第九課俳句の鑑賞キーワード一、古文の知識二、日本文学史の知識三、俳句の豆知識四、俳句の鑑賞五、俳句作り三、俳句の豆知識1、季語季節を代表する風物を表す語を季語という。主要季語一覧新年春(1-3月)夏(4-6月)秋(7-9月)冬(10-12月)天文初明かり初霞·初日淡雪·朧月·忘霜風光る·東風五月雨·夕焼け麦の風·青嵐·虹天の川·野分新月·稲妻初雪·空風·霜寒月·こがらし地理初景色初富士若菜野残り雪·雪解け焼け野·苗代春の海出水·赤潮卯浪·土用波旱畑·清水不知火·刈田野を染む秋の水枯野·氷霜柱氷柱·山眠る凍土時候年立つ人日·元朝松の内麗らか·長閑立春·行春彼岸·余寒立夏·三伏暑き日·土用梅雨明け·入梅爽やか·残暑後の彼岸秋惜む·夜長小春·除夜行年·年の暮年の内·短日人事初商·初詣初詣·蓬莱門松·書初種蒔·野焼く雛祭·田打ち団扇·浴衣端午·粽更衣·祇園会盂蘭盆·紅葉狩り月見·新米墓参·重陽布団·冬籠年忘れ·七五三炬燵·神楽動物初雀·初烏嫁が君蛙·雀の子·燕猫の恋·蝶蜂白魚·雲雀蝸牛·蜘蛛の子青蛙·不如帰蝉·蚊·金魚赤蜻蛉·雁百舌鳥·渡鳥秋刀魚·蟷螂兎·鷹·河豚·鴨牡蠣·氷魚植物橙福寿草報春花梅·菫·菜の花桃の花·山吹若草·初桜苺·牡丹·青桐葵·早苗紫陽花葡萄·女郎花栗·木の実·楓紅葉·柘榴·菊落葉·枯木水仙·大根寒梅·白菜·蜜柑2、切れ字――句の中で意味上切れるところに用いられて、余情を誘引し、主題を強調する。ひまわりの空かがやけり波の群れ水原秋桜子上五中七下五(初句)(二句)(結句)○○○○○○○○○○○○○○○○○初句切れ二句切れ句切れなし夕顔やひらきかかりて襞深く【初句切れ】草山に馬放ちけり秋の空【二句切れ】万緑の中や吾子の歯生えそむる【中間切れ】とつぷりと後ろ暮れゐし焚火かな【句切れなし】切れ字十八箇条(宗祇)①終助詞:かな·もがな·ぞ·か·や·よ②助動詞終止形:けり·ず·じ·ぬ·つ·らむ③動詞命令形:け·せ·へ·れ④形容詞終止形:し⑤副詞:いかに①動詞の命令形例・野を横に馬牽き向けよほととぎす(夏草の茂った広野を馬で進むと横から鳴き声がする。馬士よ、その声の方向へ馬の首を向けてくれ。ほととぎすが鳴いている)②形容詞の終止形例・五月雨をあつめて早し最上川(折から降った五月雨の水を集めて、川は豊かに水が漲り、その流れはすさまじい。さすがに急流な最上川であることよ)③詠嘆の助動詞「けり」例・行く春を近江の人と惜しみけり(古人も愛惜したこの琵琶湖のほとりの過ぎ行く春を、親しい近江の人々と惜しみあったことだなぁ)④終助詞「かな」例・野ざらしを心に風のしむ身かな(旅先で行き倒れになり、骸骨を野辺にさらすわが身を覚悟し、病弱な私は今、長い旅に出発した。すると、秋の冷たい風が身にこたえることだなぁ)⑤間投助詞「や」例・荒海や佐渡に横たふ天の河(北の海は波が荒いことだなぁ。その海に佐渡の島が黒々と浮かび、その島に向かって天の川が滝のように降り注いでいる)⑥述語の省かれた副詞例・猿を聞く人捨て子に秋の風いかに(猿の泣き叫ぶ声を聞いて、詩人たちは、秋風に捨て子の泣く声をどのように聞くのだろうか)3、代表俳人松永貞徳、西山宗因、松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶、正岡子規など四、俳句の鑑賞これは、‥‥‥(季節)の‥‥‥‥‥‥‥‥の様子を俳句にしたものです。‥‥‥‥‥‥という書き方がとてもいいと思います。