12静電塗装概論3【1】塗装目的静電塗装概論【2】静電塗装の導入【3】静電塗装の原理【4】プラスチック製品の静電塗装【5】静電塗装装置【6】塗装条件の設定4静電塗装概論【1】塗装目的「塗装」とは、「物の表面に塗料を移しかえること」で、塗料で物の表面を覆うことである。その目的は、(1)「物の保護」・・・・・・・・・塗料は物に塗装されると、表面に連続した大丈な膜を形成し物を周囲の環境から保護し素材を長持ちさせる。(2)「物の美粧」・・・・・・・・・多様な色彩、光沢、平滑な膜面や立体的な膜面などを形成し美しい環境をつくり生活を快適にする。(3)「特別な機能の付与」・・・防火、防水をはじめ耐薬品性、耐熱性、導電性、殺虫、付着防止など、さまざまな特殊機能をもった塗料によって素材に新しい機能を付与する。物体の保護/美粧長所1.簡単に施行ができて色彩が豊富塗料2.物の形状や寸法、重量に変化を起こさない3.塗り替えが簡単4.設備が少なくてすみ単価が安い短所メッキ1.修復性が容易でないホーロー2.概観を変えることがあるタイル3.加工費が高いステンレス4.色彩に制限がる「塗料塗装の特徴」5静電塗装概論【2】静電塗装の導入「静電塗装」とは、「静電気の力を利用して噴霧塗料を被塗物に無駄なく付着させる塗装法」。1940年ごろ、米国で世界ではじめて工業規模で実施される。日本では、1949年自転車メーカーが生産ラインへの導入に踏み切ったのが最初。当時、空気スプレー型塗装機で自転車フレームを塗装する場合、以下の問題があった。細いパイプに対して吹き抜ける量が多いことパイプの裏面が塗れず、両面塗装のため2地点から塗らねばならないこと静電塗装法塗料使用量が大幅に減少作業者の労力が1/4~1/10に軽減所用エネルギーが数分の1に減るスプレーガンkg静電塗装機kg節約量kg配電盤10.50.5木製椅子10.30.7扇風機ガード10.150.856静電塗装概論【3】静電塗装の原理被塗物をプラス極(アース状態)に保ち、塗装機をマイナス極に設定。これに高電圧を供給して両極間に静電界を形成し、霧化した塗料粒子にマイナスの電荷を与えることによって、被塗装物の側面や背面にまで(Wraparoundeffect)塗料粒子を塗着させる塗装技術。(1)ガン先端でのイオン化状態(2)塗料粒子に帯電する状況(3)帯電した塗料粒子が塗着する状況“Wraparound“effect静電が付与された塗料粒子が、被塗装物の正面だけでなく側面あるいは背後まで回りこんで塗着する現象。7静電塗装概論【4】プラスチック製品の静電塗装プラスチック成型品でも金属と同様に静電塗装することが可能導電性のないプラスチック成型品を静電塗装するためには?プラスチック成型品の電気抵抗値を一時的(塗料塗布時)に下げる処理が必要静電塗装する前に、界面活性剤(通電液、または導電処理剤と呼ぶ)を塗布し、表面電気抵抗値を下げる。静電塗装する前に導電性プライマーをエアスプレーし、表面電気抵抗値を下げる。または8静電塗装装置の設置例と主な構成機器①静電塗装機②高電圧発生器・コントローラー③レシプロケ-ター④塗料供給装置⑤色替えバルブ(CCV)⑥制御盤⑦塗装ブース静電塗装概論【5】静電塗装装置9特徴薄膜で塗り回数が多く、次の様な塗装条件に適する。①小品種,多量生産向き②美粧塗装向き③大吐出量向き構造/原理Diskの回転に伴う遠心力によって薄いフィルム状になった塗料は、更にDiskのエッジに達する。その間に塗料は高電圧下のDisk上で広がりながら帯電する。帯電した塗料はこのエッジから飛び出す時に、微粒化される。静電塗装概論【5】静電塗装装置①回転霧化型静電塗装機(Disk型)10静電塗装概論【5】静電塗装装置①回転霧化型静電塗装機(Bell型)構造/原理Disk型と同様、Bellカップを高速で回転させ均一で細かな塗料粒子を作りだす。シェ-ピングエア圧力によるパターンの調整ができる。