1第1章説明1日本食品標準成分表の目的及び性格1)目的国民が日常摂取する食品の成分を明らかにすることは、国民の健康の維持、増進を図る上で極めて重要であり、また、食料の安定供給を確保するための計画を策定する基礎としても必要不可欠である。我が国においては、日本食品標準成分表(以下「食品成分表」という)は昭和25年に初めて公表されて以降、食品成分に関する基礎データを提供する役割を果たしてきた。すなわち、食品成分表は、学校給食、病院給食等の給食管理、食事制限、治療食等の栄養指導面はもとより、国民の栄養、健康への関心の高まりとともに、一般家庭における日常生活面においても広く利用されている。また、行政面でも厚生労働省における日本人の食事摂取基準(以下「食事摂取基準」という)の策定、国民健康・栄養調査等の各種調査及び農林水産省における食料需給表の作成等の様々な重要施策の基礎資料として活用されている。さらに、高等教育の栄養学科、食品学科及び中等教育の家庭科、保健体育等の教育分野や、栄養学、食品学、家政学、生活科学、医学、農学等の研究分野においても利用されている。加えて、近年、加工食品等への栄養成分表示の義務化の流れの中で、栄養成分を合理的に推定するための基礎データとしても利用されている。このように食品成分表は、国民が日常摂取する食品の成分に関する基礎データとして、関係各方面での幅広い利用に供することを目的としている。2)性格国民が日常摂取する食品の種類は極めて多岐にわたる。食品成分表は、我が国において常用される食品について標準的な成分値を収載するものである。原材料的食品は、真核生物の植物界、菌界あるいは動物界に属する生物に由来し、その成分値には、動植物や菌類の品種、成育(生育)環境等種々の要因により、かなり変動のあることが普通である。また、加工品については、原材料の配合割合、加工方法の相違等により製品の成分値に幅があり、さらに、調理食品については、調理方法により成分値に差異が生ずる。食品成分表においては、これらの数値の変動要因を十分考慮しながら、前述の幅広い利用目的に応じて、分析値、文献値等を基に標準的な成分値を定め、1食品1標準成分値を原則として収載している。なお、標準成分値とは、国内において年間を通じて普通に摂取する場合の全国的な平均値を表すという概念に基づき求めた値である。3)経緯平成22年12月に公表した日本食品標準成分表2010(以下「成分表2010」という)は、ヨウ2素、セレン、クロム、モリブデン及びビオチンの成分値を収載して食事摂取基準との整合を図ることと、国際連合食糧農業機関(FAO)が2003年に公表した技術ワークショップ報告書(以下「FAO報告書」という)が推奨する方式に基づき求めたたんぱく質量(アミノ酸組成によるたんぱく質)と脂質量(脂肪酸のトリアシルグリセロール当量)を付加的な情報として収載することを主な改訂内容とするものであった。成分表2010の公表前から、科学技術・学術審議会資源調査分科会では、将来の食品成分表の改訂に向け、FAO報告書が推奨する方式に基づき、たんぱく質及び脂質と同様に、炭水化物についても単糖類、二糖類及びでん粉を直接分析し、その組成を明らかにする調査を進めてきた。また、有機酸についても、直接分析し、その組成を明らかにする調査を進めてきた。さらに、同分科会の下に食品成分委員会を設置し、①新規の流通食品や品種改良の影響、加熱調理による成分変化等を反映した収載食品の充実②炭水化物及び有機酸の組成に関する成分表の新規作成③アミノ酸組成及び脂肪酸組成に関する情報の充実等の課題に対し検討作業を重ねてきた。この結果、本成分表では、五訂日本食品標準成分表(以下「五訂成分表」という)公表以来、15年ぶりに収載食品数を増加させるとともに、収載した食品の調理方法も天ぷら、から揚げ等にまで拡大した。また、本成分表に収載されている原材料から調理加工食品の栄養成分を計算で求める方法を、事例により示した(第3章の「3そう菜」)。これにより、本成分表の利用者が、そう菜等の栄養成分の計算を的確に行えるようになることが期待される。さらに、たんぱく質、脂質及び炭水化物の組成について、別冊として、日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編(以下「アミノ酸成分表2015年版」という)、同脂肪酸成分表編(以下「脂肪酸成分表2015年版」という)及び同炭水化物成分表編(以下「炭水化物成分表2015年版」という)の3冊を同時に作成した。また、本成分表には、炭水化物成分表2015年版の収載値を基に、利用可能炭水化物(単糖当量)を新規に収載した。これにより、我が国のたんぱく質、脂質及び炭水化物の摂取量をより的確に示し得るものと考えられる。これらの情報により、FAO報告書で提案されているエネルギーの新しい評価法に対応し得る基盤の一部を構築することができ、今後、さらなる情報の集積により、同報告書で提案されている方式に基づくエネルギーの評価ができることになる。加えて、成分表データの一層の活用や、国際的な情報交換を推進するため、データを電子化し、和文・英文の両方で提供することとした(詳細は巻末の付記2を参照)。なお、本成分表の名称については、初版から何回目の改訂であるか、さらに、いつの時点での最新の情報が収載されているかを明確にする観点から、成分表2010を六訂とみなして「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」とすることとした。