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『千と千尋の神隠し』と『となりのトトロ』の物語の深層１・はじめに宮崎駿監督のアニメーション画『千と千尋の神隠し』と『となりのトトロ』などは、近年最も有名かつ重要な物語である。これらの作品が作った数々の「日本一」は、まさに国民的作品と呼ばれるにふさわしい。それだけではなく日本国内に限らず、海外でも高く評価され、今や国際的な作品となった。『千と千尋の神隠し』と『となりのトトロ』をめぐっては、さまざまな問題意識を持って各分野における学者は各視点から評論し、読み解いてきた。同時に評論や解説書などが数多く現れてきた1）。本論では二つのアニメの比較を通じて共通点と相違点の分析から二つの物語に隠された深層を究明したい。２・共通点と相違点の発見（１）二つの物語の共通点共通するものを発見するために、まずは物語のあらすじから分析。千尋一家が郊外の引っ越し先に向かう途中で、異世界で食べてはいけない物をたべて豚に変えられた両親を救うために、千尋は困難の立ち向かい、様々な出会いと経験を経て、実現世界に生還するという冒険譚である。『となりのトトロ』は田舎へ引っ越してきた草壁一家のサツキ、メイ姉妹と、“もののけ”とよばれる不思議な生き物「トトロ」との交流を描く。粗筋は「引越し」というキーワードを明らかにした。『千と千尋の神隠し』と『となりのトトロ』は共に主人公の少女が、引越しを契機に、異世界に遭遇するという物語の設定になっている。共通点をまとめると以下の通りである。表１『千と千尋の神隠し』と『となりのトトロ』の共通点『千と千尋の神隠し』『となりのトトロ』主人公小４の少女小４の少女物語の契機引越し引越し主人公の体験異世界との遭遇異世界との遭遇（２）二つの物語の相違点しかし、物語の展開は大きく異なっている。主な相違点をまとめると表２のようになる。表２『千と千尋の神隠し』と『となりのトトロ』の相違点『千と千尋の神隠し』『となりのトトロ』時代の背景現代バブル経済崩壊後の日本昭和３０年代初頭高度経済成長期前の日本主人公の性格受身で、無気力で、無関心な態度。異世界で初めて働くことを学ぶ明るく、元気な、しっかりとした人。前向きで一生懸命な態度。母親のいない家庭で家事をして、妹の面度をみている。両親の性格冷淡ちゃんと子供を守っている。引越しに対する態度不機嫌生き生きとして、引越しにこころ弾ませている。異世界に対する態度戸惑う楽しい以上のそれぞれの違うところは時代背景に係わっていると考えている。現代になると、社会が不安定になり、引越しも頻繁になる。そのような時代変遷の下で、人々の間の人間関係も変化しつつある。家庭内でもその時代変化の陰が見える。草壁家族は明るく、暮らしているの対して、千尋家族は無関心で無気力に生きている。大人たちだけではなく、子供たちもそのような厳しい状況に直面している。しかし、大人たちは引越しなどが子供に与える悪い心理負担に対してぜんぜん関心を持っていない。さらに、近年日本では離婚率と自殺率が高くなり、いじめ事件が深刻になり、子供たちはだんだん危機に陥る。その二つの作品を通じて、宮崎駿氏が子供に対する関心を喚起しようとする。私の考えでは、それは二つの作品が強調するもの、或いは深層であるといえるだろう。３・物語に隠されたものから再分析優秀な作品は時代の変化、人々の暮らし方、考え方などを反映すると言われている。その点から見ると『千と千尋の神隠し』と『となりのトトロ』は当然ヒットになる。日本のアニメ文化は日本だけではなく、世界中人気になっている。それは物語の中に何か魅力的なものが隠されているからである。ただ娯楽のものとして、見た後すぐに忘れるべからず、真剣に考えたほうがいいと思う。その中から、積極的な力を得る可能性もある。