地域公共交通の供給形態に関する研究~規制緩和と政策的要求の両立はどうあるべきか~下村仁士(株式会社キューヘン)本論の構成Ⅰ.問題意識Ⅱ.地域公共交通の供給形態の理論的検討Ⅲ.交通機関相互の競争と協調Ⅳ.運輸連合・共通運賃の可能性と問題点Ⅴ.わが国における地域公共交通の将来像Ⅰ.問題意識規制緩和政策・市場メカニズムと地域公共交通の事業性を重視した活性化「参入規制+内部補助」体制の限界・地域公共交通の独占力の低下により維持不可能に・経営効率化やサービスの多様化が阻害される可能性市場メカニズムの限界・市場メカニズムだけでは、政策的要求は実現できない。【例】・「不採算であっても社会的に必要な交通サービス」の維持→伝統的な議論内部補助による維持が困難に直面Ⅰ.問題意識市場メカニズムの限界(続き)・「持続可能な交通」「まちづくり」の観点→新しい議論自家用車を中心とした自動車交通の諸問題を回避する観点から、地域公共交通を積極的に評価し、活用していく視点。地域公共交通への目的意識が多様化政策的要求を反映する場面が拡大「社会が求める目的意識を達成する手段」としての交通Ⅰ.問題意識社会の認める価値判断基準市場メカニズムとそれ以外の価値判断基準交通市場への介入要因≠企業経営の目標規制緩和政策の要求≠それ以外の交通政策の要求異なる目標を両立させるにはどうすればいいか?そのときの地域公共交通の供給形態は?Ⅱ.地域公共交通の供給形態の理論的検討1.交通の供給における機能の階層化「上下分離」交通に留まらず、電力や電気通信などネットワーク産業全般に適用可能な概念。特に、電気通信では多階層に機能を分離した理解が一般的。【例】ISO(InternationalOrganizationforStandardization)のOSI(OpenSystemInterconnection)参照モデルⅡ.地域公共交通の供給形態の理論的検討1.交通の供給における機能の階層化アプリケーション層利用者にmailなどのサービスを提供プレゼンテーション層データを利用者に理解出来るように変換データを通信に適した形に変換セッション層サービスレベルのコンピュータ間コネクション確立/開放トランスポート層データを相手に確実に届けるネットワーク層アドレスの管理と経路の選択データリンク層物理的な通信路の確立物理層コネクタ形状や電気特性変換【参考】ISO(InternationalOrganizationforStandardization)のOSI(OpenSystemInterconnection)参照モデルの構成Ⅱ.地域公共交通の供給形態の理論的検討1.交通の供給における機能の階層化Q:なぜ電気通信では多機能に階層を分離するのか?A:技術的な便宜性標準化・単純化を容易にする。システム改良・変更時の影響を小さくする。⇒コンパチビリティの担保と、ネットワークの拡大【例】インターネット(TCP/IPプロトコルとHTML言語による全世界的なネットワーク)Ⅱ.地域公共交通の供給形態の理論的検討1.交通の供給における機能の階層化Costa[1996]都市公共交通を対象にして、交通事業者と交通調整機関との関係(競争と協調or調整)に着目VandeVelde[1999]意思決定段階と具体的項目、意思決定者との関係を指摘意思決定項目と、それに対し関与すべき部門Quinet[2000]一般的な形態で交通の供給を階層化して把握した分析「交通補助部門」の重要性次へⅡ.地域公共交通の供給形態の理論的検討1.交通の供給における機能の階層化Costaのモデルモデル1公営交通事業者による交通機関毎に独立した供給形態(競争無、調整無)モデル2交通調整機関と単一の交通事業者による供給形態(競争無、調整有)モデル3交通調整機関と複数の交通事業者による供給形態(競争有、調整有)モデル4規制緩和(競争有、調整無)Ⅱ.地域公共交通の供給形態の理論的検討1.交通の供給における機能の階層化VandeVeldeのモデルⅡ.地域公共交通の供給形態の理論的検討1.交通の供給における機能の階層化Quinetのモデル管理業務層通路施設層利用者層交通仲介層輸送具層インフラ層運行計画の策定(運賃,路線,時刻表,車両形態)(=交通補助部門)情報の提供(情報機能)交通事業者層輸送契約の締結(営業)Ⅱ.地域公共交通の供給形態の理論的検討2.モデルの構築公的な交通調整機関の機能交通事業者と利用者の関係交通の目的交通供給の基礎的部分Ⅲ.交通機関相互の競争と協調1.交通機関の連携異なる交通機関の連携ネットワークの視点からは、電力や電気通信と異なる特性⇒連続性の確保が困難電力:周波数が同じであれば連続性の確保は容易(周波数が異なっていても可能)。電気通信:プロトコルが同じであれば、連続性の高いネットワークが構築可能。交通の場合は?連続性の確保が技術的に困難Ⅲ.交通機関相互の競争と協調1.交通機関の連携連続性の確保利用者層での連続性の確保が重要管理業務層管理業務層通路施設層通路施設層交通事業者層輸送具層インフラ層バス利用者層交通仲介層結節点利用者層交通仲介層鉄道輸送具層インフラ層交通事業者層ここの連続性を担保するネットワーク上で水平的に展開Ⅲ.交通機関相互の競争と協調2.交通機関の競争「市場における競争」と「市場をめぐる競争」管理業務層通路施設層輸送具層インフラ層(=交通補助部門)交通事業者層利用者層交通仲介層市場における競争市場をめぐる競争Ⅳ.運輸連合・共通運賃の可能性と問題点運輸連合・共通運賃への期待感・利用者の利便性向上・自家用車を代替しうる地域公共交通の構築⇒ネットワーク性の向上・政策的な目標実現のための公的部門の関与Ⅳ.運輸連合・共通運賃の可能性と問題点輸送具層輸送具層輸送具層輸送具層管理業務層管理業務層管理業務層管理業務層通路施設層通路施設層通路施設層通路施設層鉄道事業者バス事業者1バス事業者2路面電車事業者交通事業者層(交通仲介層)運輸連合:共通運賃制度利用者層交通事業者層交通事業者層交通事業者層水平的に展開されるネットワーク上で連続性が担保される公的部門民間部門役割分担の明確化Ⅳ.運輸連合・共通運賃の可能性と問題点問題点1.交通事業者独自のマーケティングを困難にする。2.経営インセンティブの低下(経営効率化、増収や利用者へのサービス向上)3.運輸連合そのものが競争抑制的に機能(「参入規制+内部補助」的に機能する恐れ)⇒新しいサービスの可能性を削ぎかねない。運輸連合・共通運賃には限界があるⅤ.わが国における地域公共交通の将来像路線バスを中心に供給形態の多様化鈴木[2001]による、免許形態を意識した分類Ⅴ.わが国における地域公共交通の将来像【公的部門の関与領域】運行計画の策定情報の提供輸送契約の締結管理業務層管理業務層通路施設層通路施設層他は民間部門の役割が期待される領域鉄道でも「上下分離」により公的供給の可能性道路交通の場合公的に供給交通仲介層の部分が公的部門の関与可能な領域交通仲介層交通事業者層輸送具層インフラ層利用者層輸送具層インフラ層交通事業者層地域公共交通の供給形態に関する研究~規制緩和と政策的要求の両立はどうあるべきか~終ご清聴ありがとうございました