カリフォルニアの電力危機と電力自由化平成13年5月11日関西電力株式会社企画室企画グループ2発電機能販売会社発電会社A需要家発電会社B需要家と直接契約し販売販売会社が電気を市場から調達し需要家に販売卸売市場小売市場発送配一貫電力会社販売機能送配電(独占)送電・系統運用等のサービスは卸売・小売市場への参入者に非差別的に提供。電気事業における競争形態(イメージ)3電気事業の自由化モデル任意プール第三者アクセス(託送)強制プール・北欧(NordPool)・ニュージーランド・英国(現行)・英国(改革前)・オーストラリア・米国/加州(3大電力はプール取引を義務付け)・日本・ドイツ・フランス発電IPPプール需要家送電配電小売小売発電IPPプール需要家送電配電小売小売発電IPP需要家送電配電小売小売託送託送託送4背景米国およびカリフォルニア州における自由化の背景とねらいねらい[米国全体]○州間の料金格差の存在→最高/最低州:2.9倍(日本の場合1.2倍)○石油・天然ガス等多様で豊富なエネルギー資源を産出・自給率79.7%(1995年)[カリフォルニア州]○全米平均よりかなり高い電気料金(1998年)→加州:9.9¢/kWh、全米:6.74¢/kWh(1.5倍)○州の壁を撤廃して、州外の安い電気を導入カリフォルニア州電力自由化の背景5米国における電力自由化の経緯連邦大州レベル1978199219961999公益事業規則政策法(PURPA)•QF※からの購入義務づけ※QF:認定施設(qualifyingfacility)と呼ばれる、再生可能エネルギーを使用する小規模電源やコージェネレーターのこと。エネルギー政策法(EPA)•IPPの卸売市場への参入自由化•送電線へのオープンアクセス義務づけFERC※Order888,889※FERC:連邦エネルギー規制委員会(FederalEnergyRegulatoryCommission)⇒「卸売市場の自由化」•オープンアクセスのルール整備、送電部門の機能分離義務づけ•回収不能費用の回収許可FERCOrder2000⇒「卸売市場の競争環境整備」•送電線を所有・運用する事業者に対し、地域的な拡がりを有する系統運用機関RTOの自主的設立と参加の要請カリフォルニア州、ペンシルバニア州等で電力再編法成立カリフォルニア州、マサチューセッツ州小売全面自由化電気料金の高い州を中心として、電気事業再編(小売自由化)の検討開始19961998•2001/1現在、24州で電力再編法が成立し、内17州で自由化開始。•自由化に慎重で、検討を中断する州もある。6HITXNMAZOKUTNVCOCAWYIDORWAMTNDSDNEKSLAARMOIAMNWIILMIINKYTNMSALGAFLSCNCVAOHPANYNJMENHVTMACTRIDEMDAKWVDC米国の電力自由化の現状出典:EIAホームページ等:小売自由化開始(17州):電力再編決定(7州+DC):州議会、規制当局で検討中(18州):活動なし(8州)(注)州名の斜体は、電気料金が全米平均を上回ることを示す。7PG&E:PacificGas&ElectricSCE:SouthernCaliforniaEdisonSDG&E:SanDiegoGas&Electric電 力会社名販売電力量需要家口 数発 電設備量最大電力1998年実績1998年実績1999年実績1999年実績(億kWh)(万口)(万kW)(万kW)PG&E9804541,1121,942(39%)(35%)(21%)(38%)Ca-SCE9034283431,836(36%)(33%)(6%)(36%)ISOSDG&E184121233332(7%)(9%)(5%)(7%)3社計2,0671,0031,6884,110(82%)(77%)(32%)(81%)その他(小計)4,557(90%)その他517(10%)合計2,5221,3065,3115,074(100%)(100%)(100%)(100%)出典:販売電力量,最大電力…CaliforniaEnergyCommission, CaliforniaEnergyDemand2000-2010需要家口数…1998CalforniaElectricUtilityRetailSales()発電設備量…ExistingGeneratingUnitsatU.S.ElectricUtilitiesbyState,Company,andPlant,asofJanuary1,1999()★…私営3大電力☆…Ca-ISO全体の最大電力を示す。 ・各社の最大電力は、各社毎の最大電力を示し、発生時刻は一致しない。 ・各社の最大電力は、最終需要家での需要であり、ロス除き、自家発含みのデータである。★★★☆カリフォルニア州電力市場の概要8カリフォルニア州電力供給システムの枠組みPX(電力取引所)ISO(独立系統運用者)PG&E社水力・原子力SCE社原子力IPP火力公営、QF等州外電源ESP新規参入小売事業者PG&E社配電部門需要家SDG&E社原子力SDG&E社配電部門•既存3社は小売価格を自由化以前の水準で凍結•ストランデッドコスト※を回収競争移行期間中の措置(2002.3orストランデッドコスト回収まで)ESP新規参入小売事業者SCE社配電部門3社販売シェア:80%程度PX取引占有率:85%程度マストラン電源としてゼロ入札•既存3社には全量PXでの電力取引を義務づけ•既存3社に火力発電設備50%売却要請。•3社は全ての火力設備を州外事業者に売却。【州内シェア15%】【州内シェア85%】※ストランデッドコスト:電力自由化により、新規参入差に顧客を奪われることで回収が見込めなくなった先行投資費用。回収不能費用とも言う。