ゆとり教育

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ゆとり教育北九州市立大学経済学部経済学科3回生吉田愛(担当教員:藤井敦)2006年2月6日第1節はじめに私は小学生の時から将来教師になることを夢見てきました。今もその夢は変わることなく、実現へと向けて小さいながらも一歩一歩近づいていっているつもりです。学校で教える内容は学習指導要領に記載されています。そして現在の学習指導要領の根底にある考えが「ゆとり教育」と呼ばれるものです。しかし、これに対して賛成・反対の意見が対立しています。「ゆとり」という考え方は必要だったからこそ導入されたはずです。なぜ現在ゆとり教育がこんなにも難航しているのか、私は不思議に思いました。本稿ではなぜゆとり教育が批判の対象となってしまったのかを考えていきます。そのためにはまず、現在推し進められているゆとり教育の内容をきちんと理解することが必要だと思います。そこで第2節でゆとり教育の内容を簡単に整理します。そしてどのような流れによってゆとり教育が導入されて現在に至っているのかを見ていくために、第3節では経緯を追っていきます。そして第4節ではゆとり教育に対する現在の様々な意見を整理し、最後になぜゆとり教育が批判の対象となっているのかをまとめていきます。第2節ゆとり教育の内容まず、ゆとり教育の内容について見ていくことにします。1970年代、受験戦争加熱による詰め込み教育に対して懸念の声があがりました。そこで当時の文部省が新学習指導要領で「ゆとりある、充実した学習の実現」を目指して、ゆとり教育の考え1方は導入されました。授業時間・授業内容を削減、また「生きる力」を育むために新しい教科が次々と登場していきました。ゆとり教育は、時間的余裕をもたらすこと、自ら学び考える力を育成するための教科導入の二つに大きく分けられます。まず、前者に含まれる政策は週五日制です。1980年代までは月曜日から土曜日まで学校で授業が行なわれていましたが、週五日制が導入されて土曜日が休みになりました。それにより授業時間が削減されることとなり、同時に主要教科の授業内容も削減されていきました。週5日制について文部科学省は、豊かな自然体験や社会体験の機会を子供たちに提供し、「生きる力」を育むことをねらいとしています。(文部科学省HP)また、後者に入る政策は総合的な学習の時間の創設です。この時間では知識を教え込む授業をおこなうのではなく、自ら課題を設けておこなう学習や、将来の生き方を考える学習を行ないます。文部科学省は、子どもたちに自ら学び自ら考える力や学び方やものの考え方などを身に付けさせ、よりよく問題を解決する資質や能力などを育むことをねらいとしています。(文部科学省HP)第3節ゆとり教育の歴史それではなぜ、ゆとり教育が導入されたのでしょうか。必要であったからこそ導入されたはずなのに、いつから批判を浴びるようになってしまったのでしょうか。ゆとり教育登場の経緯と歴史を~のまとめた年表を基に追っていきます。ゆとり教育の歴史は戦後から現在に至るまで大きく6つにわけることができます。戦後戦前の徳育重視的な教育に対する「学力低下」批判。知識重視型教育へ方針転換。1960年代高度成長期。各種経済団体がより優れた人材を育成するために科学・技術教育、職業教育の充実を要望。それによる学習指導要領の改訂。1970年代「おちこぼれ」「受験戦争」が社会問題となり、「ゆとりある教育」という方針を教育審議会が打ち出す。1980年代臨時教育審議会が発足。「個性重視教育」が掲げられる。1990年代中央教育審議会が教育を経済システムの制約に下に置くことを疑問視。経済界からの圧力を無視して学習指導要領改訂。「生きる力」を目指す。2000年代ゆとり教育への批判が続く中、中山成彬文部科学省大臣が「ゆとり教育」の全面見なおしを要請。„第一期戦後戦前、教育として子供たちに教え込まれた基本的な考え方は1890年に出された「教育勅語」に沿っています。教育勅語によると、天皇のために命を捨てることが国民にとって最大の道徳だとされています。学校では主要教科の勉強ももちろんおこないますが、徳育(道徳心を養い、人格を高めることを主とする教育)が重視されていました。()その結果、戦後の復興を目指す中で学力低下に批判が生じ、1958年の学習指導要領では道徳の時間の新設をする一方で、国語・算数(数学)の指導時間が増加されることになりました。„第二期1960年代1960年代、日本は高度経済成長期に突入します。そんな中「教育投資」という発送が生まれ、各種経済団体が人材育成のために、教育の充実を要望してきます。また、よりよい進路のために学歴を求める風潮が日本社会の中に生まれました。2経済団体の要望として具体的には、1963年に経済審議会から「経済発展における人的能力の開発の課題と対策」という答申がだされます。これを受けて中央教育委員会は1966年に「後期中等教育の拡充整備について」という答申を出します。それによると、生徒の適性・能力・進路に対応する一方、人材需要に即応するよう改善するとしています。()そして1968年に学習指導要領を改訂、各教科で教える内容を大幅に増やし、教育内容の高度化をはかったのです。„第三期1970年代しかし1968年の学習指導要領は失敗となってしまいます。増加されたたくさんの内容に、生徒はもちろん教える先生までもが消化不良を起こしてしましました。それを証言する資料を下にまとめます。1971年全国教育研究所調査連盟1「義務教育改善に関する意識調査」質問:どれぐらいの子どもが学習指導要領にそった授業内容を理解しているのか小学校中学校3/4以上の子どもが理解28.9%16.7%約半数の子どもが理解49.2%50.2%1/3~1/4の子どもが理解16.2%30.2%では当時の保護者はどう思っていたのでしょうか。