30第2章外食・中食産業の現状と環境変化1.現状(1)食関連産業のプラットフォームとして役割①農業や水産業など食関連産業の川上から、問屋や商社などの川中を経て、川下に位置し、消費者に食事の機会を提供する『外食・中食産業』は、消費者と食関連産業をつなぐプラットフォームとして重要な役割を担っている。農水産業は、安全で栄養価の高い農水産物を外食・中食産業に販売し、外食・中食産業は“料理”にして消費者にこれを届ける。食品製造業も農水産業から仕入れた食材を加工し、これを外食・中食産業に販売し、外食・中食産業が消費者に届ける。また、観光・文化・アミューズメント産業は、ホテルや旅館等を利用する観光客やビジネス客を対象に、非日常空間を提供すると共に、その中や近辺の外食・中食産業が利用者に食事を提供するなど、その過程を通じてその空間を訪れる消費者に対し、伝統や文化を提供する。②外食産業の名称に付された「外食」とは、日本料理店、ファミリーレストラン、居酒屋、喫茶店など、店内で調理した食事を顧客が店内で食べる食事形態であり、また、「中食」とは、持ち帰り惣菜店、コンビニ、ファストフードなどの店舗で購入し、家や職場で調理せずに食べる食事形態である。消費者自身が食材をスーパーや食品専門店で購入し、それを家庭に持ち帰り自分で調理して家庭内で食べる「(家庭)内食」とは異なる概念である。また、2008年4月に日本標準産業分類が改定(第12回)され、外食産業の分類も変更される。外食業を含む『大分類M-宿泊業、飲食サービス業』に、『77持ち帰り・配達飲食サービス業』が新設される。これは、顧客の注文で調理した飲食品を提供するテイクアウト・デリバリーサービス等の比率が高くなったことを踏まえ、『大分類J-卸売・小売業』からそれらを分離し、『M-宿泊業、飲食サービス業』と統合し、新設したものである。その結果、国の統計でもピザ宅配店や持ち帰り弁当店が外食業に含まれることになる。そこからは、内食から中食、そして外食と多様な食事形態のボーダレス化が読み取れる。③以上のことから、外食・中食産業は単なる食事の提供サービスではなく、消費者に心の満足や安らぎを与え、食事空間(時代、地域、生活文化、気候風土)としても付加価値を与える『消費者満足産業』であるともいえる。31このように、消費者と他の食関連産業をつなぐプラットフォームとして幅広い機能を有する外食・中食産業を採り上げ、分析することとする。外食・中食産業を振興することにより、外食・中食産業以外の食関連産業に様々な効果が波及するとともに、食関連産業全体の発展、底上げにもつながっていくことが予想される。なお、外食・中食産業と他の食関連産業とは深い関わりを持っている。農水産業は外食・中食産業に対し、地域の自然の恵みや季節感を感じる、安全で健康に役立つ食材を提供する一方、外食・中食産業は高鮮度で安全な食材ニーズを農水産業に求めることで、農水産品は更に品質が向上するといった好循環を生み出している。同様に、食品製造業では、均質で低コストな、安全で健康に役立つ加工食品を外食・中食産業に提供する一方、高鮮度で安全、低コスト食材ニーズを求めることにより、加工食品の品質が向上するといったことが言える。<プラットフォームの役割を担う外食・中食産業>外食・中食産業農水産業食品製造業流通業関連設備・機器産業観光・文化・アミューズメント産業教育産業外食・中食産業農水産業食品製造業流通業関連設備・機器産業観光・文化・アミューズメント産業教育産業消費者32<外食・中食産業と他の食関連産業の関わり>外食・中食産業<過去>ハレ(ケの反対)の食事、非日常的な食事立ち食い蕎麦に代表されるファストフード性簡便化等を図るための内食に代替する食事<現在>高級料亭は非日常的な空間、サービスを提供ファミレス、ファストフード、弁当、総菜等は毎日の食を提供<目指すべき方向>食を通し生活の潤い、心の豊かさを提供食と文化の接点(時間