ISO:independentsystemoperator、PX:powerexchange既存3社配電系統9金融的取引(financial)実物取引(physical)アンシラリーサービス市場スケジューリング・コーディネイター(含PX)送電権市場(オークション)系統運用(CaISO)電力取引系統運用取引2日前PM6:00電力消費数ヶ月~1年前2時間前:情報の流れ先物・先渡市場(futures,forwards)短期調整市場(スポット市場)リアルタイム市場決済精算補助的サービス等1日前市場(Day-AheadMarket)1時間前市場(Hour-AheadMarket)1時間前ISOが行うものPX(SC)が行うもの施設取引所、相対取引カリフォルニア州卸電力市場の仕組みブロック先渡市場(1999年6月~)ほとんど活用されず10カリフォルニア州の発電事業者シェア(2000年)公益事業者825万kW(15%)非公益事業者2,123万kW(40%)公営1,198万kW(23%)QF他1,175万kW(22%)発電設備5,321万kW(2000年)出典:CPUC2000.8.2報告書非公益事業者内訳その他402万kW(19%)Calpine87万kW(4%)Duke295万kW(14%)Destec117万kW(6%)Dynegy/NRG/Destec155万kW(7%)Southern307万kW(14%)Reliant353万kW(17%)AES407万kW(19%)PG&E:PacificGas&ElectricSCE:SouthernCaliforniaEdisonSDG&E:SanDiegoGas&Electric売却された既存3社の火力発電設備は、州外の事業者が購入11需給逼迫による卸電力価格の高騰(2000/4-9)4月5月6月7月8月9月0102030405060708090[セント/kWh]ISOリアルタイム市場上限価格:75セント/kWhPXの日最高価格ISOが緊急宣言(Stage)を発動した日7/1:75⇒50セント/kWh8/7:50⇒25セント/kWh5/22:ISO非常事態宣言ISOは上限取引価格を引き下げ凡例Stage312予備率1.5%以下7%以下5%以下◆●■対策輪番停電節電の要請需給調整契約発動出典:CAL-PXホームページ12SDG&E社の小売電気料金高騰(セント/kWh)家庭用電気料金(7月実績)ストランデッドコストの回収を完了したため、小売電気料金の凍結解除(1999年7月)1998.4凍結開始出典:CPUC2000.8.2報告書•SDG&E社は、PXから調達する電力コストを小売電気料金にそのまま転嫁したため、小売電気料金が高騰。•州は小売電気料金を再凍結。(前回凍結時より約15%UP。上限価格枠あり。)•またSDG&E社には、PX以外の相対取引を認める。13価格高騰の原因と対策~FERC調査報告~価格高騰の原因改善策11/1:報告書発表、12/15:改善命令発布【需給】•熱波と好調な経済による需要増大•北西部の渇水による水力発電の減少•発電燃料である天然ガス価格の高騰•加州以外からの電力調達の減少•既存3社に対するPXでの取引義務を廃止•PX/ISO取引における15セント/kWhのソフト・プライスキャップの採用(5/1までの暫定措置)•PX及びISOの理事会を利害関係のない人員で再編【価格操作】•ISOリアルタイム市場での価格高騰を狙ったゲーミングの問題(証拠不十分)【市場の欠陥】•既存3社に対する硬直的な取引システム(相対契約無し、先渡契約にも制約)•PX/ISO取引におけるプライスキャップ•利害関係の対立により、PX及びISOの理事会が機能せず。•市場参加者に対し、取引量の95%を前日までに調達することを義務づけ•改善策なし14需給逼迫の深刻化(2000/11~)-5,000-4,000-3,000-2,000-1,00001,0002,0003,0004,0005,0000204060801004月5月6月7月8月9月10月11月12月2001/1月~~150PX日最高価格最大電力12/7:初のステージ3発動[万kW][セント/kWh]12/8:ISOは供給力確保優先のため上限価格撤廃上限価格:25セント/kWh1/17,18輪番停電実施50セント/kWh75セント/kWh凡例Stage312予備率1.5%以下7%以下5%以下◆●■対策輪番停電節電の要請需給調整契約発動20001回55回36回200136回62回57回(本年4/25時点)出典:CAL-PXホームページ※PXは1/30で電力取引を終了している。(4月に閉鎖)15輪番停電の影響2001年に入り、カリフォルニアISOは、5度の輪番停電を実施している。停電時間遮断負荷対象地域1月17日(水)11:40~14:00約50万kW州北部のサンフランシスコ市内・シリコンバレー周辺1月18日(木)9:50~12:00約100万kW州中部から州北部のPG&Eの供給エリア全域3月19日(月)12:00~16:0018:00~19:15約100万kWほぼ州全域3月20日(火)9:20~14:00約50万kW5月8日(火)17:00頃~約30万kW16電力危機に対する米国消費者・マスコミの声•「僕には、自由化された業者の一部が人為的に電力不足を作り上げたとしか思えない。」•「電気が一番必要な時に電力危機が起きるなんて出来過ぎ。」•「政府は何故収用権を行使しないのか。収用すれば停電することはないと確信。」•「電力会社はたくさんお金を持っているのだから、この状態がずっと続く筈がない。CEOの給料が幾らか知りたいものだ。」•「PG&Eは固定料金を歓迎していたくせに、状況が変わると消費者に負担を押しつけるのは虫が良すぎ。」•「州は、自分のミスを株主の金で補おうとしているのではないか。」【ビジネスウィーク(1/22)】•加州の惨事から、規制緩和を失敗