1生産物流管理論第3回開発と生産のプロセス分析(Ver.1.1)担当者:松浦春樹08/10/06©2008matsuura2使用テキスト藤本隆宏『生産マネジメント入門Ⅰ【生産システム編】』初版[日本経済新聞社]2001年3本講義の目的製造企業などの中核的業務である生産・購買業務を統合的なシステムの一部とみなし、それらの構成要素を明らかにして、企業の目的に貢献させる方法を明らかにする。4何を学ぶのか、何がわかるか(1)生産マネジメント:「もの造りの経営学」。競争力からみた現代企業の生産機能や技術機能のしくみ。もの造りの基本知識の取得製造各社の性格(就職先、投資)製造企業のしくみ対する理解(営業職、経理職、SE)5何を学ぶのか、何がわかるか(2)ベストプラクティス(最良の現行実務:トヨタウェイ、デルモデルなど)への深い洞察競争力の具体的理解支援情報システムの実際最新ビジネスツールの原点(SCM、TOC、リエンジニアリングなどなど)6講義範囲生産システムの基礎と競争力の要因を中心に市場の要件顧客満足事業の規定:経営戦略生産戦略製品開発生産システムハードウェアソフトウェア(計画と管理)自社およびサプライヤーの技術力原材料・部品従業員設備設計開発期間、開発効率、商品価値製品生産性、品質、納期、フレキシビリティ7第1章はじめに:競争力とシステムの視点弱み機会脅威強み8藤本教授の「競争力」定義(藤本隆宏:「生産マネジメント入門Ⅰ」日本経済新聞社より)競争力:既存顧客を満足させ、潜在顧客を呼び込む力9競争力の構成要素(2)「4P」と「QCDF」藤本隆宏:「生産マネジメント入門Ⅰ」日本経済新聞社より■表層の競争力:4P(「マーティング論」)製品product製品の訴求力価格price広告・販売促進promotion販売促進手段販売現場place販売現場での説明・売り込み■深層の競争力:QCD+F品質qualityコストcost生産性納期deliveryリードタイムの短さフレキシビリティ(柔軟性)flexibility外部要因の変動への対応能力10製造企業の競争力藤本隆宏:「生産マネジメント入門Ⅰ」日本経済新聞社よりその他の環境要因組織能力深層の競争力表層の競争力収益力能力構築競争の対象領域組織ルーチン生産性生産リードタイム製造品質開発リードタイム価格納期製品内容(設計品質)広告内容11前回のまとめ現状把握ツールとしてのプロセス分析現状(低い競争力)⇔理想(高い競争力)→改革の具体案事例:自動車用アルミ部品(pp.19-23)プロセス分析図から増産方策検討ボトルネック工程への対処基本知識の現行実務との関連制約条件の理論(TOC)、ジャスト・イン・タイム(JIT)12今回学ぶこと前回より深めて復習事例:自動車用アルミ部品(pp.19-23)プロセス分析図から増産方策検討ボトルネック工程への対処基本知識の現行実務との関連制約条件の理論(TOC)、ジャスト・イン・タイム(JIT)リエンジニアリング製品設計から工程設計へ生産形態の分類13第2章開発と生産のプロセス分析ステップ1ステップ2ステップ3ステップ4ステップ5処理14「地図」の必要性現状の把握ための、現状の記述、「地図」作り改革案を示すためにも「地図」が必要プロセス分析は「地図」作りである現状の把握問題点の抽出改善案の検討改善案の実行15プロセス分析とはプロセスの概念モノ、情報、エネルギーの3種の流れマテリアル・フロー(モノの流れ)プロセス(工程)インプット(投入物)アウトプット(産出物)フローストックフロー16ベネトン社のプロセス改善ハーバードビジネススクールのケースより編み糸買い付け編み糸買い付け部品部品染色染色縫製縫製各色の在庫生成色の在庫各色の在庫17塗料メーカのプロセス改善例バワーソクスよりメーカ小売小売メーカメーカは全色を生産、小売は全色を在