原子力安全委員会における玄海原子力発電所3号機の原子炉設置変更許可に係る安全審査について平成17年9月12日原子力安全委員会事務局長片山正一郎原子力安全委員会について原子力安全委員会とは原子力安全委員会は、昭和53年に原子力の安全確保の充実強化を図るため、原子力基本法の一部改正をし、原子力委員会から分離、発足しました。原子力安全委員会は、原子力の研究、開発及び利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画し、審議し、及び決定する権限をもっており、また、必要な場合は、内閣総理大臣を通じて、関係行政機関の長に勧告することができます。原子力安全行政と原子力安全委員会の役割原子炉施設等の設置許可段階において、規制行政庁が行った審査について原子力安全委員会が異なる視点から再審査(ダブルチェック)を行います。また、設置許可後の建設・運転段階における規制行政庁の安全規制(後続規制)が適正かどうかを監視・監査し、不断の改善・向上を促すことを目的とした規制調査を実施しています。1[建設段階]設計・工事方法の認可、使用前検査、保安規定の認可等[運転段階]施設定期検査、保安規定の遵守状況の検査等設置許可等の後の安全規制(後続規制)規制行政庁による安全審査を審査規制行政庁[設置・変更許可段階]設置許可等のための安全審査定期的な報告規制行政庁の規制を監視・監査「規制調査」の実施監視・監査答申諮問原子力安全委員会基本的考え方の提示、報告聴取、総理大臣を通じた勧告原子力安全委員会の位置付け事故・トラブル等の状況、対応状況等の報告聴取事故・トラブル等の対応報告対応方針の指示等2玄海3号機原子炉設置変更に係る安全審査の経緯○原子炉の設置変更に係る経緯平成16年5月28日原子炉設置変更許可申請平成17年1月18日申請の一部補正平成17年2月10日経済産業省から原子力安全委員会へ諮問平成17年8月29日原子力安全委員会から経済産業省へ答申3安全審査の体制について原子炉安全専門審査会(原子炉施設の調査審議)2.専門審査会に調査審議を指示する場合原子力安全委員会検討指示報告(審査委員55名)1.委員会直轄で審査を行う場合検討指示報告第○○部会審査を担当する専門家○専門審査会の審査委員で構成(例)高浜3・4号の審査では、9名の審査委員で構成された第95部会が設置された。[個別の審査案件ごとに設置]原子力安全委員会審査を担当する専門家○担当の原子力安全委員○技術参与(原子力安全委員会事務局の専門家)○必要に応じて外部の専門家を招聘今回の玄海3号機に係る安全審査の場合(合計10名)○鈴木委員長代理、早田委員、久住委員○技術参与4名(うち1名は高浜3・4号の安全審査を行った際の審査委員)○外部の専門家3名・更田豊志日本原子力研究所原子炉安全工学部燃料安全研究室長・米原英典放射線医学総合研究所放射線安全研究センターラドン研究グループ第2チームリーダー・若林利男東北大学大学院工学研究科教授(いずれも原子炉安全専門審査会の審査委員)質問説明・回答規制行政庁質問説明・回答規制行政庁4委員会直轄審査とした理由についてz軽水炉へのMOX燃料の装荷に係る安全審査については、その際の指標を作成する観点から検討が行われ、「発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」(平成7年6月原子力安全委員会了承。以下、「1/3MOX報告書」という。)として取りまとめられ、安全設計及び安全評価の考え方を提示z今回の玄海3号機でのMOX燃料の使用は、ウラン燃料の基本仕様、プルトニウム含有率等のMOX燃料の基本仕様は、いずれも「1/3MOX報告書」に示された基本仕様の範囲内にあるものであり、かつ、既に審査がなされている高浜3・4号機のものと同じz従って、玄海3号機の安全審査については、「1/3MOX報告書」に示された安全評価等の考え方に従いつつ、高浜3・4号機等での審査結果を活用すれば、部会審査と同等の審査を行うことが可能であると判断し、直轄審査による審査を行うこととしたものz関電高浜3・4号機の安全審査はこの「1/3MOX報告書」に基づき実施5MOX燃料装荷に関する検討及び安全審査の実績2.