中国の环境问题と対策

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中国の環境問題と対策システム工学専攻楊継東1.はじめに中国と日本は歴史的にも地理的にも近い国である。しかし体制,言葉の問題も含め,お互いの国の事情はあまり知られていない。中国の環境問題に関する資料も同様にいまだに少ない。中国は改革・開放政策に伴い,近代化を急いでいる。経済は世界不振の中で年間10%ぐらいの高成長率で発展し続けている。それと同時に,いろいろな意味で環境保全は今後中国の大きな課題となってくる。2.環境問題環境問題は資源エネルギー,食糧,人口問題と並んで地球規模の問題として世界的に大きくクローズアップされてきている。中国の陸地面積は960万km2で日本(38万km2)の25.3倍に相当し,世界の陸地面積の1/15を占め世界第3位である。また中国の人口は12億人で,世界の総人口の1/5を占めている。中国の1人当たりの耕地面積は1000m2であり,全世界平均の27%に過ぎず,また開発可能な農林牧用地も少なく,仮に開発が進んだとしても建設用地や人口の増加などによって相殺される。したがって,中国の1人当たりの耕地面積は今後,なお一層減少することになる。広大な国土を有しているにもかかわらず,1人当たりの資源がこのように少ないことは,現在の中国の実情である。2.1大気汚染世界第2位の石炭産出国である中国は,エネルギー消費と硫黄酸化物排出においても世界第3位である。1989年の統計によると中国の石炭総生産量は10.4億トンで,一部が輸出されている他はほとんどが国内で消費されている。また石炭は中国の大部分の都市のエネルギー構成の中で相当な比率を占めている。そのため,石炭による大気汚染が中国の都市汚染の主役といえる。特に,中国産の石炭は,硫黄含有量が高く,燃焼効率が低いため以下の2つの問題が起きている。①南方都市の酸性雨問題である。中国の酸性雨は主に西南部地方(湖南,江西,広東,四川,貴州)の省,自治区でみられ,とくに成都,重慶,貴陽,長沙,柳州市では普遍的に酸性を呈している。②北方都市(済南,呼和浩特,太原,唐山,鄭州,蘭州,長春,包頭,石家荘,北京,吉林,哈尓濱,瀋陽など)の冬季における汚染である。北方都市では暖房に大量の石炭を使用するため冬季の石炭消費量は夏季の2倍になり,各種汚染物の濃度も2倍になる。しかし北方地方の土壌はアルカリ成分を多く含むため,二酸化硫黄が中和され酸性雨による土壌被害は少ない。酸性雨の特徴としては,(1)石炭燃焼により排出されるSO2が主な原因物質であり,SO42-型酸性雨である。(2)降水の酸性化は月と季節変化がはっきりしている。(3)分布の地域性がはっきりしている(主に南方地域に発生している)。(4)大都市を中心に多発している。などがあげられる。現在,中国の自動車保有台数は年々増えつつあり,しかも乗用車はほとんど大都市に集中して,自動車排気ガスによる大気汚染も深刻な問題になると予想される。2.2水質汚濁1982年において中国の下水排出量は310億トンであり,そのうち工業排水が240億トンで77.2%を占めている。排水中の水銀,カドミウム,鉛,クロムなどの重金層やヒ素の排出量は約4000トンであり,他に青酸化合物類2万トン,油類約10.5万トンが排出されている。全国の主要河川のうち本流では12.7%がこれらの物質によって汚染され,支流においては55%が汚染されているとの報告がある。また全国の沿海都市における調査では,沿岸海域に排出される工業排水と生活排水の量は毎年66億トンに達している。汚水とともに海に排出された汚染物質の量は油類が13.8万トン,青酸化合物は8800トン,有機物質は約694万トンである。そのほかに,沿海の各地域では農薬を毎年18万トン,化学肥料を268万トン使用していることから,その大部分は水とともに海に流れ込んでいると考えられる。したがって中国沿岸海域は,ある程度汚染されていると考えられる。