干潟底生生物地理的特徴

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资源描述

-128-第4章干潟底生生物の地理的な特徴飯島明子・和田恵次<日本列島全域における干潟底生動物出現状況>今回の調査で出現した底生動物は,14動物門1667種であった(巻末別表1).内訳は,海綿動物門13種,刺胞動物門61種,扁形動物門26種,紐形動物門28種,軟体動物門576種,環形動物門288種,ユムシ動物門7種,星口動物門16種,節足動物門477種,触手動物門4種,毛顎動物門2種,半策動物門11種,棘皮動物門55種,脊索動物門103種である.地域別の出現種数が最も多かったのは九州で,700種に達した(表4-1,巻末別表2).以下,沖縄で630種,中国四国で454種,近畿で380種が出現し,日本列島の西南部で特に多くの種が出現したことが明らかになった.北海道から中部東海にかけて,最も多くの種が出現したのは東北で257種,関東は190種とやや少ない傾向にあった.最も出現種が少なかった地域は小笠原であり,わずか20種を数えるのみだった.小笠原は亜熱帯域ではあっても本土から遠く離れた海洋島であること,黒潮本流からも隔たっていることにより,元々干潟生物の種数が少ないのかもしれないが,埋立によって干潟のほとんどが消失したことも,種数の少ない原因と思われる.また日本海でも出現種は少ない傾向にあった.干満差が小さく,干潟の面積が狭いことが影響していると考えられる.それぞれの地域でのみ出現した種に着目すると,もっとも種数が多かったのは沖縄で388種であり(表4-1),次いで九州,中国四国,北海道,近畿の順で多かった.今回の調査における当初の方針では,干潟の砂や泥などの底質表面や,底質中に生息する底生動物を調査対象にしていたが,調査者によっては方形枠内の岩に生息する生物や,人工基質に付着する付着生物,塩性湿地内で観察された陸生生物,淡水が主要な分布域である生物等についても報告しているため,調査地間でこれらの生物に対する取り扱い方にばらつきが見られた.また,潮下帯が主要な分布域である種も多く見られた.これらの種の分布辺縁域としての干潟の意義はけっして無視できないが,調査地間のばらつきを最小限にし,全国データを比較して干潟生物の地理的な特徴を示すため,ここでは「狭義の干潟生物」を仮に定義し,その分布状況を示す.「狭義の干潟生物」-129-とは,全出現種の中から,岩礁が主要な分布域である生物・付着生物・潮下帯や陸上や淡水域が主要な分布域である生物を差し引いたものである.その中から未記載あるいは種までの同定が不可能だった生物を除き,調査地2ヶ所以上で確認された生物541種のみを対象とした(注1).ただし,広く認知されているヨツバネスピオA型,及び,分布域が広く現存量も大きく認知度も高いHedistespp.(「ヤマトカワゴカイもしくはヒメヤマトカワゴカイ」)は省かず含めた.また地域間の比較では,南北広域にまたがり特有の種がほとんど出現しなかった日本海の調査地を,それぞれ最も近い地域に振り分けた.その結果北海道では,「狭義の干潟生物」は全体で66種出現し,北海道のみで出現したは18種だった(表4-2).北海道から東北にかけて出現し,関東以南で見られなかった種は8種だったが,北海道から関東にかけて出現した種はクロガネイソギンチャクのみであった.北海道から中部東海にかけて出現した種は3種,近畿までの範囲で出現した種も2種,中国四国にかけて出現した種も4種と少なかったが,北海道から九州まで広域に出現した種は最も多く22種を数えた.また,北海道から沖縄にかけて出現した種も8種とやや多かった.-130-東北では,「狭義の干潟生物」は全体で119種出現し,その内,東北のみで出現した種はオロチヒモムシ1種のみであった(表4-3).東北から関東まで出現し,中部東海以南では見られなかった種も,キタフナムシ1種のみであり,東北から中部東海の間で出現した種は0だった.