词汇学概念第一章語彙と語彙論1.文を構成するのは語彙と文法である。音韻は音声によって言葉を表す。文法は単語を組み合わせて文を作る際の決まりである。語彙は文を作る材料である。第一節語彙1.語は言語のもっとも基本的で、重要な単位である。語彙は単語の総体であり、あるまとまりを持った語の群である。「彙」は「なかま・類」という意である。2.もう少し厳密な定義をつければ、語彙は一定の範囲において用いられている単語の集合である。第二節語彙論1.語彙論は語と語彙を研究の対象とする学問である。あるいは語彙を体系的にとらえ学門は語彙論を呼ぶ。音韻論や文法論と並ぶ言語研究の重要な一分野である。2.狭義の語彙学は語の構造、語彙の変化、語彙の体系の研究にとどまり、広義の語彙論は語源論、意味論、辞書学なども含まれる。第三節語彙論の研究分野語彙体系論計量語彙論語種構成論基礎語彙論位相語彙論対象語彙論史的語彙論1..計量語彙論は統計的な手法により、語彙の量の構造を明らかにしようとする分野である。第四節語彙論の研究の視点1.語彙論の研究の二つの視点:通時論と共時論ある語がいつ、どのようにして発生したか、ことばは時代の下るにしたがってどのように変化してきたかを追究するのは通時的・歴史的な見方である。一方、その語がどんな意味を含み、どのような構造となっているかを研究したり、語同士の関係を論じたりするのは共時的な分析の見方である。2.共時論的な視点:語彙を共時的な見地からとらえ、語の外形、語の機能、語の意味、また語はどのように分類され、どのように釣り合いをもって全体の語彙をなすかなどさまざまな角度から語彙全体の様相を考える。第五節日本語の語彙の特徴1.語彙の特徴:①日本語は系統的に孤立した言語である。形態:孤立語(語序)、膠着語(意味内容-自立語、文法的意味、助詞)、屈折語(語尾変化)②日本語はいろいろな言語の集まりである。③文字の面で日本語は漢字・片仮名・平仮名・ローマ字・アラビア数字といった多くの違った体系のものを使っている。日本語語彙の豊富な部分:(1)自然現象の面では、雨や風などを表す気象に関する語が豊かである、例:大雨、小雨、にわか雨、通り雨、豪雨、糠雨、日照り雨、長雨、春雨、五月雨(~が降る/~がやむ)、夕立、時雨、氷雨、梅雨(~に入る/~があける)、霙(みぞれ)、小降り、大降り、本降り、土砂降り(暴雨,倾盆大雨)(2)自然を表す語彙のうち、地形・水勢を表すものが多い。例:瀬(浅滩)、江(入江/海湾)、津(津々浦々/来自五湖四海)(3)植物や動物の語彙も豊富である。例:桜、松、梅、すみれ(紫罗兰)、カンナ(美人蕉)、スイートピー(豌豆)、カーネーション、朝顔、ひまわり鰤(ぶり)、鮪(まぐろ)/金枪鱼、鮭(さけ)/大马哈鱼、鰊/鯡(にしん)、鱒(ます)、鰯(いわし)/沙丁鱼、鱈(たら)、鯛(たい)、太刀魚(たちうお)/带鱼、鰻、章魚(たこ)、するめ、秋刀魚(さんま)、鰍(かじか)/杜父鱼、鯉、鯖(さば)/青花鱼第二章語の計量1.日本ではいろいろな語彙調査がなされてきた。雑誌90種に対する語彙調査(1956年)によれば、標本の延べ語数53万に対して異なり語数は40,156語であるということである。また、「朝日」、「毎日」、「読売」の新聞三紙に対する、コンピューターによる語彙調査(1996年)によれば、標本の延べ語数94万語に対して異なり語数は47,805語である。2.基礎語彙とは、人為的に選定された、ある言語の語彙体系に存在する中心的な語の集まりである。一方、基本語彙は、その用語から見ると基礎語彙と似ていて混同されがちであるが、両者の方法は全く異なる。基本語彙は実際に使われていることばを調べ、客観的調査によって選定されたものである。第三章単語第一節単語の定義1.単語には二つの特徴がある。①単語は一定の意味を担う単位である。②単語は言語のもっとも基本的な単位である。第二節単語の認定1.