また,中国の鉱工業の固形廃棄物の排出量は1982年現在4億トンであり,再生利用されているものはわずか9788万トンと,廃棄量の24%に過ぎない。残りは都市の郊外に堆積しているか河川,湖,海に排出しているかのどちらかである。産業廃棄物と都市ごみの堆積は膨大な土地を占有し,土壌,水,大気に二次汚染をもたらしている。次に,農薬の汚染も軽視できない深刻な状況になっている。2.3自然環境環境汚染は自然環境にも大きな被害を与えている。中国は森林の少ない国であり,1982年の統計によると森林の占める割合は12.5%に過ぎず,世界において120位以降に相当する。また,森林の過剰な伐採,耕地の開拓などによって森林資源が次々と破壊され,その結果多くの地域に異常気象を招き,生態バランスが崩れ南方地域,とくに長江流域では洪水,北方地域では干ばつなどの自然災害が頻繁に発生してきている。中国の利用し得る草原は220万100km2あり,非常に重要な資源である。しかし無計画な耕地開発,放牧などによって草原が退化し砂漠化が進んでいる。統計によると牧場の退化,砂漠化の面積は51.3万km2に達し,草原総面積の約1/4である。中国の人口は毎年1700万人の割合で増加している一方,耕地は毎年3330km2の割合で減少しつつある。これは農業環境に対し非常に大きな影響とインパクトを与えている。地表植生の破壊によって水と土壌の流失が激しく,土壌流失面積は現在150万km2に達し,世界的にも土壌流失量がもっとも大きな国の一つである。3.環境対策3.1環境保護の基本政策中国において,環境の保護と改善は国の基本的な政策として,中華人民共和国憲法第11条に国が環境と自然資源を保護し,汚染とその他の公害を防止管理すると定められている。1979年9月に中華人民共和国環境保護法を施行し環境保護の方針,任務,政策措置をより具体的に規定した。環境に関わる中国の最も基本的な政策は「経済,社会,環境を同時に発展させることである,即ち経済発展,都市/農村建設,環境保護を同時に実現しなければならない。そこでは経済発展を追求すると同時に環境保護を行う,という開発と環境保護のバランスが求められている。環境保護の基本原則は,(1)汚染を未然に防止する,(2)汚染者(開発者)が費用を支払う,(3)環境管理を強化することである。これらの環境保護に関する国家レベルの基本政策は,「中華人民共和国環境保護法」を始めとして多くの環境関連法に盛り込まれている。3.2環境管理制度環境保護政策を具体的に実施するための手段が整備されている。その手段とはすなわち「三同時制度」,「環境影響評価制度」,「汚染物排出料金徴収制度」,「環境保護目標責任制度」,「期限付き汚染処理制度」,「都市環境総合整備定量審査制度」,「汚染物質排出許可証制度」,「汚染物質集中処理制度」などの8制度である。(1)三同時制度三同時制度は投資プロジェクトの実施と同時に,環境汚染防止施設を計画,建設,操業することである。つまり生産施設の計画,建設,操業の三段階において,環境保護施設が同時に計画,建設,操業されることである。これは中国特有の制度である。(2)環境影響評価制度環境影響評価制度は中国の環境保護法によって定められたものである。この制度によると,工業地帯の建設と拡張,都市の建設と拡張,大型水力プロジェクトの計画・建設,大規模な耕地開拓,交通幹線の建設および工場の建設あるいは拡張などを実行する前に充分な社会環境と生態影響の調査及び総合的な分析評価を行い,防止措置を入れた報告書あるいは報告表を作成し環境保護部門の審査,許可を得なければならない。環境影響報告書には次のような項目内容が盛り込まれなければならない。①総論:規制,保護の目標など,②プロジェクトの概要:プロジェクトの名称,規模,原料,エネルギーの来源,廃棄物の種類と量や回収,利用の方法,③周辺地域の環境調査④建設項目の周辺地域および環境に対する長短期の予測と影響分析,⑤環境モニタリングの提案⑥環境影響に対する経済コストの解析。