日本語学期末の筆記試験の得点70%+平日の成績(授業中の発言、授業への参加程度、宿題など)20%+出席率10%•本講義の構成•序章「日本語学」とは何か?•第一章音声学と音韻論•第二章文字論•第三章語彙論•第四章文法論序章「日本語学」とは何か?言語学の研究対象と関連分野言語学、日本語学と国語学世界の中の日本語学雨雫(あめしずく)•雨脚(あまあし)•「ら抜き言葉」と「さ入れ言葉」一、言語学の研究対象と関連分野1、言語学の定義言語学は、人類が使用する言葉の本質や構造を科学的に記述する学問である。2、言語学の研究対象二、言語学、日本語学と国語学2、国語学と日本語学国語学・日本人の、日本人による、日本人のための国語学。・母語として日本人が身につけるべき教養としての日本語について(歴史的変遷も含めて)研究。日本語学・世界人の、世界人による、世界人のための日本語学。・外国人への日本語教育をも視野に入れて、日本語を世界に存在する言語の中の1つ(つまり1つの外国語)として研究。三、世界の中の日本語1、日本語はどういう言語か・「日本には系統を同じくする言語がないということは当たり前だ。日本は神の国で日本語は神の言葉の末裔であるから」(平泉澄)・「吾々は子供の頃から今の国語に慣らされ、それ程感じていないが、日本の国語程不完全で不便なものはないと思う。」(志賀直哉)2、日本語の系統論・北方説(アルタイ語族)・南方説(ポリネシア語族)・混合説(アウストロネシア語とアルタイ語の混合)3、日本語の類型論4、日本語学の具体研究対象•音素→単音→音節→形態素→語→文節→文第一章音声学と音韻論第一節音声と発音器官•。例えば雷鳴は言語音ではない(→非言語音)。→言語音と非言語音との違い:分節できるかどうか•音声学…言語の音声を研究をする学問だ。声門の閉じ方(1)固く閉じる(息が遮断される)声門閉鎖音[ʔ]例:日本語で「ハイッ」[haiʔ]、「エッ」[eʔ]、「ガンバッテッ」[gambatteʔ](2)ゆるく閉じる(息が声帯を振動させる)有声音例:濁音(3)狭く開ける(息がもれて摩擦音を立てる)声門摩擦音例:[h](4)広く開ける(息が自由に通過する)無声音例:ペット[petto]の[tt]•調音点…調音器官のうち、あまり動かない部位のこと。上唇、口蓋、歯茎など。調音位置とも呼ばれる。•調音者…調音器官のうち、動くことで呼気の流れを妨げる部位のこと。•調音法…調音点と調音者の働きによって子音を出す方法。第二節単音日本語の単音:子音、半母音、母音単音の表記:音声学における単音はIPAを始めとした音声記号をブラケット[]で囲んで単音表記する。日本語の子音子音とは口の中で空気の流れを妨害することによって発する音だ。[p]、[b]、[t]、[d]、[k]、[g]、[s]、[z]、[m]、[Φ]、[ts]、[dz]、[n]、[ɲ]、[ʃ]、[ʒ]、[tʃ]、[dʒ]、[r]、[ç]、[h]、[ŋ]、[N]子音の分類•声帯振動の有無、調音位置、調音方法によってそれぞれの音の特徴が表されている。例:声帯振動調音位置調音方法無声両唇閉鎖音声帯振動の有無⇒有声子音・無声子音•調音位置によっての分類(1)両唇音:上下の唇を用いること。→[p]、[b]、[w]、[m]、[Φ](2)歯音:上歯と舌先を用いること。→[s]、[z]、[ts]、[dz](3)歯茎音:歯茎と舌先を用いること。→[t]、[d]、[n]、[ɲ]、[ʃ]、[ʒ]、[tʃ]、[dʒ]、[r](4)硬口蓋音:硬口蓋と前舌を用いること。→[ç]、[ʝ](5)軟口蓋音:軟口蓋と後舌を用いること。→[k]、[g]、[ŋ]、[N](6)声門音:声門で発生するもの。→[h]•調音方法によっての分類。