第5号(2006年6月)CONTENTS特集保税区企業の区外連絡事務所問題(BTMU上海外高橋保税区セミナー(2006年5月8日)講演録)連載「アジアの一大集積地を目指す広東省の自動車産業」広東省の自動車部品メーカーの動向経済中国経済の現状と見通し産業急増する中国の木材パルプ輸入量上海支店人民元レポート人民元相場8元割れの実情、そして資金市場で懲罰的と噂された中銀債券発行についてスペシャリストの目投資:人材マネジメント法律:無固定期限労働契約の対応の仕方・・その1税務会計:中国の会計・税務人事:中国の給与概況①BTMU中国ネットワークBTMU中国月報第5号(2006年6月)目次特集····保税区企業の区外連絡事務所問題(BTMU上海外高橋保税区セミナー(2006年5月8日)講演録)弁護士法人キャスト糸賀···································································1連載····「アジアの一大集積地を目指す広東省の自動車産業」広東省の自動車部品メーカーの動向三菱東京UFJ銀行香港支店························································16経済····中国経済の現状と見通し三菱東京UFJ銀行経済調査室·····················································21産業····急増する中国の木材パルプ輸入量三菱東京UFJ銀行企業調査部香港駐在······································24上海支店人民元レポート····人民元相場8元割れの実情、そして資金市場で懲罰的と噂された中銀債券発行について·············································································30スペシャリストの目····投資:人材マネジメントUFJ綜研(上海)有限公司················································33····法律:無固定期限労働契約の対応の仕方・・その1リチャード法律事務所··························································37····税務会計:中国の会計・税務プライスウォーターハウスクーパース中国······························39····人事:中国の給与概況①パソナグループ・パソナ上海················································43BTMU中国ネットワーク············································································47BTMU中国月報第5号(2006年6月)エグゼクティブ・サマリー特集今号は注目を集める「保税区企業の区外連絡事務所問題」を特集しました。これは当行主催「上海外高橋保税区セミナー」での弁護士法人キャスト糸賀の講演・質疑応答の議事録です。区外事務所問題発生の経緯、法的問題を指摘した上で、対応方法を、コンプライアンスの観点から企業の業容や状況ごとに分類して提示しています。その上で自社に適したスキームを決定する高度なビジネス判断が求められるとしています。資料として関連法規の比較も掲載しており、皆様の業務展開にご利用いただけるものと思います。連載「アジアの一大集積地を目指す広東省の自動車産業」は、広東省の自動車産業の現状をレポートする連載第2回目で、今回は部品メーカーを採り上げています。売上げは2004年で前年比5割増で更なる伸びが見込まれること、部品メーカーに部材を供給する二次部品メーカーの進出が活性化していること、広東省はOA、PCなど電器・電子産業集積が存在していた効果から、車体電装品メーカーの厚みが他地域比突出していることなどの特徴を指摘しています。経済「中国経済の見通し」は当行経済調査室の見通しです。11次5カ年計画で安定成長路線を打ち出したものの拡大至上主義からの脱却は難しく、当面は投資・輸出の伸び低下による小幅な景気減速に留まると見ています。2007年までに関しては規制緩和が限定的でかえって政府の危機管理能力が高く、経済面でのリスク顕在化の可能性は低いとしています。産業「急増する中国の木材パルプ輸入量」は世界的需要逼迫の原因とされる中国製紙メーカーの木材パルプ輸入急増が、世界第二位の紙消費国となった中国の需要、ファッション誌などカラー印刷普及による上質紙ニーズの向上、一方での生産設備の整備の遅れによると指摘し、対応策としての自給化の動きや植林企業への優遇策につき解説した上で、優遇策を利用する外資企業の実例などを示しています。上海支店人民元レポート「人民元相場8元割れの実情、そして資金市場で懲罰的と噂された中銀債券発行について」は、1ドル8元割れは政治イベントと関連が薄いと見られていること、国営商業銀行上場に伴う為替ポジションが相場動向に影響を及ぼす可能性が高いことを指摘。また、資金市場で貸出拡大への警告として貸出急増金融機関に対して行われた懲罰的とされる債券発行にも言及しています。スペシャリストの目投資「人材マネージメント」はUFJ綜研(上海)の人材マネージメントコンサルタントが新人社員教育の重要性とポイントについて説明しています。重点としてプロフェッショナルマインドと業務スキルをあげ、OJTに頼りがちな日系企業のリスクにつき触れたうえで、外部講師の活用や総経理の関与の必要性を述べています。税務会計「中国の会計・税務」は、①中国の売上げ計上基準、②在庫及び経費に関する購買業務の管理、③移転価格文書の作成を求める規定、④M&A、純資産調査、についてをそれぞれQ&A形式で回答しています。