、空間)を提供食を通し健康と安全を啓蒙家庭や地域における食育を普及農水産業地域の自然の恵みや季節感を感じる、安全で健康に役立つ食材を提供高鮮度で安全な食材ニーズにより更に品質が向上食品製造業均質で低コストな、安全で健康に役立つ加工食品を提供高鮮度で安全、低コストな食材ニーズにより品質が向上流通業(卸売業等)品質を維持しながら迅速、低コストに食材を流通消費者に食品を提供食材使用者として高い鮮度を要求物流技術が向上観光・文化産業非日常性、心の豊かさ、自然や文化を消費者に提供食と文化の接点食を通した付加価値の高いサービス提供に貢献関連設備・機器産業調理の省力化、安全性向上、環境対応を推進調理の専門家として高い技術レベル低コスト化を要求教育産業調理技術や接客サービスを教育し人材を輩出料理文化を伝承高い要求レベルで教育産業を底上げ外食・中食産業<過去>ハレ(ケの反対)の食事、非日常的な食事立ち食い蕎麦に代表されるファストフード性簡便化等を図るための内食に代替する食事<現在>高級料亭は非日常的な空間、サービスを提供ファミレス、ファストフード、弁当、総菜等は毎日の食を提供<目指すべき方向>食を通し生活の潤い、心の豊かさを提供食と文化の接点(時間、空間)を提供食を通し健康と安全を啓蒙家庭や地域における食育を普及農水産業地域の自然の恵みや季節感を感じる、安全で健康に役立つ食材を提供高鮮度で安全な食材ニーズにより更に品質が向上食品製造業均質で低コストな、安全で健康に役立つ加工食品を提供高鮮度で安全、低コストな食材ニーズにより品質が向上流通業(卸売業等)品質を維持しながら迅速、低コストに食材を流通消費者に食品を提供食材使用者として高い鮮度を要求物流技術が向上観光・文化産業非日常性、心の豊かさ、自然や文化を消費者に提供食と文化の接点食を通した付加価値の高いサービス提供に貢献関連設備・機器産業調理の省力化、安全性向上、環境対応を推進調理の専門家として高い技術レベル低コスト化を要求教育産業調理技術や接客サービスを教育し人材を輩出料理文化を伝承高い要求レベルで教育産業を底上げ外食・中食産業<過去>ハレ(ケの反対)の食事、非日常的な食事立ち食い蕎麦に代表されるファストフード性簡便化等を図るための内食に代替する食事<現在>高級料亭は非日常的な空間、サービスを提供ファミレス、ファストフード、弁当、総菜等は毎日の食を提供<目指すべき方向>食を通し生活の潤い、心の豊かさを提供食と文化の接点(時間、空間)を提供食を通し健康と安全を啓蒙家庭や地域における食育を普及農水産業地域の自然の恵みや季節感を感じる、安全で健康に役立つ食材を提供高鮮度で安全な食材ニーズにより更に品質が向上食品製造業均質で低コストな、安全で健康に役立つ加工食品を提供高鮮度で安全、低コストな食材ニーズにより品質が向上流通業(卸売業等)品質を維持しながら迅速、低コストに食材を流通消費者に食品を提供食材使用者として高い鮮度を要求物流技術が向上観光・文化・アミューズメント産業非日常性、心の豊かさ、自然や文化を消費者に提供食と文化の接点食を通した付加価値の高いサービス提供に貢献関連設備・機器産業調理の省力化、安全性向上、環境対応を推進調理の専門家として高い技術レベル低コスト化を要求教育産業調理技術や接客サービスを教育し人材を輩出料理文化を伝承高い要求レベルで教育産業を底上げ外食・中食産業<過去>ハレ(ケの反対)の食事、非日常的な食事立ち食い蕎麦に代表されるファストフード性簡便化等を図るための内食に代替する食事<現在>高級料亭は非日常的な空間、サービスを提供ファミレス、ファストフード、弁当、総菜等は毎日の食を提供<目指すべき方向>食を通し生活の潤い、心の豊かさを提供食と文化の接点(時間、空間)を提供食を通し健康と安全を啓蒙家庭や地域における食育を普及農水産業地域の自然の恵みや季節感を感じる、安全で健康に役立つ食材を提供高鮮度で安全な食材ニーズにより更に品質が