(1)破裂音→[p]、[b]、[t]、[d]、[k]、[g](2)摩擦音→[w]、[Φ]、[s]、[z]、[ʃ]、[ʒ]、[ç]、[ʝ]、[h](3)破擦音→[ts]、[dz]、[tʃ]、[dʒ](4)鼻音→[m]、[n]、[ɲ]、[g]、[N](5)はじき音→[r]日本語の半母音•[j]-(硬口蓋接近音)「や」「ゆ」「よ」の頭子音•[w]-(両唇接近音)「わ」の頭子音日本語の母音•[a]、[i]、[ɯ]、[e]、[o]•舌の上下の位置→狭母音(高母音)・半狭母音(半高母音)・半広母音(半低母音)・広母音(低母音)•舌の前後の位置→前舌母音、後舌母音、中舌母音•唇の丸めの有無→円唇母音、非円唇母音(平唇母音)。•ア[a]非円唇、後舌、低母音•イ[i]非円唇、前舌、高母音•ウ[ɯ]非円唇、後舌、高母音•エ[e]非円唇、前舌、中母音•オ[o]円唇、後舌、中母音第三節音素•音素…意味の区別に役立つ最小単位。•音素の表記:音韻論で抽出した有限の音素(phoneme)はスラッシュ//の間に入れて音韻表記する。日本語音素の種類·母音音素:/a/、/i/、/u/、/e/、/o/音素と単音の対応関係/k/-[k]/s/-[s]、[ʃ]/t/-[t]/n/-[n]、[ɲ]/m/-[m]/r/-[r]/d/-[d]/g/-[g]、[ŋ]/b/-[b]/h/-[h]、[ç]、[Φ]/p/-[p]/c/-[ts]、[tʃ]/z/-[z]、[dz]、[ʒ]、[dʒ]•異音…同じ音素で環境によって現れる異なった単音。自由異音と条件異音に区別される。(P20)•自由異音…互いに入れ替えても意味が変わらない異音。•条件異音…互いの分布を侵さず、入れ替えることのできない異音。思考:湖北省の方言で、音素の自由異音がありますか。参考:兰难→同音/l//n/•最小対語…1つの単音だけ異なる語。(P20)例かに\かき\かみ•環境…ある単音の前後。例sasの環境はa•分布…ある要素が現れる環境のすべて。例sの分布–a–u–e–o•相補的分布…あるものとあるものが互いに重複することも空白ができることもない関係のこと。例sの分布–a–u–e–oʃの分布–iこのとき、sとʃは相補的分布しているという。質問:次の言い方が正しいか?①最小対語の異なる単音は異なる音素である。正解:○.例最小対語かに[kani]-かき[kaki]→nとkは異なる音素②相補分布する単音は同一の音素である。正解:○.撥音/N/•異音\[m][n][ŋ][m]:[m,p,b]の前→例:専門、ランプ、ポンプ、全部、看板[n]:[t,d,n,s,z]の前→例:簡単、ベンチ、寒暖、完成、完全、関心[ŋ]:[k,g,h]の前→例:関係、歓迎促音/Q/•撥音/N/と似た相補的分布が観察される。[p]:[p]の前→例:一杯[ippai][t]:[t]の前→例:一体[s]:[s]の前→例:一切[ʃ]:[ʃ]の前→例:一生[k]:[k]の前→例:一回第四節音節とアクセント一、日本語の音節•音素的音節:学校ガッ・コー(2音節)→(音声学)•モーラ音節:学校ガ・ッ・コ・ウ(4拍)→(音韻論)✔(亀井孝)•拍(モーラ)…発音における一定の時間的長さを持った音の単位。•等拍性…音節と拍が1対1対応していること。日本語は等拍性の言語であるとされる。(1音節1拍)例外・撥音「ん」「かんだ」は2音節3拍・促音「っ」「らっぱ」は2音節3拍・長音「チョコレート」は4音節5拍日本語の拍•日本語:112拍•ハワイ語:45拍•中国語:411拍•英語:3万拍•開音節…母音で終わる音節。•閉音節…子音で終わる音節。音節の中心に母音がある。•質問:次の言い方が正しいか?あらゆる日本語の音節は開音節だ。正解:×例えば:にほんあかちゃん…日本語の音節の特徴1、音節の数が少なく、構造的にも単純だ。2、撥音、長音、促音は例外として、全ての音節は母音で結び、大体一子音プラスー母音からなる開音節だ。3、ン、ッのような特殊な音節があり、音節には二つ以上の子音が並ばない。4、大部分の音声がいずれかの母音を含んでいる。子音が単独で発音されることはほとんどない。