中国の産業構造及び貿易構造第一節:産業構造の変化(概要)中国政府は1978年から、国内経済体制の改革をスタートさせた。三十年を経て、中国の対外開放度は、すでに近隣の東アジア開放経済と比べて高い。対内改革と対外開放は互いに促進しあって、中国の経済成長の高度成長を推し進めている。2001年12月に中国が正式に世界貿易機関(WTO)に加盟したあと、中国経済は全面的開放の新しい段階に入るとともに、著しい成果を遂げた。中国経済の規模は、GOPでみると、2009年のGDPは340507憶人民元(約42563億ドル)に達した、その内、第一次、二次、三次産業がそれぞれ、10.3%、46.3%、43.4%のシェアを占めた。一人当たりGDPも3603ドルに達した、世界銀行の所得分類によれば、「低所得国」(一人当たり国民総生産が765ドル以下)の地位を脱出して「中所得国」の仲間入りを果たしている。図1:中国GDP成長率出所:世界経済のネタ帳サイト中国の産業は1978年から大きな発展をみせ、すべての地域の経済力は急速に高まり、特に東南沿海部の経済発展は目覚ましい。1990年以前にはほとんどの製品は需要が供給を上回っていたが、90年代半ばになると多くの消費財は「売り手市場から買い手市場」に転換している。2009年にはセメント、鉄鋼などの生産財からテレビ、洗濯機、エアコンなどの家電製品、繊維製品を含めて100種類以上の商品が世界1位となり、「世界の工場」を誇るまでになった。改革開放政策を推進したがって、中国の産業構造も変化しつつある。産業構造の変化中国が「産業」というときは第一次産業(農業)、第二次産業(工業と建設業)、第三次産業(農業、工業、建設業以外のすべての産業、交通、商業、サービス業など)を指している。1978年のGDP構成をみると第一次産業は28%、第二次産業は50%、第三次産業は22%であったが、2009年になると第一次産業は10.3%にまで低下し、第二次産業は46.3%わずか低下し、第三次産業は1978年より二倍も上昇して43.4%になった。図2.出所:中国統計年鑑各年のデータにより作成1.農業の変化中国の農業発展は家庭請負経営制の拡大により、大きな変化をもたらした。家庭請負経営制とは、集団経営内部の一種の労働組織方式である。基本的なやり方法は生産隊が時間、質的要求、受けるべき報酬を定めた作業量を作業組に請負わせ、請負者の任務達成の良し悪しに基づいて賞罰を与える。これは労働者集団の生産への積極性を比較的に引き出せて、農業の発展を最大限促進した。1978年から1984年にかけて、中国建国以来かつてなかった変化が生じた。1984年、全国食糧総生産量は40731万トンという新記録を達成し、1978年に比べ33.6%増加し、年平均増加率は4.95%であった。綿花の総生産は625.8万トンに達し、1978年に比べて189%増加した。植物油原料の総生産は1191万トンに達し、1978年比べて128%増加した。砂糖原料の総生産は4780万トンに達し、1978年に比べて101%増加した。中国の産業構造の変化0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%197819902000200720082009第三次産業第二次産業第一次産業さらに広い範囲からみると、牧畜業、水産業大きな発展をみた。1988年全国の豚牛羊肉の総生産量は2193.6万トンで、1978年に比べて156%増加し、平均年増加率は9.9%であった。乳類生産量は418.9万トン、羊肉生産量は23.6万トンで、それぞれ1978年と比較して330%と59.5%増加し、平均年加率は15.7%と4.8%であった。水産業については、1988年の全国水産物生産量は1061万トンで、1978年と比べて128%増、平均年増加率8.6%であった。農林漁牧畜業の増加は、国民の生活水準を最大限向上させた。1988年全国平均一人当たり占有食糧は363キログラム、綿花は3.8キログラム、植物油原料は12.1キログラム、豚牛羊肉は20.2キログラム、水産物は9.7キログラムで、1978年に比べてそれぞれ13.5%、65.2%、120%、124%、98%増加した。(1)80年代をベースに、2000年代の中国の農業生産はさらにめざましい進歩を遂げた。農業生産の増加に伴い、中国農民の収入も大幅に増加した。農村一人当たり年収は1978年のわずか191.33元、1980年に農村人民公社の個人が集団経済の基本計算単位(生産隊)から得た収入は一人当たり85.9元に過ぎず、副業からの収入を加えても総計191.3元であったが、2008年には農民の平均収入は6700.69元に達した、30年で約35倍となった。中国の農村経済力は大幅に高まった。中国の農村経済は素晴らしい発展しているが、社会主義市場経済を実行するようになって農産物価額は毎年のように引き上げられたことにより食糧などは国際価額を上回るまでになり、価額による農業のコントロールはできなくなった。また、「売り手市場」から「買い手市場」になったことにより郷鎮企業で生産する競争力のない製品は淘汰されるなど、農業、農村をとりまく環境はきびしくなっている。さらに、主要な農業問題としては農村の都市化、請負している土地問題、食糧生産の安定、農産物の生産性向上、農業の産業化、農村の余剰労働力移動、都市戸籍と農村戸籍などどれをとっても中国の経済ばかりでなく、政治の安定にも影響を与えるもので重視しなければならない。中国人口の54.32%(2008)を占める農村を、現状のままに保持してはいけない。農村の生活向上なくして中国の安定はないといっても過言ではない。中でも、農村労働力問題は特に深刻である。第一次産業の労働力は1992年以降、増減を繰り返しており、2002年労働力は1990年とほとんど変わらない。