応用生物化学実験担当者境正、江藤望研究室S312(境)、S506(江藤)英語名ExperimentofAppliedBiochemistry単位数1(選択)対象学年3実施時期前期集中オフィスアワー水曜日の昼休み(境)、月曜日の昼休み(江藤)実験のねらい第一部:2年生の時の生物化学実験で酵素の諸性質のうち最も基本的な至適pHおよび至適温度をアルカリフォスファターゼを用いて求める実験を行いました。そこで,この応用生物化学実験では酵素反応に影響を及ぼす金属イオンの影響について,ウシおよびニワトリの肝臓中のアルカリフォスファターゼを用いて調べます。さらに,酵素反応速上最も重要な定数の一であるKm値を実際に求めます。このKm値は酵素反応を理解する上で、非常に重要な性質です。金属イオンの実験と同様ウシの肝臓および消化管中のアルカリフォスファターゼを用い,そのKm値を求める方法について,以下の点を学びます。最初に,ミカエリス-メンテン式をどのように変換すれば良いかについて,検討します。さらに,得られた実験結果よりKm値を統計的手法により求めます。さらに,酵素阻害の形式を得られた結果から明らかにするにはどのようにすれば良いか考える。以上の結果を基に,酵素反応に金属イオンがどのような影響を与えるかについて再確認します。また,多くの酵素が金属イオンにより様々な影響を受けていることについて,他の多くの酵素についても各自で調べることにより,新たな課題に対して色々な手法を通して検索する能力を養います。また,酵素反応速度についての基礎的な知識を再確認するとともに,新たな課題に対して,どのような手法を用いれば解決できるかについての能力を養います。第二部:生物化学分野に限らず、多くの分野で欠かすことのできない物質の分離テクニックに関して、その原理を理解するために、モデル実験を行います。この実験では、学生自身が実験条件を考案することで、原理をより深く学べるようにしています。従って、受講生が皆同じ実験を行うとは限りません。サンプルに応じて実験条件を選択するトレーニングを積んで下さい。教育の達成目標1酵素活性に及ぼす金属イオンの影響を理解できるようになる。また,他の酵素においても活性に金属イオンが影響を及ぼしていることを理解できるようになる。2酵素のKm値を測定できるようになる。3酵素の阻害形式を決定できるようになる。4酵素の基本的な性質について理解できるようになる。5ゲルろ過カラム選択の判断ができるようになる。6緩衝液を作製できるようになる。7イオン交換カラムと緩衝液をサンプルに応じて選択できるようになる。8アフィニティーカラムを用いて抗体を精製できるようになる。9ELISAを実施できるようになる。10ELISAで使用する抗体を選択し、実験系をデザインできるようになる。カリキュラムの中での位置付け本講義は、応用生物科学科の学習・教育目標において下記の項目に該当します。E.応用生物科学分野に関する先端的、独創的な科学技術に寄与できる基礎的能力と創造力を身につけ、さらに目的達成のために計画的に調査研究を進め、まとめる能力を修得させる。3)実験データの意味を正しく考えることができる。(○)4)応用生物科学分野の実験計画を立案できる。(○)G.下記の6分野の応用生物科学に関する専門的技術に関する基礎知識とそれらを応用できる能力を身につけさせる。(○)応用生物化学、微生物機能開発学、植物機能開発学、植物生産化学、食品製造学、食品栄養生化学受講生へのメッセージ生物化学系の学生実験では、定性・定量・酵素反応・物質の分離という4本柱から成ります。生物化学実験(必修)と応用生物化学実験(選択)では、次のプログラムを用意しています。生物化学実験応用生物化学実験定性ビュレット反応、ニンヒドリン反応、キサントプロテイン反応、Hopkins-Cole反応、ニトロプルシッド反応定量Lowry法(タンパク質)、DNS法(還元糖)A280、ELISA酵素反応至適pH測定(酸性、アルカリフォスファターゼ)αアミラーゼ活性測定酵素活性に及ぼす金属イオンの影響km値測定(アルカリフォスファターゼ)物質の分離SDS-PAGEゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーその他基本アミノ酸の緩衝作用観察バッファーの作製法、動物細胞培養、透析この学生実験を受講するにあたって,生物化学に関する知識を必要としています。