特徴高い塗着効率での塗装ができる。①美粧塗装向き②高粘度塗料(シンナーレス塗料)③難微粒化塗料11静電塗装概論【5】静電塗装装置①エア霧化型静電塗装機(Gun型)構造/原理エアキャップの外で圧縮空気と塗料を混合し霧化され、その塗料粒子がGunの電極と被塗物の間に作られた静電界を通過する際、負に帯電される。この帯電された塗料粒子が反対極である被塗物表面に吸着する。特徴汎用性の高い塗装機で条件設定が比較的容易。①他品種少量生産向き②複雑形状の被塗物③ランダム生産向き④メタリック塗装12高電圧(HV)発生器高電圧発生器(カスケードタイプ)カスケードコントローラCタイプCIIタイプHD/ADタイプ静電塗装概論【5】静電塗装装置②高電圧発生装置交流電源から高電圧(~-90kv)を発生させる装置で、スパークガード及び高電圧アーススイッチと組み合わせて使用する高電圧発生器(C/CIItype)と高電圧コントローラと組み合わせて使用するカスケードタイプがある。13塗装機を自動的に操作する装置。コンベヤーに吊るされた被塗物に対し平行又は垂直に往復する。駆動源としてモーターを使用し、各種コンローラとの組合せでストローク、塗装機移動速度等の種々の制御ができる。正確でより細かな制御ができるACサーボタイプと低速性に優れているインバータタイプ移動速度制御方式がある。ACサーボインバータ垂直型水平型DISK用DERタイプGUN&BELL用CERタイプGUN&BELL用Rafford96GUN&BELL用TERタイプ静電塗装概論【5】静電塗装装置③レシプロケーター14圧送タンクピストンポンプダイアフラムポンプギアポンプ静電塗装概論【5】静電塗装装置④塗料供給装置優れた定量供給能力15カラーチェンジバルブトリガーダンプバルブ静電塗装概論【5】静電塗装装置⑤カラーチェンジバルブ(CCV)交塗料の色替及び洗浄を、色替制御回路との組合せにより、自動で迅速に行うためのバルブ16RCS-1RansmacsRCS-120RPC-100静電塗装概論【5】静電塗装装置⑥制御盤種々の塗装制御をおこなう操作盤17静電塗装概論【6】塗装条件の設定(1)塗膜形成および塗着効率に関わる要因塗装条件設定を行う際、塗膜形成および塗着効率に関わる要因を十分理解する必要がある。a)塗膜形成に関わる要因回転霧化方式(Bell/Disk)の場合1.Bell/Diskの直径2.塗料粘度3.塗料吐出量4.電圧5.回転数6.塗料表面張力7.塗料誘電率8.塗装距離9.パターン寸法10.被塗物搬送速度11.被塗物形状12.排気速度13.塗料不揮発分微粒化要因(主因)塗料付着要因(副因)塗膜形成1.吹付け空気圧2.塗料粘度3.塗料吐出量6.電圧5.吹付け距離4.塗料表面張力7.搬送速度13.ガン運行速度11.パターン寸法10.塗料電気的性質8.被塗物形状9.排気速度12.塗料不揮発分エア霧化方式(Gun)の場合18静電塗装概論【6】塗装条件の設定印可高電圧b)塗着効率に関わる要因塗装距離被塗物吊り密度溶剤の適正化微粒化塗着効率(TE)19静電塗装概論【6】塗装条件の設定①高電圧(HV)と塗着効率(TE)405060708090100-40-60-80-90HV(kV)TE(%)BellGun20静電塗装概論【6】塗装条件の設定平均粒子径(SMD)と塗着効率40506070809010010203040SMD(μm)TE(%)BellGun②微粒化(霧化)と塗着効率微粒化された塗料粒子への荷電は表面帯電であり、効率よい帯電には塗料粒子を細かくし単位体積あたりの表面積を増やす必要がある。微粒化(塗料を細かい粒子にすること)は、塗装機から塗出される塗料粒子をレーザービームの散乱光で測定して得られたSMD値(ザウター平均粒子=総体積/総表面積)を基準にしている。塗着効率に対する最適粒子径は、SMD値20~30μmの範囲にある。