庫、顧客に提供メーカは基本色を生産、基本色を小売に提供、小売は顧客の必要に応じて調合・販売製造の延期18プロセス分析とは生産プロセスの記述モノの流れを軸にして記述するマテリアル・フローそれに付帯事項として書類(情報)などを記入最もよく使う記号主な記号内容加工運搬停滞・在庫検査19プロセス分析とはプロセス記述の事例(1)藤本隆宏『生産マネジメント入門Ⅰ【生産システム編】』初版[日本経済新聞社]2001年20プロセス分析のオフィスへの適用を報ずる日経「業務の流れを図解して見える化」21プロセス分析の事例:生産増加への対応考える事例:自動車用アルミ部品(ピストン)サイクルタイム:一個当たりの加工時間ボトルネック:全体の能力を制約する工程ボトルネック原料在庫(アルミインゴット)アルミ鋳造機械加工仕掛品在庫(アルミ粗形材)製品在庫(アルミ加工部品)原料購入1回/週製品出荷1回/日サイクルタイム3分サイクルタイム2分生産能力20個/時生産能力30個/時ライン全体の生産能力ボトルネックで制約され20個/時22プロセス分析の事例:生産増加への対応1:不良率ゼロのケース(政策により仕掛品在庫ゼロとする)ジャストインタイム政策で仕掛品在庫ゼロアルミ鋳造と機械加工は実質一体化スループットタイム原料在庫(アルミインゴット)アルミ鋳造機械加工仕掛品在庫(アルミ粗形材)製品在庫(アルミ加工部品)原料購入1回/週製品出荷1回/日サイクルタイム3分サイクルタイム2分ゼロスループットタイム:5分手待ち(アイドルタイム):1分生産能力20個/時23プロセス分析の事例:生産増加への対応1日あたりの注文が240個に増えた対応策(不良はないとする)アルミ鋳造機の増設ボトルネックは機械加工に移るアルミ鋳造のサイクルタイム3分/2=1.5分機械加工のサイクルタイムは2分なので全体のサイクルタイム:2分8時間稼動/サイクルタイム2分=480/2=240難点設備投資→固定費24固定費が増えると何が問題か?損益分岐点分析より固定費売上高(操業度)売上高・費用売上高線総費用変動費現状の売上高必要な固定費必要な利益固定費が増えると損益分岐点売上高が増大し(右にシフトし)、収益性が悪化する25プロセス分析の事例:生産増加への対応1日あたりの注文が240個に増えた対応策(不良はないとする)残業する毎日4時間→これはムリ必要工数注文240個×サイクルタイム3分=720分720分=12時間必要12時間-定時8時間=4時間土日出勤→休日出勤手当ては高くコストアップ(変動費ではあるが)26変動費が増えると何が問題か?固定費売上高(操業度)売上高・費用売上高線総費用変動費損益分岐点現状の売上高必要な利益必要な変動比率変動費が増えると損益分岐点売上高が増大し(右にシフトし)、収益性が悪化する27プロセス分析の事例:生産増加への対応1日あたりの注文が240個に増えた対応策(不良はないとする)ライン全体が二交代制増員→人件費パート・アルバイトならば変動費増正規従業員なら固定費増アルミ鋳造工程だけ二交代制ライン全体が二交代制よりも経費減ただし、造り溜めのため仕掛在庫必要28仕掛在庫を置くと何が問題か?■プラス要因(伝統的発想)顧客サービス操業水準の安定量産効果(購買含む)仕事の行い易さ工程の切り離し効果問題を隠す■マイナス要因(現代的発想)資金負担管理費用(場所代を含む)売れ残りの危険死蔵の危険(行方不明など)陳腐化の危険劣化の危険品質不良の早期発見問題を隠す29プロセス分析の事例:生産増加への対応1日あたりの注文が240個に増えた対応策(不良はないとする)マネージャーは総合的に判断して対応正確なプロセス分析図が前提30現行実務との関連ボトルネックと「制約条件の理論」ボトルネック:隘路、一連の流れの中で処理能力が最も小さな部分ベストセラーのビジネス小説「ザゴール」ボトルネックを基準に計画と管理能力増強のためにはボトルネックの解消(能力増強)思い込みによるボトルネック31現行実務との関連制約条件とジャスト・イン・タイム方式ボトルネックを改善して、アルミ鋳造のサイクルタイムも2分に!