作者の‥‥‥‥‥‥という気持ちが伝わってきます。‥‥‥‥‥という感じがよく表れた俳句です。盆踊りじいちゃん腰が伸びているこれは、夏の盆おどりでおどっているおじいちゃんの腰が伸びている様子を俳句にしたものです。作者は、おじいちゃんはもう年で腰が曲がっているのに、いつもとちがって元気がいいのでびっくりしたけど、いっしょに楽しくおどっているような気がします。「腰が伸びている」ので、おじいちゃんのおどり方がよくわかります。秋風にふかれて落ちるかれ葉だよこの俳句は、秋風にかれ葉がふかれて落ちていくところの様子を表したものです。この俳句の「秋風にふかれて落ちる」という書き方がいいと思います。この俳句から、作者の「秋風でかれ葉が落ちてしまうんだなあ。」という気持ちが伝わってきます。この俳句は、ぼくも同じようなところを見たことがあって、作者の気持ちがよくわかるいい俳句です。朝がきてまどを開けば銀世界この俳句は、冬の朝おきてまどを開ければ雪に光が当たってきらきら光るという様子を表したものです。この俳句の「銀世界」というところがとてもいいと思います。この俳句から、作者の、朝おきてまどを開けたら思ってもいなかったもう一つの世界が広がっていたという気持ちが伝わってきます。この俳句は、私も朝おきてまどを開けた同じ経験があるのでよくわかるとてもいい俳句です。五、俳句作り1、俳句を書くうれしい、悲しい、苦しい、楽しい、などといった、感情や感動が直接表れる言葉を使うのはやめよう。たった十七文字しかないのに、しかもその中で季節を表す言葉を使うから、残った文字数が少なくなるのに、直接気持ちが分かる言葉を使ってはもったいない。自分のいろんな感情や感動を、他の言葉を使って表そう。2、読みあい、話し合う3、季節を表す言葉を集める夏と冬は、生活に関係した言葉や、台風や初雪など、自然(天候)に関係する言葉が割合多かった。反対に、動物や植物に関係する言葉が少なかった。逆に、春と秋は自然(天候)に関係する言葉や生活に関係する言葉が少なく、動物や植物に関係する言葉が多かった。4、俳句集を作る5、俳句集を読み、友達の俳句の鑑賞文を書く■偉人氏名加藤楸邨■氏名よみがなかとうしゅうそん■偉人氏名(別名)加藤健雄(本名)■別名よみがなかとうたけお■主な功績俳人・「寒雷」を創刊、主宰■分野文学■ゆかりの市町村名春日部市■出生地東京都■主な居住地春日部市■生年~没年1905~1993(88歳没)■明治38年~平成5年■功績人間探求派と称される俳句で知られる俳句雑誌『寒雷』を創刊・主宰した。昭和4年(1929)~昭和12年(1937)旧制粕壁中学校の教員時代、俳句を作り始め、俳人の水原秋桜子に師事、楸邨俳句の出発点を過した。■著書・作品(出版社・収蔵館)『寒雷』、『野哭』■参考文献(著者・出版社)『新訂俳句シリーズ人と作品16加藤楸邨』(田川飛旅子著)、『寒雷』加藤楸邨追悼特集号、『春日部市史通史Ⅱ』(春日部市)■ゆかりの場所・名称(1)春日部高等学校(2)春日部市郷土資料館■ゆかりの場所・説明(1)加藤楸邨の句碑が建立されている。(2)加藤楸邨を紹介したコーナーがある。父が鉄道勤務だったため、各地を転々とし、父の病気や死により、弟妹を抱えて20歳前後まで生活の労苦を強いられました。21歳で東京高師臨時教員養成所国語漢文科に入学し、卒業後の昭和4年(1929)に県立粕壁中学校(春日部高等学校)に赴任しました。