単語の認定基準:表記法、意味面、形態面①日本語の単語の表記は英語などと違って分かち書きの習慣がない。そのため単語式や文節式がとられている。文節式:木の葉、菜の花、床の間②単語は意味を有する最小の言語単位である、それ以上分解できない「不可分性」を持つものである。③形態上、前後に切れ目をおいて発音してうるものは単語と認定できる重要な基準である。第三節単語の成り立ち1.単語は語形と語義からなっている。語形とは語の形で、内容を固定させ、伝達するのに用いられる表現手段である。語義は語の意味、語の表現内容である。2.単語の語形①語形と語義の結びつきは恣意的なものである。語形というのは音声形式と表記形式のことである。②日本語に同音語と同形語が多い。日本語の音声の構造が単純で、音節の種類が少ない。3.単語の語義語形は単語の意味を担う形式面のもので、語義は意味を担う基本的な単位である。4.語形と語義の対応関係①一対一の関係例:鳥・花・月・水素②一対二以上の関係例:「持つ」には「所持する」、「所有する」、「維持する」、「負担する」○キャッシュカードを持つ(所持する)○子供を二人持っている(所有する)○先生に恨みを持つ()○授業をもっている(負担する)○この靴は長く持つ(維持する)③多対一の関係例:「感じ」と「フィーリング」「台所」、「キッチン」、「炊事場」、「調理場」、「厨房」「夫」、「主人」、「旦那」、「亭主」、「宿六」、「ごきぶり」「ハズバンド」「妻」、「女房」、「家内」、「奥さん」、「夫人」、「細君」、「ワイフ」かかあ天下―亭主関白「厠(かわや)」、「後架」、「ご不浄」第四節単語の性質1.単語には物事を指示するという働きと文の材料であるという働きがある。単語が文の中で物事を指ししめすものとして働く面は語彙的な意味で、文の中で他の単語との結びつきや文と現実とのかかわりを表現するものとして働く面は文法的な意味である。第五節同音語と同形語1.発音が同じで、意味が異なる単語は同音語といい、同音異義語ともいう。(书上例子)2.表記形式が同じで、発音が違う単語は同形語という。(书上例子)第六節擬音語・擬態語1.擬音語(擬声語)は実際の音や声をそれぞれの社会言語で模写したものである。2.ある種の意味的特徴をある種の音的特徴に託して象徴的に表現することばは擬態語という。擬音語と擬態語をあわせてオノマトペと称し、または音象徴語と呼ぶこともある。(书上例子)3.擬音語と擬態語の相違①擬音語は実際の音や声を直接的に模写してつくられたことばで、カタカナで表記されることが多いのに対し、擬態語は聴覚によるものではなく、視覚・味覚・嗅覚・触覚・気分や心理・状態などによるもので、音の感じを具体的に出そうとするような場合にはカタカナで表記されることもあるが、平仮名で書かれることが多い。②擬音語は口語性・卑俗性が強い。あらたまった調子の会話、固い講義や講演の場合、擬態語は使われることがある。③擬音語・擬態語の品詞については、副詞として使われるのが普通である。擬音語は「と」をつけて使われるが、擬態語はこのほかに「に」をつけて用いられる。第四章語の構成第一節語基と接辞1.語の構成要素:語基と接辞2.語基とは、語の構成要素を分析して得られる、意味の中核を担った最小の単位で、語よりも基本的なものである。一般に語基は単独で語を構成することができるかできないかによって、自立語基と結合語基に分けれる。3.接辞は、それ自体は単語として独立して使われることがないが、常に語基と結びついて語を構成する。4.接辞は二つの機能を持っている。一つは語に補助的な意味を加える機能である。もう一つは形式的なものを表し、語の品詞性を決定することである。第二節単純語1.単純語とは、一つの自立語からできて、それ以上意味を持つ小さな部分に分けることのできない単語のことである。第三節派生語1.単純語に対して、2個以上の構成要素からなる単語を「合成語」という。