東北から近畿までの範囲で出現した種は3種,中国四国までの範囲で出現した種は6種だった.最も多かったのは東北から九州にかけての広い範囲で出現した種で41種,次いで多かったのは東北から沖縄にかけての広域に出現した28種だった.-131-関東では,「狭義の干潟生物」は全体で111種出現し,関東のみで出現した種は4種だった(表4-4).関東から中部東海にかけて出現したものはオニアサリ1種のみ,近畿まで出現した種は2種,中国四国までの範囲に出現した種は2種だった.関東から九州にかけての範囲に出現した種が最も多く15種,次いで沖縄までの範囲に出現したものが11種だった.-132-中部東海では,「狭義の干潟生物」は全体で144種出現し,中部東海でのみ出現した種は3種だった(表4-5).中部東海から近畿にかけて出現したものは2種,中国四国にかけて出現したものは5種であった.九州にかけて出現した種は15種,沖縄にかけて出現した種は最も多く17種だった.-133-近畿では,「狭義の干潟生物」は全体で192種出現し,近畿のみで出現した種は3種,近畿から中国四国にかけて出現した種は11種だった(表4-6).九州にかけて出現した種は最も多く28種,次いで多かったのは沖縄までの範囲に出現した種で24種だった.-134-中国四国では,「狭義の干潟生物」は全体で239種出現した.中国四国のみで出現した種は4種だったが,九州にかけて出現した種は最も多く24種,次いで中国四国から沖縄まで出現した種が14種だった(表4-7).-135-九州では,「狭義の干潟生物」は全体で330種出現した.九州のみで出現した種は35種であり,その中には有明海固有種が多く含まれる(表4-8).また九州から沖縄にかけて出現した種も多く,46種であった.-136-沖縄では,「狭義の干潟生物」は全体で268種出現したが,その内,沖縄のみで出現した種が,帯性・熱帯性の種を中心に118種に達した(表4-9).-137-小笠原では,「狭義の干潟生物」は11種出現した(調査地が1ヶ所のみだったため,小笠原だけは1ヶ所以上で出現した種を扱う).小笠原のみで出現した種は2種であり,8種が沖縄と共通する亜熱帯性の種であった(表4-10).-138-上記をまとめると,「狭義の干潟生物」の出現種数が最も多かったのは九州,次いで沖縄,中国四国,近畿,東北,関東,北海道,小笠原の順であり,やはり日本列島の南西部で種数が多いという結果になった(表4-11).各地域のみで出現した「狭義の干潟生物」(ここでは仮に地域特有種と呼ぶ)の種数が,各地域で出現した種数合計に占める割合(地域特有種の地域内比率)を見ると,沖縄は最も多く,出現種の内44.0%が沖縄でのみ出現していた(表4-11).次に地域特有種の地域内比率が高かったのは北海道で,27.3%,その次は小笠原で18.2%,そして九州の10.6%と続いた.亜熱帯性・熱帯性の種が多い沖縄や,固有の生物相で知られる有明海を含む九州のみならず,北方系の特有の種を擁する北海道も,地域特有種が高い比率で出現しているという点でユニークであり,日本列島全体の干潟生物の多様性に貢献していると言えよう.九州と沖縄では,地域特有の種が多いだけではなく,他地域も含んだ広い範囲に分布する種も多かった.「狭義の干潟生物」の中で,各地域から九州もしくは沖縄まで出現した種(ここでは仮に広域分布種と呼ぶ)を拾い出し,該当地域の出現種数全体に占める割合(広域分布種の地域内比率)を見ると,最も低い中国四国でさえ全体の15.9%を占めていた(表4-11).広域分布種の比率が最も高かったのは東北で,地域全体の出現種の58.0%が,九州もしくは沖縄まで出現した種だった.残りの地域でも,広域分布種は「狭義の干潟生物」の22.2%~54.5%に達していた.これらの種には,サハリン・アラスカ・カナダなど太平洋北部を中心に分布している種(例えばヒメシラトリなど,松隈,2000)も含まれるが,東南アジア以北に分布する種も多く(例えばホトトギスやヒメムシロなど.