過去の安全審査の実績(1)少数体に装荷(いずれも試験的なもの)・関西電力(株)美浜原子力発電所1号機(PWR)【昭和47年5月申請昭和47年11月許可】(4体装荷)・日本原子力発電(株)敦賀原子力発電所1号機(BWR)【昭和59年10月申請昭和60年3月許可】(2体装荷)(2)炉心の約1/3~約1/4に装荷・関西電力(株)高浜原子力発電所3、4号機(PWR)【平成10年5月申請平成10年12月許可】(炉心の約1/4にMOX燃料装荷)・東京電力(株)福島第1原子力発電所3号機(BWR)【平成10年11月申請平成11年7月許可】(炉心の約1/3にMOX燃料装荷)・東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所3号機(BWR)【平成11年4月申請平成12年3月許可】(炉心の約1/3にMOX燃料装荷)1.原子力安全委員会における軽水炉へのMOX燃料装荷に関する検討「発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」(平成7年6月原子力安全委員会了承)・軽水炉へのMOX燃料装荷に係る安全審査の際の指標を作成6「発電用軽水型原子炉に用いられる混合酸化物燃料について」(1/2)平成7年6月原子力安全委員会了承(「1/3MOX報告書」)○目的zMOX燃料を装荷することに係る安全審査の際の指標作成○適用条件zペレットの核分裂性プルトニウム富化度は約8%以下zペレットのプルトニウム含有率は約13%以下z燃料集合体の昀高燃焼度は45,000MWd/tzMOX燃料の炉心装荷率は1/3程度まで○検討項目z燃料炉心及び装荷炉心の一般的な特徴(制御棒の効きが低下、燃料の融点が低くなること、燃料棒内のFPガスが増えること等)z燃料の使用実績並びに照射後試験結果z熱・機械設計z核設計z安全評価7検討結果•MOX燃料の特性、挙動は、ウラン燃料と大きな差はなく、MOX燃料及びその装荷炉心は従来のウラン燃料炉心と同様の設計が可能。•従来ウラン燃料炉心に用いている判断基準、MOX燃料の特性を適切に取り込んだ安全設計手法、安全評価手法を適用することは差し支えない。「発電用軽水型原子炉に用いられる混合酸化物燃料について」(2/2)8九州電力㈱玄海3号機設置変更許可申請のポイントzMOX燃料集合体を3号機に昀大48体装荷(約1/4炉心相当)zMOX燃料集合体のスペック¾燃料集合体昀高燃焼度45,000MWd/t¾プルトニウム含有率13wt%¾核分裂性プルトニウム富化度8wt%z燃料取替用水タンクのほう素濃度を約2,500ppmから3,100ppm以上に変更9災害防止にかかる安全審査*項目1.原子炉設備の安全設計1.1炉心核設計熱水力設計機械設計動特性1.2非常用炉心冷却設備1.3燃料取扱及び貯蔵設備2.原子炉施設周辺の一般公衆の線量評価3.運転時の異常な過渡変化解析4.事故解析5.立地評価のための想定事故解析*:原子力安全委員会が定めた「安全設計審査指針」、「安全評価審査指針」等に基づき審査10核設計評価核設計に対する指針要求:・出力分布制御可能、・反応度停止余裕*の確保、等MOX燃料炉心反応度停止余裕:1.76高温零出力(0%)高温全出力(100%)要求値(2.98)(1.60)制御棒の制御能力に必要な制御能力原子炉を停止するため評価値(単位:%△k/k)(0.16)(注)(注)最大反応度価値を有する制御棒クラスタ1体不挿入時評価値要求値1.761.60(%△k/k)MOX炉心の反応度停止余裕は、UO2燃料と同様に制限値を上回り、指針等の要求を満たしている*:原子炉を停止させ、なお残っている制御棒の停止能力11反応度停止余裕燃料中心昀高温度評価燃料中心昀高温度に対する指針要求:・燃料の