向上食品製造業均質で低コストな、安全で健康に役立つ加工食品を提供高鮮度で安全、低コストな食材ニーズにより品質が向上流通業(卸売業等)品質を維持しながら迅速、低コストに食材を流通消費者に食品を提供食材使用者として高い鮮度を要求物流技術が向上観光・文化・アミューズメント産業非日常性、心の豊かさ、自然や文化を消費者に提供食と文化の接点食を通した付加価値の高いサービス提供に貢献関連設備・機器産業調理の省力化、安全性向上、環境対応を推進調理の専門家として高い技術レベル低コスト化を要求教育産業調理技術や接客サービスを教育し人材を輩出料理文化を伝承高い要求レベルで教育産業を底上げ33(2)特性外食・中食産業には以下の様な特性があり、参入企業(業態、ターゲット、規模、メニュー、提供方法)や消費者(性別、年齢別、生活形態別、嗜好別)により、これらの特性が様々に変化して提供されている。<外食・中食の産業特性>外食・中食の産業特性低価格店から格式を重んじる高級料理店まで多種多様な店舗様式装置というほどの大掛かりな初期投資は必要でなく、新規参入が比較的容易小規模資本で出店できる為、生業的な零細事業者が多い労働集約型産業(高いレイバーコスト比率)製造業と比較し、労働生産性が低い衛生管理体制が基本要件直営・FC展開による店舗展開の多様性接客応対、調理等に人手を要するスピーディーな商品開発力が求められるバラエティに富んだ品揃えが求められる外食・中食の産業特性低価格店から格式を重んじる高級料理店まで多種多様な店舗様式装置というほどの大掛かりな初期投資は必要でなく、新規参入が比較的容易小規模資本で出店できる為、生業的な零細事業者が多い労働集約型産業(高いレイバーコスト比率)製造業と比較し、労働生産性が低い衛生管理体制が基本要件直営・FC展開による店舗展開の多様性接客応対、調理等に人手を要するスピーディーな商品開発力が求められるバラエティに富んだ品揃えが求められる34(3)業態外食・中食産業には様々な業態がある。主要15業態について、最近の特徴をまとめた。①洋風ファストフードは、単品メニューや大量調理で最もマニュアル化し易い業態であり、店舗数も多い。②和風ファストフードも、洋風ファストフードと同様、マニュアル化やフォーマット化の容易な業態である。③ファミリーレストランは、チェーン化理論やリース方式、FC方式など、外食産業の大規模化を先導し、外食産業を代表する企業が多い。当初は洋食が中心であったが、その後、中華や和食など、派生的な業態が生まれている。④すし、回転すし、宅配すしのうち回転すしは、ベルトコンベアーやシャリロボット等、技術革新によって急拡大した業態であり、この10年で店舗が急増した。⑤居酒屋、パブ、ビアレストランは、老舗のビアホールから“個室”を売りにした居酒屋まで多種多様な業態があり、若い女性向けにメニューや内装を差異化した“個性”を売りにした店舗が増加している。⑥ディナーレストラン、日本料理店は、都心中心にややアッパーな層を吸引している。⑦中華レストラン、ラーメン店は低価格を売りにしたチェーン店舗が市場を牽引する。⑧うどん・そば店は、廉価・クイック販売で急成長した讃岐うどんチェーンがブームの沈静化で伸び悩んでいる。⑨カフェは、外資系珈琲チェーンの新規出店ラッシュが一段落したが、ベーカーリーカフェなど、商品力による差異化もあり安定的な出店が続いている。⑩焼肉店は、BSE問題の影響で一時期の勢いはなく、低価格店が主流となっている。⑪ピザ・パスタ店、宅配ピザは、持ち帰り店舗が伸び悩む一方、クイックパスタは比較的好調である。⑫料亭は、京都、大阪、東京に本店を置く老舗が、国内外での日本料理ブームも追い風となり、海外出店も増加している。⑬その他の専門料理店は、天ぷら、とんかつ、お好み焼き等に特化した業態であり、低価格化が進む他業態に比べ競争力が低下傾向にある。⑭持ち帰り弁当・惣菜店は、住宅地やデパ地下の惣菜