1)3(参考)食品成分表の沿革名称公表年食品数成分項目数日本食品標準成分表改訂日本食品標準成分表三訂日本食品標準成分表四訂日本食品標準成分表五訂日本食品標準成分表五訂増補日本食品標準成分表日本食品標準成分表2010日本食品標準成分表2015年版(七訂)昭和25年(1950年)昭和29年(1954年)昭和38年(1963年)昭和57年(1982年)平成12年(2000年)平成17年(2005年)平成22年(2010年)平成27年(2015年)5386958781,6211,8821,8781,8782,1911415191936435052(注)食品成分表の策定に当たっては、初版から今回改訂に至るまでのそれぞれの時点において最適な分析方法を用いている。したがって、この間の技術の進歩等により、分析方法等に違いがある。また、分析に用いた試料についても、それぞれの時点において一般に入手できるものを選定しているため、同一のものではなく、品種等の違いもある。このため、食品名が同一であっても、各版の間における成分値の比較は適当ではないことがある。2日本食品標準成分表2015年版(七訂)1)収載食品(1)食品群の分類及び配列食品群の分類及び配列は成分表2010を踏襲し、植物性食品、きのこ類、藻類、動物性食品、加工食品の順に並べている。1穀類、2いも及びでん粉類、3砂糖及び甘味類、4豆類、5種実類、6野菜類、7果実類、8きのこ類、9藻類、10魚介類、11肉類、12卵類、13乳類、14油脂類、15菓子類、16し好飲料類、17調味料及び香辛料類、18調理加工食品類(2)収載食品の概要収載食品については、一部食品名及び分類の変更を行った。名称、分類変更を行った食品は「第3章資料」の「1食品群別留意点」を参照されたい。収載食品数は、成分表2010より313食品増加し、2,191食品となっている(表1)。食品の選定、調理に当たっては、次のことを考慮している。①原材料的食品:生物の品種、生産条件等の各種の要因により、成分値に変動があることが知られているため、これらの変動要因に留意し選定した。「生」、「乾」など未調理食品を収載食品の基本とし、摂取の際に調理が必要な食品の一部について、「ゆで」、「焼き」等の基本的な調理食品を収載した。また、刺身、天ぷら等の和食の伝統的な料理も収載した(調理食品の詳細は、表15重量変化率表及び表16調理方法の概要表に記載)。4②加工食品:原材料の配合割合、加工方法により成分値に幅がみられるので、生産、消費の動向を考慮し、可能な限り標準的な食品を選定した。表1食品群別収載食品数食品群食品数1穀類1592いも及びでん粉類623砂糖及び甘味類4豆類5種実類6野菜類7果実類8きのこ類9藻類10魚介類11肉類12卵類13乳類14油脂類15菓子類16し好飲料類17調味料及び香辛料類18調理加工食品類27934336217449534192912058311415812922合計2,191(3)食品の分類、配列、食品番号及び索引番号①食品の分類及び配列収載食品の分類は成分表2010と同じく大分類、中分類、小分類及び細分の四段階とした。食品の大分類は原則として動植物の名称をあて、五十音順に配列した。ただし、「いも及びでん粉類」、「魚介類」、「肉類」、「乳類」、「し好飲料類」及び「調味料及び香辛料類」は、大分類の前に副分類(<>で表示)を設けて食品群を区分した。また、食品によっては、大分類の前に類区分(()で表示)を五十音順に設けた。中分類([]で表示)及び小分類は、原則として原材料的形状から順次加工度の高まる順に配列した。ただし、原材料が複数からなる加工食品は、原則として主原材料の位置に配列した。②食品番号食品番号は5桁とし、初めの2桁は食品群にあて、次の3桁を小分類又は細分にあてた。5〔例〕食品番号食品群区分大分類中分類小分類細分穀類―あわ―精白粒―0100201―――002―穀類―こむぎ[小麦粉]強力粉1等0102001――――020魚介類(かに類)がざみ―生―1033210―――332―なお、五訂成分表以降の収載食品の見直しに伴い、次のものが欠番となっている。(五訂成分表以降五訂増補)01017、01022、01027、01029、01040及び07068(成分表2010以降今回改訂)03016、03021、04050、07084、08011、08012、08035、09031及び10302③索引番号本成分表では、新たに各食品に索引番号を加えた。これは、新規に322食品が収載されるとともに、一部の食品について、名称、分類を変更したため、収載順と食品番号とが一致しなくなったことから、食品の検索を容易にするために通し番号を加えたものである。また、本成分表には2,191食品を収載しているが、索引番号の最大は2,198である。これは、アミノ酸成分表2015年版のみに収載されている7食品があるためであり、本成分表の索引番号(通し番号)に欠落があるのではない。なお、本表における食品の収載は、原則として1食品1箇所としたが、利用上の便宜を図り、関連する箇所に食品番号・索引番号と食品名を記載した食品もある。(4)食品名原材料的食品の名称は学術名又は慣用名を採用し、加工食品の名称は一般に用いられている名称や食品規格基準等において公的に定められている名称を勘案して採用した。また、広く用いられている別名を備考欄に記載した。成分表2010では食品名に英名を併記していたが、本成分表では英名を削除した。英名については、新たに英語版の成分表をホームページ上()に公開しているので、参照されたい。なお、食品の原料となる生物の英名及び学名を、一括して第3章資料に掲載した。2)収載成分項目等(1)項目及びその配列①一部食品について、でん粉、単糖類、二糖類等を直接分析又は推計し、「利用可能炭水化物(単糖当量)」を「炭水化物」の補足情報として新たに収載した。6②項目の配列は、廃棄率、エネルギー、水分、たんぱく質、アミノ酸組成によるたんぱく質、脂質、トリアシルグリセロール当量、脂肪酸、コレステロール、炭水化物、利用可能炭水化物(単糖当量)、食物繊維、灰分、無機質、ビタミン、食塩相当量、備考の順とした。なお、「し好飲料類」と「調味料及び香辛料類」ではアル