卒業論文の書き方(1)外国語学院荊紅艶一、卒業論文とは何か大学生活4年間の集大成として,4年間に学習・研究した成果を発表するものが卒業論文ということになる。卒業論文とは,自分の設定したテーマとそれに対する答え(研究成果=結論)と,結論に到達した推論・証明・検証のプロセスを合わせて発表する文章であるといえよう。1.卒論の特徴:テーマは自分で見つける十分な枚数がいる時間の制限がある2.スケジュール表:(1)締切1年前テーマの確定予備研究段階に入る(2)締切6ヶ月前目次完成(3)締切3ヶ月前論旨の確定(4)締切1ヶ月前原稿完成二、なぜ卒業論文を書くのか1)大卒資格を得るため2)対象分野の学術的進歩のため3)社会人に必要なスキルを身につけるためスキルとは卒論では、テーマの選定は各自に任されている。そして、そのテーマに関して既知の研究範囲(既にわかっている事)を情報収集により調査して、その上で、自分なりの切り口や視点で仮説をたてて、それを検証するための実験や分析、考察を行っていくのが典型的な流れである。三、卒論の内容に関して1.語学例:1)不安定な日本語の人称代名詞――第一、二人称詞を中心に2)推量の助動詞から日本人の曖昧性を見る-「だろう」、「でしょう」を中心に3)動物に関する諺の研究ー中日比較の視点から4)日中両国におけるあいさつ言葉の対照研究2.文学例:『人間失格』-太宰治の「罪」意識をめぐって夏目漱石の「坊ちゃん」について芥川文学に現れたロマンチシズム――『舞踏会』を中心に郁達夫における谷崎潤一郎受容―『迷羊』と『痴人の愛』を中心として3.文化例:色彩からみる日本人の「和」の心日本の茶道文化における自然牡丹と桜から中国と日本の国民性の特性を見る日本中小企業の中国進出について四、卒論作成の流れテーマ選択先行研究、参考文献の収集、整理問題意識、論文の構成を明確にする論文を書く修正、完成製本、提出、口頭質問五、テーマ選択について1.テーマ選択の順序a.問題意識・問題関心を確認するb.漠然としたテーマをいくつかの具体的なテーマに分割・変換するc.具体的なテーマに対する現在の自分の考えを列挙するd.問題の重要性,興味の程度を基準にして選択する2.テーマ選択上の注意a.興味が持てるテーマであることb.身近に感じられるテーマであることc.(少なくとも自分にとっては)重要な問題であることd.狭すぎず広すぎず例:夏目漱石研究e.指導教官の研究領域六、文献の探し方・読み方1.文献の探し方1)図書館の利用法図書館には図書館のルールがある.ルールを熟知していれば有効利用が可能となる.①辞書・事典の利用法テーマによって異なるが,辞書・事典の類には関連領域の学説史的背景や通説,基本文献などが示されているので,当たりをつけるには最適である.②雑誌、論文や研究書など書籍の利用※論文や研究書には,必ず参考・参照・引用文献が掲げられている.これらの文献は,当該問題に関する現在の研究水準を示していると同時に,その領域の必読文献でもある.③新聞・雑誌記事の利用④電子雑誌、データベース、サイトの利用日本語:CiNii論文情報ナビゲータ中国語:CNKIGoogle学术检索2)文献を選ぶ際の注意①関連のないものは捨てる②関連するものはすべて拾う③精読すべき文献を間違えない④一流の文献を選別するコツa.序論に注目するb.結論に注目するc.引用文献・参照文献・参考文献を見る2文献の読み方、まとめ方1)素読文献・資料にざっと目を通すのが,この読み方の目的である.したがって,細部にとらわれずに,著者の問題意識・結論・主張,全体の大まかな流れがつかめればよい.2)精読基本文献・重要参考文献を十分時間をかけて,細大もらさずフォローすることが,精読の目的である.3)精読段階のメモのとり方・要約の作り方①論文全体の構成・流れをつかむa.序論(Introduction)問題意識:著者がその論文・著書で解こうとしている問題を提示している.全体構成:どのような順序で論理を展開するかを示す.結論の意義:得られた結論の重要性を解説する.b.本論:第1章第1節1.1(第1項)1.2(第2項)・・・第2節1.1(第1項)1.2(第2項)・・・・・・第2章第1節1.1(第1項)1.2(第2項)・・・第2節1.1(第1項)1.2(第2項)・・・・・・分析方法(理論モデル)の提示前提条件・仮定の提示とその説明↓論理展開調査・検証・証明↓↑反例・命題・主張c.結論(ConcludingRemarks)研究成果のまとめが与えられている.既存の研究との比較がなされている.論文の限界と残された問題についての著者なりの考えが示されている.3)精読段階のメモのとり方・要約の作り方②著者の研究の流れをつかむ③結論が正しいかを検討する④残された課題は何か3)精読段階のメモのとり方・要約の作り方⑤研究の流れ・論文の流れを踏まえて要約を作成するa.著者の動機・問題意識b.導かれた結論・主張c.結論を導くために用いた手法・技法d.各章・各節の暫定的結論e.論文・本全体の結論f.各章・各節の相互連関