アルミ鋳造と機械加工を同期化全体を流れるように(組立ラインのように)32ジャスト・イン・タイムとはJust-In-Time:必要なものを必要なときに必要なだけ広義上記概念、原材料から消費者までを流れるように→サプライチェーン・マネジメント→トヨタの課題狭義トヨタ生産方式33ハマー提唱のリエンジニアリングBPR:ビジネスプロセス・リエンジニアリング企業改革:現状のしくみを抜本的に見直し、プロセスの視点で業務のしくみを再設計する。プロセスとは最終顧客に対する価値を生む一連の活動。背景機能別組織の弊害非効率さ←機能自体が目的となる(とくに米国)機能別組織の長所専門化情報化の進展により、機能別組織の専門化メリット薄れるプロセス別組織に改革すべき34構造改革製品(サービス)A製品(サービス)B製品(サービス)CプロセスAプロセスBプロセスC調達機能製造機能流通機能マネジメントの重点:機能の達成→プロセスの達成部分ごとでなく全体を見通した35科学的管理法の技術的系譜36流行に惑わされず、基本に忠実であれ!リエンジニアリング:言葉は新しいが、要はプロセス分析で見たように、原料から製品までの流れを円滑にすることサプライチェーンの究極目的も同じ定石:「まずプロセスを理解し、分析し、その流れをスムーズにするように改善・変革を行う」基本をおさえていれば、新語に惑わされない37製品と工程の一対一対応工程の連鎖と原材料・仕掛品・製品の連鎖が交互にかみ合うプロセス(工程)情報の流れモノの流れオペレーション(作業)生産工程の連鎖原材料・仕掛品・製品の連鎖38製品設計図面から生産準備まで製品設計図面加工方法の選択作り方の大枠・素材内外製区分決定どこまで内作?生産能力の決定加工経路の決定レイアウトの設計各工程の詳細決定39加工経路とレイアウト1.加工経路(順序)の決定オペレーションの順序2.レイアウトの設計機械を具体的にどのように配置するか?概念的には(1)と(2)は独立しかし、不適切なレイアウトは効率悪しレイアウトの型端的には、機能別製品別40ボール盤群ドリルを使って穴加工を行う旋盤群円柱状の材料を回して,それにバイトと呼ばれる刃ものを当てて,材料を削るフライス盤群回転している工具に,バイス(万力)に固定した材料を当てて加工する研削盤群といし車を回転させて工作物を削る機能別レイアウト工場内物流は複雑になる41製品A製品B製品別レイアウト工場内物流は簡単になる42機能別レイアウトか製品別レイアウトか製品別レイアウトのほうが生産性が格段によいとされ、製品別レイアウトで仕事ができるように改革を進めるのが妥当とされている。参照ジャスト・イン・タイムリエンジニアリング製品・工程マトリクス(次回)43生産形態の分類質の違う多様な用語が用いられ、混乱を招いている。ここでは、以下のように3つの視点から整理しておく。1.着手時点の視点からの分類2.多様性(品種数)と数量(生産量)の視点からの分類3.レイアウト・モノの流し方の視点からの分類44生産形態の分類(1)着手時点からの分類受注生産産業用大型機器類、特殊な嗜好品受注組立生産PC、個別性の高いもの(眼鏡、注文服)見込生産多くの消費財45生産形態の分類(2)多様性(品種数)と数量(生産量)からの分類一品(個別)産業用大型機器(原子力発電所)、建築物多品種少量生産財(工作機械)、中級アパレル、中級家具少品種大量乗用車、石油類、歯ブラシ1品種大量大衆消費財46生産形態の分類(3)レイアウト・モノの流し方の視点からの分類プロジェクト(多くの場合据え置き)ジョブショッ