同6年(1931)頃から同僚に勧められて俳句を作り始めました。このころ水原秋桜子を知り師事し、「馬酔木」に投句するようになりました。自分と同じく短歌から俳句に入った秋桜子に共感し、抒情と詠嘆に富んだ句風から出発しました。秋桜子は「馬酔木」に「自然の真と文芸上の真」を発表して、反虚子を宣言し、俳壇革新のために孤軍奮闘していました。実生活の楸邨は、昭和4年(1929)に矢野チヨセと結婚し、翌年長女をもうけ、次女は失ったものの、長男、次男の3児の父になりました。教え子の家庭の生活苦に同情を寄せるなど教師の顔を多く見せました。この時期の句は、後に出版された「寒雷」の中の「古利根抄」に多く収録されています。昭和12年(1937)、教員生活の行き詰まりと文学上の焦燥から脱するため上京し、「馬酔木」発行所に勤めながら東京文理科大学国文科へ入学し、その後、句風は馬酔木調から脱し、内面的苦悩を表現しようとする「人間探求派」へ移りました。昭和15年(1940)「寒雷」を創刊主宰し、その中で金子兜太ら俊秀が多く育ちました。句集に「雪後の天」「野哭」「まぼろしの鹿」ほかがあり、「加藤楸邨全集」全14巻が発行されています。新出語1、かんしょう鑑賞:自然や芸術作品をよく味わって楽しむ意。「絵画を――」「レコードを――」「名曲――ガイド」観賞:自然や草花など、美しいものを眺めて楽しむ意。「薔薇を――」「庭園を――」「熱帯魚を――」干渉、感傷、観照、緩衝、冠省、完勝、感賞、姦商、さんぞうしさんざうし【三冊子】俳諧論書。三冊。1702年成立、1776年刊。服部土芳(とほう)著。「白冊子」「赤冊子」「忘水(わすれみず)(黒冊子)」の三部から成る。俳諧の起源・式法や俳諧作者の心構え、また、不易・流行・軽み・付合論などを論ずる。「去来抄」とともに、芭蕉晩年の俳諧観・芸術観を知るうえで重要。俳人協会会長鷹羽狩行(たかはしゅぎょう)1930年山形県新庄市生まれ。中央大学法学部卒業。1946年尾道商業時代に俳句を始め、山口誓子・秋元不死男に師事。1965年、第1句集『誕生』で俳人協会賞、1975年、句集『平遠』で芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。1976年「毎日俳壇」選者。1978年「狩」創刊、主宰。1984年、NHK教育テレビ「俳句入門」講師(3年間)。1987年、NHK国際放送の俳句番組担当(15年)。1993年、俳人協会理事長、「東京新聞」俳句欄選者(9年間)。1994年、国際俳句交流協会常務理事、現在顧問。NHK教育テレビ「NHK俳壇」講師(3年間)。1999年、文部大臣表彰。NHKラジオ深夜便「ラジオ歳時記」(出演中)。2000年、日本文藝家協会理事、日本現代詩歌文学館振興会理事。2001年、NHK教育テレビ「趣味悠々・はじめての俳句」講師。2002年、俳人協会会長、句集『翼灯集』と『十三星』で毎日芸術賞を受賞、受勲。句集『誕生』『遠岸』『平遠』『月歩抄』『五行』『六花』『七草』『八景』『第九』『十友』『十一面』『十二紅』『十三星』『十四事』、訪中吟『長城長江抄』、海外吟『翼灯集』、挨拶句集『啓上』『俳日記』。評論・エッセイ集『古典と現代』『俳句の魔力』『胡桃の部屋』『季節の心』『名所で名句』『名句を作った人々』『俳句一念』。入門書『俳句のたのしさ』『俳句を味わう』『俳句上達法』『俳句の楽しみ』『俳句入学』『狩行俳句入門』など。