第13節財政【到達目標】収支の均衡を保持した予算編成を行う。帰属収入をできるかぎり正確に見積り、収入に見合った支出とすることで、帰属収入の変化に対応した財政運営に努力する。収入の安定的確保のため、学生生徒等納付金は入学者目標数の確保と除籍退学者の減少に取組む。資金運用は安全性を重視しながら積極的に新たな運用方法を研究する。その他、志願者の確保、補助金の申請や外部資金の獲得等に積極的に取り組み、帰属収入の増収を目指す。支出は帰属収支差額がマイナスとならないよう経費節減を進めるが、安易な削減ではなく費用対効果を検証し、限られた原資を有効活用して教育の質を維持・向上させる事業に積極的に取り組む。(中・長期的な財務計画)【現状の説明】学園変革マスタープラン実施計画に基づき、帰属収入の確保、消費支出の抑制に取り組んでいる。具体的には、学生数確保による納付金収入の確保、効果的な資産運用による収益向上といった面から収入の安定確保を目指している。一方、支出面では帰属収支差額比率をプラスに保つ予算編成を第一義として、支出の抑制を図るが、マスタープランの実現に要する経費は可能なかぎり予算化する。【点検・評価】各部所からマスタープランに対応した予算を申請させることで、中・長期的な財務計画とマスタープランの関連性を踏まえた予算編成を行っている。【将来の改善・改革に向けた方策】財政を安定させるための要素は、入学者目標数の確保、除籍退学者の抑制、積極的な資産運用(元本の安全性を重視)による収入の確保、帰属収支差額がプラスとなる予算編成、経費の抑制等々、直接的なものから間接的なものまで多岐にわたっている。これらの要素は、大学を取り巻く情勢に大きく影響を受けるため、将来の環境変化を予測し、素早い対応策を実践することが重要である。(教育研究と財政)【現状の説明】本学園の財政状況は帰属収入が減少傾向にある。これは、入学定員の見直しや、入学定員を充足できなかった学科等の影響で学生数が減少していることが主因である。毎年度の予算編成では、収入に見合った支出予算を編成することを基本としながらも、教育研究の充実に必要な経費を適正に盛込むなど、教育研究環境整備にも力を入れている。基本金組み入れ計画に基づき、今後改築が予定される施設の改築資金として、第2号基本金を組み入れる。また、急激な経済情勢の悪化に対応するために給付奨学金制度の拡充を目的とした第3号基本金組み入れ(奨学基金の増額)により、教育研究環境の更なる充実に向けた布石を打つことにも取り組んでいる。本学園は、現状では教育研究目的・目標を実現する上で必要な財政基盤は確保している。—573—【点検・評価】教育研究施設面の整備・充実、研究事業の推進を目的として、安定した財政基盤を背景に各事業に取り組んでいる。具体的には施設面の整備・充実として、女子学生のための女子寮建設、図書館建物内部の大規模改修を完了した。教育面では基礎教育センターを設置し、学習を支援する体制作りを行った。研究事業においては、平成16年度に採択された文部科学省の21世紀COEプログラムが最終年度を迎えた。また、平成14年度から実施している「教育改善・改革支援事業」に関する学部・学科・部所単位での取り組みに対しては教育研究の質の向上を図る観点から引き続き予算措置を行った。学園の教育研究経費比率についてみると、平成20年度は30.1%と平成19年度の30.0%と比較すると0.1ポイント上昇した。しかしながら、平成20年度の全国平均(31.0%、日本私立学校振興・共済事業団の平成20年度調査:医歯薬系大学を除く)と比較すると0.9ポイント下回る水準となった。【将来の改善・改革に向けた方策】教育研究目的・目標を実現するため、長期的に健全な財政基盤を維持するには、財政計画を策定して、収支のバランスをとりながら大学運営を行っていくことが求められる。(外部資金等)【現状の説明】(1)科学研究費科学研究費の直近の過去3ヵ年をみると、平成18年度は23件、24,020千円、平成19年度は30件、34,380千円、平成20年度は30件、31,050千円である。科学研究費補助金が採択された場合は、大学を経由して各研究者名義の口座で個別に管理される(大学の収入にはならない)。各研究者は申請した研究費の計画に基づいて執行し、通帳管理及び出納事務については大学事務局(担当:産学連携支援室)が行う。また、科学研究費補助金で購入した備品や図書は、購入年度に大学へ寄贈する。(2)寄附金本学園では、企業等が研究等の使途を特定した寄附金を受け入れているが、寄附金の募集は行っていない。直近の過去3ヵ年をみると、平成18年度は26件、13,130千円、平成19年度は25件、16,800千円、平成20年度は29件、14,440千円で、そのうち8割は理系の学部(工学部及び情報科学部)で受け入れている。使途が特定された寄附金は、学内手続きを経て特別寄附金として受け入れる。寄附金は、規程に基づき受入額のうち10%を間接経費として学園に収めている。執行については、財務部で個別コードを付して、産学連携支援室を通じて財務部で予算管理を行っている。未執行分は次年度へ繰り越して使用できる。(3)受託研究費直近の過去3ヵ年をみると、平成18年度は11件、21,040千円、平成19年度は14件、20,815千円、平成20年度は16件、16,607千円で、そのうち8割を理系の学部(工学部及び情報科学部)で受け入れている。受託研究費は、委託者から研究委託の申し入れがあると、学内手続きを経て受託事業収入として受け入れる。受託契約書等の事務手続きは大学が行い、規程に基づき契約額のうち10%を間接—574——575—経費として学園に収めている。受託研究費の執行については、寄附金と同様に財務部で個別コードを付し、予算額および契約期間を超えて支出することがないように、産学連携支援室を通じて財務部で予算管理を行っている。