合成語はその構成要素の性質からまた「派生語」と「複合語」に分けられる。2.派生語は語基と接辞との組み合わせでできた単語である。3.接頭辞は文字通り語基の前について派生語を構成する接辞である。日本語の接頭辞はその意味、品詞性などを考えて分ければ、次のようなものに大別される。例:①程度を表すもの薄暗い、小高い②待遇を表すものお電話、御礼③語気を表すものとり調べる、たやすい④漢語系のもの大規模、未開発4.接尾辞は文字通り語基の後について派生語を作る接辞である。接尾辞の品詞性から次のようなものに大別される。例:①名詞性のもの近代化、日本式②動詞性のもの春めく、弱まる③形容詞性のもの女らしい、怒りっぽい④形容動詞性のもの国際的、朗らか第四節複合語1.複合語は合成語の一種で、二個(以上)の語基から組み立てられるものである。主述構造:口―下手、日―暮れ連体修飾構造:青―信号、私―生活連用修飾構造:たこ―やき、山―歩き並列構造:山―川兄―弟重複構造第五節合成語の音声変化1.合成語の音声変化合成語をつくる場合、その構成要素が音声変化を引き起こすことがある。①濁音化:後置要素の頭音が清音から濁音に変わることを指す。例:足踏み、皮靴、気高い②半濁音化:後置要素の頭音節がハ行音からパ行音に変化することを指す。例:緊迫、進歩、澱粉(でんぷん)③促音化:前置要素の末尾音節が促音に変化することを指す。例:追っかける、引っかく、突っ込む④転音化:前置要素の末尾母音が他の母音に変わることを指す。例:雨具、船便、酒屋第五章語種第一節固有語と借用語1.日本語の語彙はその出自から大きく固有語と借用語に分けられる。日本語の語種は和語、漢語、外来語というように三分類することができるが、造語の観点から見ると、もう一種類純粋の和語でも漢語でも外来語でもなく、それらが互いに結び付いてできた混種語というものが加わらなければならない。第二節和語1.和語はやまとことば、つまり日本民族が誕生するとともに形成された日本の固有語である。和語は日本語の語彙の基層をなし、日本語の中心部分をなしている重要な語種である。2.和語の音韻と表記①和語の音節の特徴としては、次の三種類が指摘される。一つ目は和語の音節には、拗音音節というものがなく、いわゆる直音音節しかない。二つ目は和語の単語のはじめにラ行音がこないということである。三つ目は和語の単語のはじめに半濁音がなく、濁音も極めて少ないということである。②和語の表記和語の表記は平仮名か漢字かあまり一定していない。3.和語の文体と分布和語は通俗的、柔軟的、生活的などといった性質がある。話しことばにおいては和語が多用されるという特徴が生じる。和語の分布について見てみる和語の性格:和語は日本人の日常生活において使用頻度が高いだけでなく、その使用範囲も相当広い。語の意味分類から見ると、和語には日本の固有のものや、日本人の生活に密着した事物を表す語が多い。第三節漢語1.漢語とは中国語の文字である漢字で書かれ、日本語音で音読みされる語のことである。漢語の語感:表現が簡潔で歯切れよい(表达很明了)という特徴をもたらしている。第四節外来語1.外来語とは、外国語の単語が音訳され、その国のことばの音韻体系に組み込まれて、表記意味、発音などの点でその国のことばの語彙体系の一部となったものである。簡単に言うと、外来語は西洋から取り入れた語である。2.外来語の役割外来語の使用範囲も広く、政治、経済、学術、大衆文化、マスメディア、衣食住など日本の社会生活全般に行きわたっている。第五節混種語1.混種語とはその名が示す通り、異なる語種、つまり和語、漢語、外来語のいずれかに属する二つ(以上)の語の結合によってできる語のことである。異なった語種の要素をくみあわせてつくった単語を混種語という。2.混種語には和語と漢語とが結合した、いわゆる重箱読みの語や湯桶読みの語のような語が加えられ、さらに出自を異にする外来語同士の結合によってつくられる、いわゆる和製外来語の