溶融点未満であること評価値制限値MOX燃料18202500(℃)UO2燃料18302590(℃)MOX燃料中心昀高温度評価値は、UO2燃料と同様に制限値を大きく下回り、指針等の要求を満たしている燃料中心温度(℃)050010001500200025003000MOXUO2制限値12機械設計評価(燃料中心昀高温度を除く)0.00.20.40.60.81.01234MOX評価値/制限値(-)評価値制限値1:燃料棒内圧16.119.7(MPa)2:被覆管応力83100(%)3:被覆管引張歪0.521(%)4:被覆管累積疲労0.291(-)燃料棒に対する指針要求:内圧→ペレットと被覆管のギャップが増加する圧力を超えない応力→被覆材の耐力以下歪み→過渡変化時に際して1%を超えない疲労→設計疲労寿命を超えない燃料集合体に対する指針要求:輸送・取扱→6G加重で著しい変形が生じない4G制限を遵守指針等の要求を満たしている[評価値/制限値]が1未満である13熱水力設計評価指針等の要求を満たしている動特性評価動特性評価に対する指針要求:原子炉固有の自己制御性及び原子炉制御設備によって、定格出力の15%以上での設計負荷変化に対して、原子炉はトリップすることなく、十分な減衰性を持って、新たな平衡負荷に相当した値に制御される熱水力設計に対する指針要求:・昀小DNBR(原子炉冷却材を沸騰させない制限)は許容限界値以下であること・燃料中心昀高温度は燃料の溶融点未満であること14設備影響評価非常用炉心冷却設備:・1次冷却材喪失事故に対して、原子炉を冷却し、燃料及び燃料被覆管の損傷を防止でき、かつ、燃料被覆管腐食を制限する。・主蒸気管破断事故に対して、原子炉停止に必要な負の反応度を添加する。設計方針は指針等の要求を満たしているピット水温度評価値制限値58.465(℃)燃料取扱及び貯蔵施設:・使用済燃料貯蔵設備における臨界防止・使用済燃料貯蔵設備における除熱能力・新燃料取扱装置導入・放射線業務従事者の放射線防護1001,00010,000100,0001,000,00001101001,00010,000冷却時間発熱量(ワット/集合体)1ヶ月10年1年10日1日MOX燃料全発熱量MOX燃料アクチニド発熱量ウラン燃料全発熱量ウラン燃料アクチニド発熱量(日)0.1原子炉トリップ信号による制御棒クラスタの挿入に加えて、燃料取替用水タンク(非常用炉心冷却設備)からのほう酸注入[3,100ppm以上]により、炉心を臨界未満にでき、かつ、その状態に維持できる15平常運転時に一般公衆の受ける線量評価燃料棒にピンホール等が発生し、燃料中のFPガス(希ガス及びよう素)が1次冷却水を介して、気体廃棄物処理設備及び液体廃棄物処理設備から環境へ放出された場合を想定し、一般公衆が受ける線量が「線量目標値評価指針」に示される線量目標値を下回ることを確認MOX燃料炉心においても、一般公衆の受ける線量は指針等の要求を満たし、かつ、合理的に達成できる限り低減されている評価値制限値7.850(μSv/y)線量評価値及び制限値(μSv/y)0102030405060MOXUO2制限値16原子炉運転中に、原子炉施設の寿命期間中に予想される機器の単一の故障もしくは誤動作または運転員の単一誤操作、及びこれらと類似の頻度で発生すると予想される外乱によって生ずる異常な状態に至る事象。炉心あるいは原子炉冷却材圧力バウンダリに過度の損傷をもたらす可能性のある事象。事例:出力運転中の制御棒の異常な引き抜き、等「事故」とは、「運転時の異常な過渡変化」を超える異常な状態で、発生する頻度はまれであるが、発生した場合は原子炉施設からの放射性物質の放出の可能性があり、原子炉施設の安全性を評価する観点から想定する必要のある事象。原子炉施設から放出される放射性物質による敷地周辺への影響が大きくなる可能性のある事象。事例:制御棒飛び出し、等敷地周辺の事象、原子炉の特性、安全防護施設等を考慮し、技術的知見から見て昀悪の場合には起こるかもしれないと考えられ