(3)汚染物排出料金徴収制度この制度は「汚染者負担」という環境政策の具体化であり,1979年実施された。この汚染物排出料金徴収制度では国や地方の排出基準を超えて環境汚染物質を排出している企業から、その排出基準超過分(超過した濃度と数量)に応じて課徴金(「汚染排出費」あるいは「排汚費」と呼ばれる)を徴収する。徴収の対象となる環境汚染源は汚水、廃ガス(排気)、固形廃棄物、騒音、放射性廃棄物などの5種類(73項目)である。また二酸化硫黄の排出総量を削減するために,1992年9月から石炭燃焼の排煙に含まれる二酸化硫黄排汚費を試験的に徴収し始めた。(4)環境保護目標責任制度省長,市長,県長(知事)などが,任期内における具体的な環境保護目標を規定し,目標の達成に責任を持つ旨の文書に調印するもので,その達成度に応じて賞罰を受ける形式。(5)都市環境総合整備定量審査制度都市環境総合整備定量審査制度は都市の環境質を定量的に判断する指標を導入する。大気、水質、騒音、固形廃棄物の利用と処置、都市緑化の5分野があり、全体で21の定量的基準によって都市の環境質を点数で評価する。この制度は先の環境保護目標責任制度における、責任達成を審査する基準にもなる。この制度では全国37都市を国家が直接審査する国家審査、および省政府が管轄内の重点都市を審査する省区審査があり、後者は現在全国230都市に及んでいる。(6)汚染物質排出許可証制度「汚染物質排出許可証制度」は環境汚染物質の定量的管理と総量規制を行なうための制度である。地域の環境容量の決定に従って、汚染物質の排出基準および排出総量指標を超えない場合、排出申請者に対して汚染物質の排出許可証が発行される。(7)汚染物質集中処理制度これは分散している汚染物質を集めて効率的に集中処理する制度である。下水処理場において都市下水を集中処理すること、また類似業種が連合して廃水処理場を建設し合同処理すること、などもこの制度の具体化として位置づけられる。(8)期限付き汚染処理制度70年代後期から導入された制度で,汚染がひどく処理を必要とする企業で,処理能力を持つ企業に対し,環境部門が期限付きで改善を通達する制度である。期限を過ぎても汚染を防除しない汚染企業に対しては,罰金、操業停止、閉鎖を命ずることができる。操業停止や閉鎖処分を命ずることにより,工場立地と産業構造を調整する手段にもなりうる。この制度は重大な環境汚染事故を起こした企業に最近頻繁に適用されている。4.おわりに中国は環境の保護と改善を非常に重視しており,環境保護を基本的な国策に組み入れた。中国は環境保護の面で,一連の効果的な方針と政策を制定・実行し,より効果的な環境管理を目標にして法律や制度の試行を重ねて,中国的な特色のある環境管理体系を組織してきた。そして現在,硫黄酸化物の排出削減という困難な目標に対して、環境管理の方策を試行しながら模索している。したがって,一部の環境問題を有効的に抑えることができた。しかし,環境レベルはまだ理想的とは言えず,全国の環境態勢は依然として「局所的には抑えられたが,相対的には悪化しており,先行きが心配される」という厳しい状況を呈している。環境汚染は一国あるいは局所的な問題に留まらず,国境を越えた国際的な問題に発展してきており,その被害,影響を軽減するには各国間の協力が必要になると考えられる。とくに日本は世界において公害防止の先進国であり,中国の公害防止に日本との協力が欠かせないことと思う。参考文献吉岡完治ら中国の経済発展と環境問題,「エネルギー・資源」第15巻第6号,1994菱田一雄世界最大の人口を抱える中国の加速化する経済開放政策と環境保全との接点,「資源環境対策」,1993中島正博中国の環境管理制度と大気汚染対策,「広島国際研究」第3巻,1997耿順,段匡中国の環境法と行政制度,「発展途上国の環境法─東アジア─」,1993

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