ISO9001:2015品質マネジメントシステム要求事項序文この規格は、2015年に第5版として発行されたISO9001を基に、技術的内容及び構成を変更することなく作成した日本工業規格である。なお、この規格で点線の下線を施してある参考事項は、対応国際規格にはない事項である。0.1一般品質マネジメントシステムの採用は、パフォーマンス全体を改善し、持続可能な発展への取組みのための安定した基盤を提供するのに役立ち得る、組織の戦略上の決定である。組織は、この規格に基づいて品質マネジメントシステムを実施することで、次のような便益を得る可能性がある。a)顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供できる。b)顧客満足を向上させる機会を増やす。c)組織の状況及び目標に関連したリスク及び機会に取り組む。d)規定された品質マネジメントシステム要求事項への適合を実証できる。内部及び外部の関係者がこの規格を使用することができる。この規格は、次の事項の必要性を示すことを意図したものではない。-様々な品質マネジメントシステムの構造を画一化する。-文書類をこの規格の箇条の構造と一致させる。-この規格の特定の用語を組織内で使用する。この規格で規定する品質マネジメントシステム要求事項は、製品及びサービスに関する要求事項を補完するものである。この規格は、Plan-Do-Check-Act(PDCA)サイクル及びリスクに基づく考え方を組み込んだ、プロセスアプローチを用いている。組織は、プロセスアプローチによって、組織のプロセス及びそれらの相互作用を計画することができる。組織は、PDCAサイクルによって、組織のプロセスに適切な資源を与え、マネジメントすることを確実にし、かつ、改善の機会を明確にし、取り組むことを確実にすることができる。組織は、リスクに基づく考え方によって、自らのプロセス及び品質マネジメントシステムが、計画した結果からかい(乖)離することを引き起こす可能性のある要因を明確にすることができ、また、好ましくない影響を最小限に抑えるための予防的管理を実施することができ、更に機会が生じたときにそれを最大限に利用することができる(A.4参照)。ますます動的で複雑になる環境において、一貫して要求事項を満たし、将来のニーズ及び期待に取り組むことは、組織にとって容易ではない。組織は、この目標を達成するために、修正及び継続的改善に加えて、飛躍的な変化、革新、組織再編など様々な改善の形を採用する必要があることを見出すであろう。この規格では、次のような表現形式を用いている。-「~しなければならない」(shall)は、要求事項を示し、-「~することが望ましい」(should)は、推奨を示し、-「~してもよい」(may)は、許容を示し、-「~することができる」、「~できる」、「~し得る」など(can)は、可能性又は実現能力を示す。「注記」に記載されている情報は、関連する要求事項の内容を理解するための、又は明解にするための手引である。0.2品質マネジメントの原則この規格は、JISQ9000に規定されている品質マネジメントの原則に基づいている。この規定には、それぞれの原則の説明、組織にとって原則が重要であることの根拠、原則に関連する便益の例、及び原則を適用するときに組織のパフォーマンスを改善するための典型的な取組みの例が含まれている。品質マネジメントの原則とは、次の事項をいう。-顧客重視-リーダーシップ-人々の積極的参加-プロセスアプローチ-改善-客観的事実に基づく意思決定-関係性管理0.3プロセスアプローチ0.3.1一般この規格は、顧客要求事項を満たすことによって顧客満足を向上させるために、品質マネジメントシスムを構築し、実施し、その品質マネジメントシステムの有効性を改善する際に、プロセスアプローチを採用することを促進する。プロセスアプローチの採用に不可欠と考えられる特定の要求事項を4.4に規定している。システムとして相互に関連するプロセスを理解し、マネジメントすることは、組織が効果的かつ効率的に意図した結果を達成する上で役立つ。組織は、このアプローチによって、システムのプロセス間の相互関係及び相互依存性を管理することができ、それによって、組織の全体的なパフォーマンスを向上させることができる。プロセスアプローチは、組織の品質方針及び戦略的な方向性に従って意図した結果を達成するために、プロセス及びその相互作用を体系的に定義し、マネジメントすることに関わる。PDCAサイクル(0.3..2参照)を、機会の利用及び望ましくない結果の防止を目指すリスクに基づく考え方(0.3.3参照)に全体的な焦点を当てて用いることで、プロセス及びシステム全体をマネジメントすることができる。品質マネジメントシステムでプロセスアプローチを適用すると、次の事項が可能になる。a)要求事項の理解及びその一貫した充足b)付加価値の点からの、プロセスの検討c)効果的なプロセスパフォーマンスの達成d)データ及び情報の評価に基づく、プロセスの改善図1は、プロセスを図示し、その要素の相互作用を示したものである。管理のために必要な、監視及び測定のチェックポイントは、各プロセスに固有なものであり、関係するリスクによって異なる。図1-単一プロセスの要素の図示0.3.2PDCAサイクルPDCAサイクルは、あらゆるプロセス及び品質マネジメントシステム全体に適用できる。図2は、箇条4~箇条10をPDCAサイクルとの関係でどのようにまとめることができるかを示したものである。終点出発点インプットの源泉インプット活動前工程のプロセス例提供者(内部又は外部)顧客、他の密接に関連する利害関係者におけるプロセス物質、エネルギー、情報例製品、サービス、決定の形にて物質、エネルー、情報例材料、資源、要求事項の形にて後工程のプロセス例顧客(内部又は外部)、他のみっせるに関連する利害関係者におけるプロセスアウトプットの受領書パフォーマンスを監視及び測定するための管理及びチェックポイントの側アウトプット注記()内の数字はこの規格の箇条番号を示す。