黒住,2000;土屋,2000),黒潮あるいは対馬暖流による幼生移送が分布域の決定に大きな役割を果たしていると考えられる.-139-広域分布種の全部が,出現範囲のすべての地域から万遍なく発見された訳ではない.今回の調査での出現範囲の間で,出現の見られなかった広い空白地域が存在した種は,例えば,マキガイイソギンチャク(刺胞動物門花虫綱),ナミヒモムシ(紐形動物門無針綱),イボウミニナ,ヨシダカワザンショウ,カワグチツボ,ムシロガイ,クロスジムシロ,ヒメムシロ,オカミミガイ,クリイロコミミガイ,キヌカツギハマシイノミ,センベイアワモチ(以上軟体動物門腹足綱),ナミマガシワ,シオヤガイ,ハマグリ,スジホシムシヤドリガイ,イオウハマグリ(以上二枚貝綱),Glycerapacifica,オウギゴカイ,ウチワゴカイ,ツルヒゲゴカイ,ミナミシロガネゴカイ,マダラウロコムシ,イワムシ,ナガホコムシ,シダレイトゴカイ,ヒャクメニッポンフサゴカイ(以上環形動物門多毛綱),イソミミズ(貧毛綱),ヒダビルとシマイシビル(ヒル綱),ユムシ(ユムシ動物門ユムシ綱),スジホシムシとスジホシムシモドキ(星口動物門スジホシムシ綱),ムロミスナウミナナフシ,ワラジヘラムシ,ウリタエビジャコ,セジロムラサキエビ,スネナガイソガニ,ムツアシガニ,トリウミアカイソモドキ(以上節足動物門軟甲綱)などである(巻末別表2).分布域が分断している場合,集団間の交流低下により,個々の地域個体群のさらなる衰退の進行が危惧される.そのため空白地域におけるこれらの種の生息状況と,各地域個体群における新規加入群の加入状況は,今後精査する必要がある.またこれら広域分布種の分散力を把握するために,幼生の浮遊期間に関する知見の蓄積が必要であり,今後の研究と情報整備が待たれる.<塩性湿地・マングローブ湿地に生息する底生動物の全国的な分布状況>かつて干潟の後背域に普通に存在していた塩生植物の植生域,即ち塩性湿地・マングローブ湿地は,埋立や河川からの土砂供給の減少により,失われたり面積が縮小するなど,全国で危機的な状況にある.そのため植生域固有の生物も,生息場所の減少と共に減少し,地域的絶滅が起きるなど危険な状態にあると言われている.今回の調査では,塩性湿地・マングローブ湿地を分布中心とする種は,軟体動物門腹足綱吸腔目キバウミニナ科・ワカウラツボ科・サザナミツボ科・カワザンショウ科・クビキレガイ科・イツマデガイ科・ミズゴマツボ科・異旋目トウガタガイ科・有肺目オカミミガイ科・ドロアワモチ科・節足動物門軟甲綱端脚目ハマトビムシ科・十脚目モクズガニ科・ベンケイガニ科で合計78種出現した(表4-12).ではこれらの種は,どれほど危険な状態にあると言えるだろうか(注2).-140--141-これらの種の出現地域数に着目すると,1地域でのみ出現した種が最も多く,37種に上った.2地域でのみ出現した種は8種,3地域で出現した種は7種,4地域で出現した種は7種,5地域で出現した種は8種,6地域で出現した種は9種であった.最も多くの地域にまたがって確認されたのはフトヘナタリ(吸腔目キバウミニナ科)とクロベンケイガニ(十脚目ベンケイガニ科)で,フトヘナタリは東北から沖縄にかけて,クロベンケイガニは東北から九州にかけての7地域で出現していた.ここで,これらの種の出現状況に注目し,以下のとおり出現地域数・出現調査地数によるカテゴリ分けを行った.(表4-13参照)A)1地域・1調査地でのみ出現した種.B)複数の地域から出現したが,すべての地域で1調査地からのみ報告された種.C)複数の地域から出現したが,1つ以上の地域で1調査地からのみ報告された種.D)共通種の多い東北・関東・中部東海・近畿・中国四国・九州の6地域の内,4地域以下で出現した種.E)上記6地域の内,5地域以上で出現し,すべての地域で複数の調査地から報告された種.F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