法律「無固定期限労働契約の対応の仕方...その1」は、中国進出10年を超え、労働者から無固定期限労働契約の締結を要求される事例が多くなっていることを踏まえ、その法的背景や問題点を説明した上で、固定期限労働契約への変更を求められる対応のひとつとして提示しています。人事「中国の給与概況①」は、パソナグループの給与調査をもとにした中国における給与概況レポートの第1回目です。今回は地域間、市場間(企業国籍別)の格差が採り上げられ、日本語人材市場では自動車、部品メーカー新規投資が活発な華南の水準が突出していることなどが指摘されています。BTMU中国月報特集第5号(2006年6月)特集保税区企業の区外連絡事務所問題(BTMU上海外高橋保税区セミナー(2006年5月8日)講演録)弁護士法人キャスト糸賀弁護士曾我貴志弁護士中島あずさMUFG:次に保税区企業の区外事務所問題という2006年に入ってから中国進出日本企業の注目を集めている問題について、まずは、Q1として、どのような経緯でこの問題が発生してきたのか、という点から説明していただきたいと思います。Q1保税区企業の区外事務所問題はどのような経緯で発生したのか?保税区企業の区外事務所問題について、まずはその発生の経緯からご説明いたします。Q1の1のという問題から始めます。1会社法、会社登記管理条例、外商投資企業登記書式一部修正通知の改正又は発布はどのような問題を惹起したか?2006年1月1日に改正「会社法」が施行され、その付属法規である「会社登記管理条例」も改正施行されました。連絡事務所問題に関する限りで、改正の前後で実質的な差異がもたらされた点は、資料1-1の通りです。すなわち、外商投資企業の登記について別段の定めを置くことを許容する場合として従前は「法律」と並べて「行政法規」を含めていたにもかかわらず、改正により「法律」即ち全人代の定めた法規のみを許容することとなったことが相違点です。元々、外商投資企業の連絡事務所は、「企業法人登記管理条例」という行政法規及びその施行細則によって規定されていたのですが、「会社登記管理条例」の改正により、行政法規において外商投資企業について別段の定めを置くことができなくなりましたので、「企業法人登記管理条例」及びその施行細則は外商投資企業に適用されないこととなり、また「会社登記管理条例」においては分公司に関する規定は置かれているものの、連絡事務所に関する規定は置かれていないために、結果として外商投資企業の連絡事務所の登記に関する根拠規定が失われてしまったわけです。これを受けて、「外商投資企業登記書式一部修正通知」が発布され、事務所に関する登記書式が廃止され、外商投資企業の分公司の書式のみが残されました。外商投資企業の登記に関する各種の申請書式については資料1-2にアドレスを示しておきましたので、そちらをご参照ください。この結果、外商投資企業について分公司は認めるが連絡事務所は認めないこととなったのか、また、少なくとも連絡事務所の登記を行うことはできないのではないか、という疑問が出てきたわけです。特に、資料1-3に掲げた法規の規定により、保税区外商投資企業の区外事務所の有効期間は1年で管理されている場合が多く、既存の区外事務所は早晩登記上の期間の満了を迎え、これを延長する必要性に迫られるところ、それができないという問題に直面することになったわけです。ここで概念を確認するために分公司と連絡事務所(又は単に事務所ということもあります)との違いについて説明しておきます。すなわち、Q1の2の2工商行政管理(会社法)の観点からの分公司と事務所の違いは如何?という問題に移ります。分公司は日本語の支店に該当する概念であり、他方、連絡事務所は中国語で弁事機構と言われる概念です。その相違は、分公司については「会社登記管理条例」の規定から、連絡事務所については「企業法人登記管理条例施行細則」の規定から、それぞれ資料1-4の通り纏めることができますが、要するに分公司は営業活動に従事することが認められ、その結果として独立の会計拠点となるべき存在であるのに対し、連絡事務所は営業活動への従事が認められず単独の会計処理を行わない、連絡機能を有するに過ぎない存在ということができます。1BTMU中国月報特集第5号(2006年6月)MUFG:保税区企業の区外事務所問題が発生してきた経緯についてはよく分かりました。ところで、この問題は主として上海外高橋保税区を中心に議論されているようですが、どうして外高橋保税区のみがクローズアップされるのか、というQ2の問題について説明していただきたいと思います。では、Q2のQ2なぜ上海外高橋保税区がクローズアップされるのか?という問題についての検討に移ります。この問題に関する説明の前提として、1保税区会社は区外分公司を設置することができるか?という問題に関する、歴史的展開を見せる法規制を見ていく必要があります。(Q1の1で述べた)今回の騒動が起こる2005年12月31日以前において、保税区会社が区外に分公司又は事務所を設置することができるかという点についての法規の変遷は資料2-1に示す通りですが、要するに、資料2-2のように纏めることができます。すなわち、第一に、区外事務所の設置は許容されていたし、それに従って実務上も多くの事務所が設置されてきています。第二に、区外分公司の設置は明示的に1996年と2001年の全国的法規によって禁止されていたものの、当該法規はいずれも2004年に廃止されました。第三に、区外分公司設置を禁止する法規が廃止されたといえども、直ちに区外分公司設置が許容されたと考えることはできず、実務上も区外分公司設置が認められたという例は存在しないようです。そもそも分公司が保税区外にあるとすれば、そこで取扱うことができる商品は必ず関税・増値税の