の基本的な目的と考える企業会計原則の建前では、当期の営業上の純利益と留保された利益の変動とを区別するために、損益計算書のほかに利益剰余金に関する計算書が必要になってくることはいうまでもない。したがって、商法においても、利害関係者が企業の財政状態および経営成績について正しい判断を行なうことができるように、剰余金計算書の制度又は剰余金計算の観念をとり入れることが望ましい。5剰余金処分計算書「準備金及利益又ハ利息ノ配当ニ関スル議案」には、「準備金及利益ノ配当」という剰余金の処分に関するものと、「利息ノ配当」という剰余金の処分ではないものとが含まれている。したがって、同議案から「利息ノ配当」に関するものを除いた部分は、本質的には、剰余金処分計算書と同一のものである。もっとも財務諸表規則による剰余金処分計算書は、既に確定された剰余金の処分に関するものであるのに対して、商法の規定するのは、いまだ株主総会において承認を得ない未確定のものである。このような違いは、もっぱら、商法が利益処分案を株主総会の決議事項としていることに基づくのであって、両者の間には本質的な差異は認められない。よって、商法は「準備金及利益又ハ利息ノ配当ニ関スル議案」の中から、「利息ノ配当」に関するものを除いた部分を、剰余金処分計算書として財務諸表の体系にとり入れることを明らかにすることが望ましい。四企業会計原則と税法法人税法第十八条第六項および第七項は、法人等が確定申告書に添付すべき書類として、次の四つのものをあげている。財産目録貸借対照表損益計算書法人税法第六条及び第九条乃至第十二条の規定により計算した各事業年度の所得金額の計算に関する明細書並びに当該所得に対する法人税額の計算に関する明細書しかし、このうち最後に掲げるものは税法独自の書類であるので、これを除く財産目録、貸借対照表および損益計算書をもって、法人税法における財務諸表の体系とみることができる。法人税法における財務諸表の体系が、このように、企業会計原則と食い違いがあるのは、主として、法人税法が商法の規定を考慮に入れていることによるものと考えられるので、商法の改正に即応して改めることが望ましい。連続意見書第二財務諸表の様式について(昭和35.6)一財務諸表の様式の統一企業が株主総会に提出するため、有価証券の発行の届出ならびにそれ以後の報告に際して大蔵大臣に提出するため、租税目的によって税務当局に提出するため、その他信用目的などのために、財務諸表を作成する場合、その目的の異なるに従って財務諸表の様式が多少異なることはやむを得ないとしても、基本的には統一された様式によることが望ましい。しかしながら、現在、企業が商法、証券取引法および税法の規定に基づいて作成する財務諸表の様式は、必ずしも同一でなく、このため、企業会計の実務に種々の支障を来たしている現状である。よってこれらの財務諸表の様式を企業会計原則に基づく様式に一致せしめて、できるだけこれを統一することが望ましい。二財務諸表規則による財務諸表の様式証券取引法の規定に従って大蔵大臣に提出する財務諸表の様式は、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則によって詳細に定められている。その標準様式は、企業会計原則に基づく財務諸表の標準様式と原則的には同様であって、特に顕著な差異は認められない。三商法による財務諸表の様式すべての株式会社は、商法の規定によって、貸借対照表と損益計算書を含む計算書類を株主総会に提出し、その承認を得なければならない。しかしながら、これらの様式については、商法中改正法律施行法(昭和十三年法律第七十三号)第四十九条により、「株式会社ノ財産目録、貸借対照表及損益計算書ノ記載方法其ノ他ノ株式ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」と規定されているにもかかわらず、現在に至るまで、命令の制定がないので、よるべき基準が存在しない状態にある。したがって、なるべくすみやかに財務諸表の様式が制定されることが望ましいが、この場合、企業会計原則ならびに財務諸表準則を尊重し、少なくとも、次の諸点を考慮する必要がある。(一)財務諸表の様式を制定するに当たっては、株式会社の規模の大小、業務の相違等の事情を考慮に入れる必要があると思われるが、少なくとも、株主および債権者等の利害関係者に対する重要な資料としての財務諸表の意義にかんがみ、財務諸表に適正な区分を設け、かつ、明りょうに科目を分類して、企業の財政状態および経営成績に関する真実な報告を提供しなければならない。(二)右の点を考慮し具体的に問題となるべき事項としては、次のようなものをあげることができる。1貸借対照表については、資産、負債および資本の三区分を設け、それぞれ、その営業に適した科目をもって正しく分類し、かつ、資産については、流動資産、固定資産および繰延勘定を区分し、また負債については、流動負債と固定負債を区分するものとし、その配列は流動性配列によること。なお、資本の部に関しては資本金と剰余金を明りょうに区別し、特に、当期純利益を明示すること。(1)流動資産の区分に属する科目は、少なくとも、次のように細分すること。現金預金、受取手形、売掛金、有価証券、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品、貯蔵品、その他の流動資産なお、受取手形と売掛金につき、貸倒引当金を設けているときは、貸倒引当金を受取手形および売掛金から控除する形式によって表示すること。(2)固定資産の区分は、有形固定資産、無形固定資産ならびに投資に分かち、これに属する科目は、少なくとも、次のように細分すること。有形固定資産としては、建物、構築物、機械装置、船舶、車両運搬具、工具器具備品、土地、建設仮勘定、その他の有形固定資産無形固定資産としては、営業権、特許権、地上権、商標権、実用新案権、意匠権、鉱業権、その他の無形固定資産投資としては、会計会社有価証券、投資有価証券、出資金、長期貸付金、その他の投資なお、有形固定資産の減価償却については、減価償却費の累計額を減価償却引当金として、当該固定資産から控除する形式によって表示すること。(3)繰延勘定の区分に属する科目は、少なくとも、次のように細分すること。前払費用、創業費、株式発行費、社債発行差金、開発費、試験研究費、建設利息、その他の繰延勘定(4)流動負債の区分に属する科目は、少なくとも、次のよう