図2-PDCAサイクルを使った、この規格の構造の説明PDCAサイクルは、次のように簡潔に説明できる。-Plan:システム及びそのプロセスの目標を設定し、顧客要求事項及び組織の方針に沿った結果を出すために必要な資源を用意し、リスク及び機会を特定し、かつ、それらに取り組む。-Do:計画されたことを実行する。-Check:方針、目標、要求事項及び計画した活動に照らして、プロセス並びにその結果としての製品及びサービスを監視し、(該当する場合には、必ず)測定し、その結果を報告する。-Act:必要に応じて、パフォーマンスを改善するための処置をとる。0.33リスクに基づく考え方リスクに基づく考え方(A..4参照)は、有効な品質マネジメントシステムを達成するために必須である。リスクに基づく考え方の概念は、例えば、起こり得る不適合を除去するための予防処置を実施する、発生したあらゆる不適合を分析する、及び不適合の影響に対して適切な、再発防止のための取組みを行うということを含めて、この規格の旧版に含まれていた。組織は、この規格の要求事項に適合するために、リスク及び機会への取組みを計画し、実施する必要がある。リスク及び機会の双方への取組みによって、品質マネジメントシステムの有効性の向上、改善された結果の達成、及び好ましくない影響の防止のための基礎が確立する。機会は、意図した結果を達成するための好ましい状況、例えば、組織が顧客を引き付け、新たな製品及びサービスを開発し、無駄を削減し、又は生産性を向上させることを可能にするような状況の集まりの結果として生じることがある。機会への取組みには、関連するリスクを考慮することも含まれ得る。リスクとは、不確かさの影響であり、そうした不確かさは、好ましい影響又は好ましくない影響をもち得る。リスクから生じる、好ましい方向へのかい(乖)離は、機会を提供し得るが、リスクの好ましい影響の全てが機会をもたらすとは限らない。0.4他のマネジメントシステム規格との関係この規格は、マネジメントシステムに関する規格間の一致性を向上させるために国際標準化機構(ISO)が作成した枠組みを適用する(A.1参照)。この規格は、組織が、品質マネジメントシステムを他のマネジメントシステム規格の要求事項に合わせたり、又は統合したりするために、PDCAサイクル及びリスクに基づく考え方と併せてプロセスアプローチを用いることができるようにしている。この規格は、次に示すJISQ9000及びJISQ9004に関係している。-JISQ9000(品質マネジメントシステム-基本及び用語)は、この規格を適切に理解し、実施するために不可欠な予備知識を与えている。-JISQ9004(組織の持続的成功のための運営管理-品質マネジメントアプローチ)は、この規格の要求事項を超えて進んでいくことを選択する組織のための手引を提供している。附属書Bは、ISO/TC176が作成した他の品質マネジメント及び品質マネジメントシステム規格類について詳述している。この規格には、環境マネジメント、労働安全衛生マネジメント又は財務マネジメントのような他のマネジメントシステムに固有な要求事項は含んでいない。幾つかの分野において、この規格の要求事項に基づく、分野固有の品質マネジメントシステム規格が作成されている。これらの規格の中には、品質マネジメントシステムの追加的な要求事項を規定しているものもあれば、特定の分野内でのこの規格の適用に関する手引の提供に限定しているものもある。この規格が基礎としたISO9001:2015と旧版(ISO9001:2008)との間の箇条の相関に関するマトリクスは、ISO/TC176/SC2のウェブサイト()で公表されている。0序文/解説0.1一般(1)0.1では,ISO9001:2015(以下「2015年版」という)のねらいと特色を述べている.(2)真に役立つ品質マネジメントシステムとすること、及び規格追随型でない組織の特色を生かした品質マネジメントシステムとすることを勧めている.(3)組織内外の関係者が規格を使用可能としているが,この部分を含めて,認証に関する言及は避け、認証以上に,本質的な運用と使用を意図している。(4)2015年版では,継続的という語を含まない「改善」の表記を優先的に用いている。(5)規格で用いる助動詞の意味を明確にしている。0.2品質マネジメントの原則(1)品質マネジメントの原則はISO9000:2015の2.3で規定されている.(2)2008年版では8原則としていたが「プロセスアプローチ」と「マネジメントヘのシステムアプローチ」は、不可分であり,統合して7つとした。(3)2015版では,各原則の説明,根拠,主な便益,取り得る行動について記して普及を目指している。0.3プロセスアプローチ(1)ISO9001はプロセスアプローチを基本とする規格である。(2)他の規格では、例えば,ISO14001は「環境影響をもとに,何が著しい環境側面であるかを特定し,個々の著しい環境側面に応じた対応策を立て,指定された事項を実施する」という姿勢・性質の規格である。特定の事項にスポットライトを当て,それらに重点的に取り組むスタンスである。道路交通安全マネジメントシステムを扱うISO39001も同様で,特定の事項への取組みを指定して,徹底的に対処する。これらは,いずれもリスクを切り口とする規格であり,扱う分野に見合ったものである。(3)それに対して,ISO9001は「意図した製品及びサービスを,確実に提供する」ための規格である。そのためには,特定の事項だけに集中するわけにいかず,組織の活動全体を整合させて,一丸となって,恒常的に対応する必要があ