BellおよびGunの一般的な粒子分布状態特殊加工された部位の霧化特殊加工されていない部位の霧化21静電塗装概論【6】塗装条件の設定③塗装距離(HTD)と塗着効率塗装距離(HTD)と塗着効率405060708090100200300400HTD(mm)TE(%)BellGun塗着効率はHTDが近いほど高い。この傾向はエア霧化のGunに比べ静電気引力での塗着を活用する回転霧化型塗装機(Bell/Disk)の方が、より顕著に影響を受ける。安全性も考慮した適正塗装距離は、約300mm(-90kV時)塗着効率だけ見るとクーロンの法則に従い塗装距離は近いほど良いが、火災の原因となるスパーク放電の危険性が増す。この最適バランスの距離が適正塗装距離。ランズバーグは、スパーク放電エネルギーを抑える樹脂ベルを開発、必要に応じHTD200mmを実現している。22静電塗装概論【6】塗装条件の設定④溶剤の適正化電気抵抗値と塗着効率(TE)4050607080901000.11.010Ω/RCTE(%)BellGun静電塗装での溶剤選定は以下の2項目に注意が必要。溶剤の高沸点化(蒸発速度の調整)荷電粒子間の静電反発で塗料密度が下がり、溶剤蒸発が必要以上に促進される。このため非静電と同じ溶剤ではドライ塗装になりやすく、溶剤の高沸点化が必要。極性溶剤の添加(電気抵抗値の調整)極性溶剤の役割は、塗料の電気抵抗値を下げ塗料粒子に電荷を与えやすくすること。推奨電気抵抗値:0.1~1.0MΩ/RC時)極性溶剤の添加で注意すべき点溶剤の適正な蒸留曲線が崩れてしまうほど過度に添加しないこと。少量の添加で十分に抵抗値の下がる調整剤の使用を推奨23静電塗装概論【6】塗装条件の設定⑤被塗物の吊り密度と塗着効率被塗物の吊り密度と塗着効率(TE)30405060708090100150200250300ハンガーピッチ(mm)TE(%)BellGun基準平板右図のようなテストで被塗物の吊り密度と塗着効率を見ると、当然ながら被塗物間に余分な空間があるほど塗着効率がさがる。ハンガーを工夫し、被塗物間の吊り密度を最適にするのが塗着効率改善に非常に有効である。ランズバーグでは入り込み性とのバランスを考慮し、適正空間距離は被塗物奥行きの最大2.5倍までを目安としている。24静電塗装概論【6】塗装条件の設定(1)塗装条件の算出①塗装距離(HTD)塗装機先端から被塗装物までの距離H.T.DH.T.D(Inch)=2x設定電圧(kV)/15(kV)通常H.T.D=300mm25静電塗装概論【6】塗装条件の設定②必要吐出量吐出量とは、塗装機より1分間に吐出される塗料の量をいい、この吐出量は実際に塗装を行う前に、計算式により算出することができる。(被塗装物に何μの塗膜を付けるかにより吐出量は変化する)<吐出量算出>理論値より、1m2に1μ付けるのに1ccが必要。(1mx1mx1μ=1cc)吐出量=(cm3/min)レシプロストローク(m)X塗着効率(%)X膜厚(μm)Xコンベアスピード(m/min)塗装機台数NV(Vol%)X●塗着効率(%):塗装に使用した塗料/被塗物に付着した塗料X100一般的な目安は、Gun50%(-60kV)、70%(-90kV)Bell85%Disk90%●通常NV(不揮発分NonVolatileMaterial)は、比重比WT(%)で示されるが本算出式では容積比Vol(%)を使用。WT(%)=揮発後の塗料重量揮発前の塗料重量X10026静電塗装概論【6】塗装条件の設定③レシプロケーターの線速(塗装機の移動速度)上下または左右の往復運動をする塗装機が求められる移動速度は次式で求められる。一般的な線速の目安は、Gun:最大75m/minBell/Disk:最大35m/minGun/Bellの場合線速=(m/min)コンベアスピード(m/min)X塗装機台数塗り回数X塗装機パターン幅(m)Xストローク(m)●塗装機の一般的なパター