また,生物化学実験で履修したことを再確認しておいてください。選択科目ですので、熱意ある学生のみの受講を希望します。実験期間は1週間単位で2週間受講してもらいます(開講期間は3週間)。評価方法・評価基準小テストの成績(第一部)、レポート内容等によって評価します。上記に掲げた教育の達成目標を漏らさず修得できた者を合格とします。テキスト実験書を配布します。参考書授業中に指定します。実験の内容・方法境担当分(1-7)、江藤担当分(1,8-13)1全体説明会実験で用いる手法の原理等を説明します。第一部2-3活性に及ぼす金属の影響ニワトリの肝臓中の酸性フォスファターゼおよびアルカリフォスファターゼを用い,金属イオンが酵素活性に及ぼす影響について,基礎的な知識を再確認します。4−5酵素の反応速度論的解析ニワトリの肝臓中の酸性フォスファターゼおよびアルカリフォスファターゼのKm値測定を行います。6レポート取りまとめデータを整理してレポートを取りまとめます。図書館で酵素の基礎知識,特に金属イオンと活性の関わり合い,酵素反応速度論について十分に予習を行う必要があります。第二部7ゲルろ過ゲルろ過は、分子ふるい効果を利用してろ過する方法です。物質は、分子量に依存して分離されます。SephadexG-75を充填剤とする長さの異なるカラムを用意しています。これらに分子量マーカー(BSAとαキモトリプシノーゲンA)を流してタンパク質の分子量による溶出位置の決定を行います。次に、動物素材(カツオ)からタンパク質を抽出し、ミオグロビンとヘモグロビンとを分離します。タンパク質の溶出パターンからカラムの性能評価を行い、2種類のタンパク質の完全分離に必要なカラムの長さを計算的に推定して下さい。8緩衝液作製BSAとヘモグロビンとは、殆ど分子量に差がありません。こうした場合7で学習したゲルろ過による分離は困難です。そこで、これらタンパク質のpIの違いに着目してイオン交換カラムで分離します。そのために必要な緩衝液の条件を考察し、実際に作製します。試薬調製のための計算やpHメータの更正法等を学びます。9イオン交換クロマトグラフィーイオン交換体を固定相とするクロマトグラフィーです。物質の成分イオン交換吸着性の差を利用して分離します。8で作製した緩衝液とCM-Cellurose(陽イオン交換樹脂)あるいはQAESephadexA-25(陰イオン交換樹脂)を充填したカラムを用いて、BSAとヘモグロビンを分離します。タンパク質の溶出曲線は、280nmの吸光度を測定することで求めます。10動物細胞培養上清の回収と透析先ず、サンプルを生産する細胞(ハイブリドーマ)を検鏡します。血球系の細胞と組織の細胞を用意しますので、細胞の形態を異相差顕微鏡で観察します。また、培養上清を回収し、透析します。11アフィニティークロマトグラフィーアフィニティークロマトグラフィーは、分子間の特異的な相互作用を利用して物質を分離する方法です。ハイブリドーマの培養上清に含まれるモノクローナル抗体の精製を、ProteinG(アフィニティー)カラムで行います。12ELISAELISA(酵素免疫測定法)は、抗体の物質認識能を利用した抗原の検出法です。12で得られたサンプル中に含まれる抗体(この場合は抗原として働く)をELISAにより確認します。また、測定したい抗原に応じてELISAに用いる抗体の選択が出来るような練習問題を行います。授業評価の結果から教官が改善をしようとしている点:第一部:金属イオンが活性に及ぼす影響およびKm値の意義について,より詳細な考察ができるように,レポートの作成についての指導を行う予定です。さらに,一昨年度から行っているEメイルまたは電子書類によるレポートの提出は,より詳細なレポート作成の指導を行うことができることが明らかになったので,本年度も行うことにします。第二部:例年通り、昨年度も非常に好評でした。特に、実験内容は勿論、実験後にディスカッションを実施する点や班分けに工夫がある点、実験書やレポートの提出期限にも高評価を得ました。今年度も、新しいTAと共に充分に準備を整えて臨みます。