(4)資産運用益等本学では、奨学基金運用収入、受取利息・配当金収入、施設設備利用料収入の資産運用益がある。直近の過去3ヵ年をみると、平成18年度は709,420千円、平成19年度は1,192,224千円、平成20年度は1,062,124千円で、そのうち8割は受取利息・配当金収入の受け入れである。【点検・評価】外部資金の積極的な獲得を図り、学内事務手続き及び奨学寄付金等の執行管理を行うため産学連携支援室を設置している。外部資金の受け入れは、文系・理系で区分すると、科学研究費で文系学部に若干の採択が見られるものの、理系学部が外部資金全体の8割超を占めている。今後もこの傾向は続くと思われる。資産運用については、資金を預貯金・有価証券等で運用することにより、受取利息・配当金等の収入を得ている。しかしながら、平成20年度は世界的な金融経済環境の激変により、有価証券の取得価額と時価の間に△4,985百万円という評価差額が生じた。学校法人会計基準では有価証券の時価が取得価額より著しく低くなった場合、時価への評価替えが求められており、時価が取得価額より50%以上下落した有価証券の評価替えを行った。これにより、2,197百万円を評価差額として会計処理している。【将来の改善・改革に向けた方策】企業の研究ニーズの把握、学外への研究業績等の積極的なアピール活動、企業との情報交換、外部資金の受け入れノウハウの蓄積と活用などにより、産学連携支援室を中心に更なる外部資金の件数、収入の増加を図る必要がある。本学が保有する知的財産を活用し企業と提携することで、ロイヤルティ等の収入源を広げることも視野に入れる。資金運用は、今後も低金利状態が続けば受取利息・配当金などの収入を増加させることは難しい。しかしながら、普通預金・定期預金から比較的安定性の高い債券へシフトするなど、効率的な運用を行うことで利回りを確保したい。資産運用は市場変化に大きな影響を受けるので、日々の市場動向のチェックを励行したい。また、施設設備利用料収入については、授業や研究に支障がでない範囲で増収を図る。(予算編成と執行)【現状の説明】(1)予算編成予算委員会で予算編成基本方針案を策定し、理事会承認後、各学部長、部所長及び担当者を対象に説明会を開催する。理事長は基本方針の趣旨を十分説明したうえで、予算責任者(各部所の所属長)へ通達する。予算責任者は基本方針に基づき作成した消費収支予算申請書及び事業費予算申請書を財務部に提出する。財務部は、申請内容について各予算責任者とヒアリング及び審査を行い、予算原案を編成し、経理責任者(事務局長)を経て予算委員会へ付議する。予算委員会で内容を審議したうえで、評議員会の意見を聞き理事会に諮る。理事会の審議を経て予算が決定すると、理事長は各予算責任者へ予算を配賦する。予算委員会は、理事長、常務理事、学長及び理事長が委嘱した者で構成し、事務は財務部が行—574——575—っている。(2)予算執行各予算責任者は所管する部所の予算執行管理を行う。執行状況については学長、経理単位責任者(財務部長)に毎月報告している。支払伝票は各部所で起票するが、起票時点でコンピュータによる予算残高チェックを行っている。会計伝票は予算責任者が承認のうえ財務部へ回付されるが、財務部では伝票及び証憑書類の内容が適正であるかどうかをチェックし科目と金額を確定する。予算責任者は、小科目の予算を超えて支出する必要が生じたときは、50万円以下は経理責任者(事務局長)、それ以上は財務担当常務理事の承認を得て、当該小科目の属する大科目の他の小科目予算から流用することができる。予測しがたい予算の不足を補うため予備費を計上しているが、その執行については、300万円以下は財務担当常務理事、それ以上は理事長の承認を得なければならない。予算執行の結果である決算事務として、月次決算及び年度末決算を行っている。月次決算では、財務部が毎月末に会計記録を整理して、所定の書類(資金収支計算書、消費収支計算書等)を作成し、経理責任者を経て財務担当常務理事に提出する。年度末決算では、財務部が所定の書類を作成し学長、経理責任者、財務担当常務理事を経て理事長に提出する。理事長は毎会計年度終了後2ヵ月以内に計算書類を理事会に提出し、その承認を得たものを評議員会へ報告している。なお、監事も理事会及び評議員会に出席し監査の報告を行っている。【点検・評価】(1)予算編成予算編成のプロセスは経理規則に定めており、毎年度の予算編成時に予算委員会でスケジュールを確認することで明確になっている。予算申請の内容については、理事会に諮る前に、予算編成基本方針に基づいているかどうか、内容が適切であるかどうかなど財務部でヒアリングのうえ審査し、数回にわたり予算委員会で審議を重ねているため透明性も高い。予算委員会は、学長、財務担当常務理事が委員であるため、教育研究面と財政面の両面からの審議が行われ、予算配分は適切に行われている。(2)予算執行予算執行のプロセスは経理規則に明確に定められている。伝票起票時点で予算残高をチェックし、執行状況を月次で報告することにより、予算責任者が予算内で適切に執行している。また、複数の部所で複数の者が会計伝票の内容や証憑書類をチェックすることで不正や誤った処理を防止するよう、適切に運営している。なお、予算を超えて支出する必要が生じたときの予備費配賦についても、複数の者の承認を得ることで、透明なプロセスとしている。決算に関しても経理規則に明確に定められており、理事会で確定するまでの過程の透明性も保たれている。【将来の改善・改革に向けた方策】(1)予算編成予算編成については、現在のところ改善・改革すべき問題はないが、「学園変革マスタープラン」により事業計画の基本となる骨子が策定されたことに伴い、事業計画と予算の連動をいかに図っていくかが今後の課題となる。経費削減の状況下においても教育研究の実をあげるために