さらに、1.5憶人の農村余剰労働力があり、彼らを非農業分野や都市へ移動させることは課題となっているが、これを吸収する産業、農民労働者の質、戸籍の移動などを解決すべき問題がある。農村労働力の新規雇用、余剰労働力の分散は今後、中国の経済成長を妨げることとなっている。(1)(朱栄など主編「当代中国の農業」北京当代出販社1992375ページより)2.第二次産業工業部門概要改革開放以前の中国は計画経済体制をとって、すべての企業は国有企業と集団所有制企業だけ見ていけば、中国の産業構造を考察できる。しかし現在は国有以外の民営企業が急速に発展して、無視してはいけない。中国統計年鑑によれば、中国は2008年に全国規模以上(年間販売額は500万元以上の企業)の企業数は約42.7万、工業生産総額は約51億元と発表していた。このなかには国有企業だけではなく、私営企業や外資系企業など民営企業も含まれる。中国統計年鑑は毎年の工業部門別概要(単位数、生産額、固定資産、利潤、税金など)を発表している。しかし、それは工業のすべてではなく、1999年以降は年間販売額500万元以上の企業だけのものである。2008年の工業生産額総生産額は507448.25億元で、食品加工工業、紡織工業、化学工業、アパレルなどの製造業が全体の約87%を占めて、採鉱業4.6%、ほとんどが労働集約型工業である。2008年、年間販売額500万元以上の工業企業数は426113社、従業員人数は8837.6万人に達し、そのうち、私営企業は245858社、全体の58%、従業員人数は2871.9万人、全体の32%を占めた。私営企業は労働集約型工業が多く、投資も少なく、優れた技術がない特徴がある。さらに、石油工業やたばこ工業など国家統制が厳しい部門はほとんどゼロに近い。1990年代から急速に発展してきた私営企業も今後は技術革新によって品質がよい製品を生産しながら、公害に配慮しなければならないのは課題となっている。また、1990年代に入って2010年まで毎年のように世界最高の経済成長をみせ、この間に「売り手市場から買い手市場」へ転換していた、多くの生産設備と生産製品は過剰となっている。鉄鋼、電解アルミ、セメントなどの業界の構造的な矛盾が出てくる。中国の国家発展改革委員会が鉄鋼、電解アルミ、セメント業界の構造的な矛盾が突出していると次のように指摘した(2)。2001年に鉄鋼の実際需要は3.1トンだが、2005年の生産能力はすでに10年の鉄鋼需要を満足させることができる。2009年の「4兆元」の経済刺激計画を実行しても、2億トン鉄鋼生産能過剰の問題が解決できない。電解アルミは03年の生産能力は750万トンであったが、2005年に1000万トンになる。これは10年の予測消費量である。中国で毎年およそ7000万トンのセメント生産能力が増加しているが、うち4000万トンは品質がよくない。国家発展委員会としては、今後経済構造調整に重点を置き、経済成長の質を高める。(2)国家発展改革委員会(2010)「産業構造の矛盾」ページ168図3.中国主要な工業製品表製品名称20072008石炭(億トン)25.2627.88石油(万トン)18631.8219001.24天然ガス(億立方メートル)692.40789.32食用油(万トン)2636.982419.15化学繊維(万トン)2413.782415.00ガソリン(万トン)5989.426347.54ビニール(万トン)3184.543129.59水泥(万トン)136117.25140000.00ガラス(万箱)53918.0755184.63鉄(万トン)47651.6347067.41鋼鉄(万トン)56560.8758488.10貴金属(万トン)2379.152520.28電解アルミ(万トン)1233.971317.63アルミ(万トン)1946.672278.17内燃機(万台)56641.9054977.06トラクター(万台)20.3121.71車(万台)888.89934.55オートバイ(万台)2508.322768.93自転車(万台)7475.206374.87発電設備(万台)12990.9813319.43洗濯機(万台)4005.104231.16冷蔵庫(万台)4397.134756.90パソコン(万台)8671.4310858.68テレビ(万台)8478.019033.08カメラ万台)8689.608900.00出所:中国統計年鑑各年のデータにより作成3.第三次産業農業生産や工業生産は少しぐらい増大しても高い経済成長にはつながりそうもなく、第三次産業の発展は鍵を握っている。中国の第三次産業がGDPの3分の1までに上昇しているが、先進国の多くは60%超えており、中国も第三次産業の発展の余地が大きい。第三次産業のGDPに占めるウェイトは1978年には24%だったものが1980年には21%となり、そのあとは一貫して上昇し、1992年には34%となったが、96年には30%にまで低下、2009年末43.4%に達していた。第三次産業の就業人数のウェイトも一貫して上昇し、1978年には12.2%から2009年に34.1%に達していた。図4.2009年三次産業の就業人数のウェイト出所:中国統計年鑑2010版図5.2009年三次産業のGDPのウェイト出所:中国統計年鑑2010版第一次産業38%第二次産業28%第三次産業34%第一次産業第二次産業第三次産業第二節:貿易構造の変化対外貿易の発展は中国の対外開放戦略中で最も基本的な内容である。中国の対外貿易の発展は、外国貿易体制の改革にメリットがあるばかりではなく、中国に進出した外資系企業の直接投資の巨大な進展にもメリットがある。外資系企業の進出によって、中国に貴重な資本資源の獲得を可能にさせるだけではなく、さらに重要なことは、それが先進的な技術、長い時間の発展の中で蓄積された管理経験、および海外市場と競争の