電子情報化の経験「社会学文献情報データベース」にみる日本社会学会データベース委員周藤真也(早稲田大学)久木元真吾(㈶家計経済研究所)第78回日本社会学会大会(於・法政大学多摩キャンパス)一般研究報告(2)情報・コミュニケーション2005年10月22日1.「社会学文献情報データベース」とは1データベースの概要2収録データの情報源1ー1.データベースの概要①日本社会学会が作成している書誌情報データベース76,759レコードを収録(2005年8月3日現在、Version7.3)著者名(日,カナ,英)、刊行年、標題名(日,カナ,英)、掲載書誌名(日,英)、出版者(日,英)、巻号、ページ、キーワード(日,カナ,英)、種別、言語、内容分類、翻訳文献の原著情報等の34項目の情報を収録(詳細は、資料③を参照)1ー1.データベースの概要②データベースの公開国立情報学研究所の学術データベースリポジトリ(NII-DBR;)データベース委員会独自サイト富山大学サイト東北大学サイト※これらには、データベース委員会のWebサイト。1-2.収録データの情報源①毎年1,2月に日本社会学会および関連学会*において会員を対象に実施している「社会学文献調査」による調査用紙の提出Web登録**(2002年度調査より)*現在は日本家族社会学会のみ**現在は、Web登録は、1年中受付1-2.収録データの情報源②その他「社会学文献目録」の収録(後述)日本社会学会の機関誌(戦前期を含む)に掲載された文献の書誌情報の収録日本社会学会が作成した各種文献目録の収録「家族社会学文献目録」(1980~97)の収録※詳細は、資料②を参照のこと。2.「社会学文献情報データベース」の歴史1前身としての「社会学文献目録」2データベース化への取り組み2-1.前身としての「社会学文献目録」「社会学文献目録」・・・『社会学評論』の巻末に掲載(1950~97)1958年以降、会員の「自己申告」による情報収集1964年以降、国立国会図書館員による文献情報の補充を開始1969,71~95年本編と補充を別々に掲載※詳細は、資料①45ページを参照のこと2-2.データベース化への取り組み1993年データベース小委員会「答申」1994年データベース委員会発足、準備開始1996年度調査よりデータベース化を前提とした形式に移行1997年文献目録を最後に、『社会学評論』巻末掲載を廃止(以後、2002年までは独立した冊子体による「文献目録」を刊行)2000年「文献目録」のデータベース化完了、正式公開開始3.データベース化の経験1「社会学文献情報データベース」の現状2データベースを取り巻く環境の変化3電子情報をめぐる経験の位相の変容3-1.「社会学文献情報データベース」の現状①近年のデータ収録状況3-1.「社会学文献情報データベース」の現状②データベース化への本格的な取り組みが始まる直前の1995年をピークとする収録文献数の漸減傾向日本社会学会会員数の伸びに対する収録文献数の伸び悩み→収録されていない文献の増加?(→会員の質の変化?)3-2データベースを取り巻く環境の変化①「社会学文献情報データベース」は、構想から10年、本格的な運用からも数年以上が経過し、データベースを取り巻く環境は大きく変化してきている3-2データベースを取り巻く環境の変化②重複する領域のデータベースの整備①雑誌目次データベース雑誌記事目録速報データベース(国立情報学研究所)雑誌記事索引(国立国会図書館)②書籍データベースJAPAN/MARC(国立国会図書館)総合目録データベース*(国立情報学研究所)取次・出版社・書店等による商業データベース(数種あり)*WWW検索サービスNACSIS-Webcatとして知られている3-2データベースを取り巻く環境の変化③→これらの重複する領域のデータベースの整備は、「社会学文献情報データベース」の地位を相対的に低下させてきたと考えられる。3-2データベースを取り巻く環境の変化④電子情報をめぐる環境の変化1990年代後半に起こったパーソナルコンピュータとインターネット利用の普及データベースの利用の場合CD-ROM、専用ソフト、限られた範囲内(スタンドアロンのPCかイントラネット内など)→ネットワークを介して広く(かつ多くは無償で)提供されたものを利用することの経験が一般化3-2データベースを取り巻く環境の変化⑤「社会学文献情報データベース」の現況を考える際、データベースを取り巻く環境の変化というよりも、データベースをめぐるわれわれの経験の位相の変容によって捉えなければならない3-3電子情報をめぐる経験の位相の変容①WorldWideWeb(WWW)の経験WWWで公開される情報は、それ自体が、単独で存在するものというよりも、インターネット上の資源の一つとして経験される→大宇宙(WWW=超データベース)の中で不可視化する小銀河(個々のデータベース)3-3電子情報をめぐる経験の位相の変容②「文献目録」からデータベースへ(メディアの特質、メディア的体験)可視的なものの不可視化「文献目録」のもっていた一覧性がデータベース化によって損なわれてしまった可能性不可視的なものの可視化検索によって明らかになるデータベースの「質」3-3電子情報をめぐる経験の位相の変容③→データベースのもつ不可視性は、文献情報を自ら登録する意欲を減じさせ、データベースのもつ可視性は、データベース対してシビアな評価が下される可能性を増やす悪循環構造個々のデータベースに対して、一層のデータの質の高さ(網羅性や正確性)が求められる。3-3電子情報をめぐる経験の位相の変容④データベース作成者側の経験記述形式の誤りや表記の統一データ項目の増加(英文情報など)不足している情報の補充作業不完全や曖昧な情報の処理4.「社会学文献情報データベース」の今後1新たな取り組み2最後に4-1.新たな取り組み①Web登録(2002年度調査より)データが不足している項目についての事前チェックがある程度可能に→短期的には成果を挙げているが、まだまだ不十分なところもあり、より一層の改善が望まれる4-1.新たな取り組み②既登録文献データ確認調査(2003年度実施)各会員にデータを配布し、修正してもらう→一定の成果を挙げたが、不適切な修正指示も多々あり、確認作業に膨大な時間を要している。4-1.新たな取り組み③社会学関連雑誌毎の書誌情報の網羅的収録日本の社会学関連雑誌(紀要等を含む延べ約200誌)を対象に、各号の掲載文献の情報を収集し、未収録のものはデータベースに収録し、収録済のものも、不足する項目のデータを補う作業が進行中。その他網羅的な書誌情報の収録作業を検討中講座、叢書等のシリーズ過去の日本の社会学者の文献海外の社会学者の翻訳文献など4-1.新たな取り組み④電子情報メディアの特質に対してより適合的なシステム改善・構築に向けた取り組み社会学関連の学会や各大学の社会学研究室との連携による情報の網羅的な収集可能性の模索付加情報、要約情報、全文情報の付加を含めた様々な可能性の模索4-2.最後に会員のみなさまへのお願い「社会学文献調査」へのご協力をお願いいたします。Web登録は、一年中受け付けています登録の際には、現物をお手元にご用意ください過年分については、必ず既に登録されていないかご確認のうえ、登録してください。出版者などの入力の省略はせず、英文情報、キーワード、ISBN/ISSN情報なども、できるだけつけるようにしてください。付記本報告は、平成14~16年度文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(B)(1))による研究成果の一部である。本報告は、周藤真也2005「『社会学文献情報データベース』の現状と課題」『社会学文献情報の蓄積システムの構築のための試験研究』平成14~16年度文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(B)(1)、研究代表者:板倉達文(名古屋大学大学院環境学研究科教授))研究成果報告書(=資料①)に基づいている。