1976年内閣府「教育に関する世論調査」質問:現在の教育を以下のように分けた場合、特に不足しているものは何か国語や算数などの知識教育8.4%体育5.6%音楽や図画などの情操教育6.8%道徳教育44.1%表によると、道徳教育を望む回答数は、知識教育(国・算など)を望む回答数の約5倍です。保護者は子どもたちが知識の消化不良を起こしても、子どもたちに与えられた多くの課題による精神的負担を懸念したのでしょうか。1971年に中教審四六答申「今後における学校教育の総合的な拡充のための基本的施策」が出され、1976年に教育過程審議会が「ゆとりある教育」を打ち出します。経済界の要請に安易に応じた、詰め込み教育是正への第一歩となりました。„第四期1980年代1980年、授業時間が1割削減、指導内容も削減された学習指導要領が実施されます。1982年に内閣府が行なった「教育に関する世論調査」では、現在勉強する内容がもっとやさしければよいかという質問に対し、「もっとやさしければよい」と「現在程度でよい」の合計が小学校では66.4%、中学校では54.0%に対し、「もっと難しくてもよい」が小学校では3.4%、中学校では4.8%となっています。また授業の時間数についてですが、「もっと少なければよい」と「現在程度でよい」の合計が小学校で68.2%、中学校で57.1%、「もっと多くてもよい」が小学校で2.7%中学校で4.0%という数値になっています。学習1全国教育研究所連盟は、都道府県・市町村・民間の教育研究所・教育センター等が加盟する教育研究団体として、昭和23年12月に結成された組織。3指導要領が改訂され、保護者はこの方針に大半の人々が賛成していると捉えることができます。1984年には臨時教育委員会が発足します。1960年代の画一的な教育方法ではなく、ひとりひとりの個性を尊重すべきであるという「個性重視の原則」を第一次答申として出しました。そしてさらに、1989年に学習指導要領を改訂、「基本・基礎の重視と個性教育の推進」を明示して1992年実施へと動きました。„第五期1990年代1991年に中央教育審議会は「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」をまとめました。そして1960年代のように企業への人材輩出を目的とする教育を疑問視したのです。1992年には第二土曜が休業、1995年には第4土曜も休業となり、小学校1,2年生の理科と社会が廃止されて「生活」が新設されました。一方で経済界からは経済同友会や経団連から答申が出されますが、(詳しく調べます。)中央教育審議会は「21世紀を展望したわが国の教育のあり方について」という答申をまとめ、「生きる力」を育むという考え方を出します。以前とは違って、経済界の意見を無視した形になりました。„第六期2000年代2002年に新学習指導要領が実施され、完全週5日制・総合的な学習の時間がはじまりました。しかし一方で大幅な授業時間の削減・主要教科の内容削減から学力低下への懸念が広がり、ゆとり教育に批判の声が相次いでいます。2005年2月の読売新聞世論調査によると、学力低下に対して不安を感じる人は81%にのぼり、ゆとり教育を評価しない人(どちらかといえばを含む)は72%となっている。様々な方面から見なおしの声が強まり、2003年には「発展的内容」を認め、2005年2月に当時の中山文部科学省大臣がゆとり教育見直しの意思を表明し、10月「新しい時代の義務教育を創造する」答申が中央教育委員会から提出されました。最初は受け入れられていたゆとり教育ですが、なぜ批判の対象となってしまったのでしょうか。次節で、ゆとり教育に対する国民と識者の反応を比較します。第4節ゆとり教育への評価ゆとり教育は、詰め込み教育・子どもたちの負担軽減・「生きる力」を育てるために導入されたはずです。つまり、本来は国民の意向を取り入れて導入された制度であるにもかかわらず、導入したとたんに国民から批判を受けているわけです。この反応は一見すると矛盾するものです。そこで本節では、具体的な国民の反応とともに代表的な識者の意見を列挙し比較していきます。2005年3月の朝日新聞世論調査によると、ゆとり教育見なおしに賛成は78%、反対は11%です。学校週5日制には反対、総合学習の時間を減らして主要教科の時間を増やすことに賛成という人たちは半数以上存在します。しかしながら、学校教育に生きる力を育てる役割を期待するという回答は66%、主要教科を増やすことに賛成した人のうち期待するという人は64%です。これが示していることは、子どもの学力を上げて欲しいと願う一方で、やはり生きていくための応用力も学校で教ええてほしいと願う保護者が多いということです。家庭という小さな単位だけでは学べない社会生活の基礎を、学校で学んできてほしといと思っているのです。4しかしその一方、各界から様々な意見が出てきています。『教育の論点』(文藝春秋2001年8月30日)からゆとり教育について寄せられた意見を紹介します。括弧内は当時の職名です。„寺脇研(文部科学省審議官)ゆとり教育はそもそも生きる力を育むためのもの。社会人として生きていくためには知識のみでは通用せず、考える力・表現する力が必要となってくる。旧来的な知識量としての学力は低下するかもしれないが、それを恐れていては考える力は育たない。また新学習指導要領に記された内容は最低基準である。今までは記されていない内容は教えてはいけなかったが、意欲によりそれ以上の学習は奨励されている。„蔭山英男(兵庫県朝来町

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