日本人の音感覚•母音太宰施門(フランス文学研究の専門家)あ―高く大きくい―細く鋭くう―暗く鈍くえ―明るく平たくお―丸くて重い•ちいさいちかいひくいみじかい•おおきいとおいたかいながい•子音(金田一春彦)カ行―乾いた堅い感じ→ミイラは石炭のようにコチコチだった。サ行―快い、時に湿った感じ→きれいな小川が、さらさらと庭内に流れ込んで、池に注ぐ。タ行―強く、男性的な感じ→こっちへ向かってたったっと足早に歩いてくる男がいる。ナ行―ねばる感じ→白くて小太りした肌は、触るとぬめぬめと滑らかだった。ハ行―軽く、抵抗感のない感じ→蝶はひらひらと舞うように飛んでいった。マ行―まるく、女性的な感じ→むくむくとはちきれいそうに太った、丈夫そうな赤ん坊。ヤ行―やわらかく、弱い感じ→雛鳥がよちよち母鳥の後をついていく。ラ行―流動、不滞の響きがありワ行―もろく、こわれやすい感じ→悪寒(おかん)で全身がわなわな震える。•清音と濁音の違い•清音の方が小さく、きれいで速い感じである。コロコロ:ハスの上で水玉が転がる感じの形容。ゴロゴロ:大きく荒く遅い感じで、力士が土俵の上で転がるような時の形容。キラキラ:宝石が輝いた光ギラギラ:蛇とかの目の光•濁音で始まる和語ドブ、ビリ、ドロ、ゴミ、ゲタ広告:たちまちに色白のビハダになります。女の子の名前には、濁音から始まるのが少ない。____________________拗音:シャブル、シャベル、シャレル、チャチ日本語のアクセント•韻律的特徴:音の長さ、音の強さ、音の高さアクセント、プロミネンス、イントネーション•アクセント…語に特有の強弱・高低の際立った音の配置。•プロミネンス…文中のある部分を強調する言い方。•イントネーション…文全体の高低の音の配置。アクセントの種類•強弱アクセント…音の強弱の位置の違いによって意味を区別する方法。(英語とか)•高低アクセント…音の高低の位置の違いによって意味を区別する方法。(中国語、日本語など)共通語のアクセント•日本語には代表的な2つの系統は東京式アクセントと京阪式アクセントだ。•共通語のアクセントでは、頭高型、中高型、尾高型、平板型の4種類のパターンが存在する。この内、平板型以外のアクセントを起伏型とも呼ぶ。•頭高型(あたまだかがた):最初の音節が高く、それ以降の音節が低い場合。例:「カラス」(\_)•中高型(なかだかがた):最初の音節は低く、次以降の音節が高くなり、単語の終わりまでにまた低くなる場合。例:「タマゴ」(/\)•尾高型(おだかがた):最初の音節は低く、それ以降の音節は高いが、後に続く助詞が低くなる場合。例:「オトコ(が)」(/ ̄(\))•平板型(へいばんがた):最初の音節が低く、助詞も含めそれ以降の音節が高くなる場合。例:「オトナ(が)」(/ ̄( ̄))•アクセント核あるモーラの直後でアクセントが高から低に下がるとき、そのモーラをアクセント核という。アクセント・ルール①名詞のアクセントパターンは「n+1」②1拍目と2拍目の高さが異なる。HHLLLLHLLLHH③一度下がったら上がらない。HLLHLHLH④後の助詞と関わっている。•第五節日本語の音韻変化•音韻変化:言語音声における変化。•音韻変化には、個々の音が内的原因から個別的に変化する場合と、隣接する音の影響により条件的に変化する場合とに分けられる。•例:英語の複数語尾-sにおける発音の仕方cats[kæts]とdogs[dɔgz]•【思考】現代中国語では、音韻変化という現象がありますか。•例:①「啊」人好多啊咱们哥俩好啊好蓝的天啊好美的风景啊这病得治啊→人好多啊(ya)咱们哥俩好啊(wa)好蓝的天啊(na)好美的风景啊(nga)这病得治啊(ra)•②子音[w]の音便[w]→[v]挖(wa/va)掘歪歪(wai/vai)扭扭为(wei/vei)什么一起玩儿(wer/ver)弯弯(wan/van)的月亮闻(wen/ven)鸡起舞水汪汪(wang/vang)不倒翁(weng/veng)。•母音