ⅲ-2-2-13.3.2.2廃材分別を考慮した環境対応型解体作業支援ロボットの研究開発【実施者:名城大学、(独)産業技術総合研究所、大阪大学、清水建設(株)】1)研究概要(1)目標ロボット技術による解体・廃材選別作業のシステム化を実現することで、建物内装リニューアル解体の効率化、作業員の作業環境改善、安全性確保、および、周辺住民の安全性向上を実現する。また、急速に進展している少子高齢化時代の社会を支えるロボットシステムとして、省人化作業システムのひな形を示す。(2)全体システム事業化の要点は、機能と価格である。したがって、コスト、速度、省人化、安全のすべてにわたって現状を超えることを目指した。施工法を詳細に検討し、実作業者の意見も集約した結果、人手による現行法を機械化したのでは目的を達することができないことが判明した。そこで、IDタグ導入による廃材の分別とロボットへの作業計画支援、ウォータージェットによる天井ボードの高速切断、人とロボットの作業分担協調制御、アクティブキャスターキャリアを組み合わせた、新解体・ロボットシステムを構築した。そして、目標実現性をモックアップ実験によって確認した。(3)IDタグによる廃材情報化人・ロボット協調作業の一環として、IDタグの設置・情報入力を行うことで、廃材管理(廃棄物取扱情報)とロボット作業計画(作業点と方法教示)ための環境情報化する手法を明確にした。(4)省エネルギ型多機能水圧ロボット現場ニーズである汎用性、頑強性、軽量性、省エネルギ性を有する4軸水圧マニピュレータを開発試作した。そして、全方位・全方向移動機能を有する移動ロボットに実装し、検証試験によってプロトタイプ機の開発見通しを得た(設計手法の定量化)。(5)人・ロボット協調制御遠隔操作・自律作業システム、人・ロボット協調作業システムの制御系を構築し、天井設置物撤去、天井ボード解体・ネジ除去等のモックアップ実験によってその効果を検証することで実用性を確認した(図2-1)。図2-1モックアップ実験図1-1人・ロボット協調解体システムⅲ-2-2-22)成果詳細2)-1目標仕様目標は、事業化を可能とするシステムの構築とそのシステムを構成する主要要素技術を開発し、システム実現性見通しを得ることにある。構想システムより抽出した個別目標を以下に示す。(1)システム構築と事業性・事業化のコンセプトである“現状作業よりも早く・安く・高速に”を実現可能な作業システム・作業工法を構成する根幹構成要素の実現性を検証する。・工数削減60%削減(省人化:5人を3人に)、工期削減30%(人作業よりも高速化)、標準稼働率で償却可能の装置価格(2)IDタグによる廃材情報化IDタグに実装する廃材情報の構築方法の明確化、および、ロボット・人・ロボット協調作業のための環境情報化手段を明確にする。そして、5種類以上の廃材分別の情報化(蛍光灯:ガラス、蛍光灯枠:鉄板、石膏ボード:石膏、ネジ:鉄クズ、エアコン吹き出し:アルミ)を行う。(3)省エネルギ水圧ロボットの開発汎用性、頑強性、機動性と省エネルギー性を有する建設機械をベースとした移動式水圧マニピュレータの要素技術を開発する。おもな仕様は以下である。・形状・重量:900mmx1200mm、300kg(エレベータ移動可能)・切断速度:0.5m/s-1m/s(使用条件で変化)・自律制御要素の実現性明確化:位置決め精度(10mm)、天井倣い、軽鉄検出・倣いの実現。・システム統合可能性:移動ロボット・工具・マニピュレータの協調制御手法の実現性検証。(4)人・ロボット協調制御ロボットに不慣れな作業員を想定した協調手法の明確化と自律制御要素の実現性を明確化する。・協調作業効果の確認:蛍光灯、エアコン吹き出し口の撤去と軽量鉄骨上ネジの自律的除去2)-2目標達成状況(1)達成概要新工法を創出し、実用化のコンセプトである“現状作業よりも早く・安く・高速に”を実現できる作業システムを構築した。そして、提案のIDタグによる廃材情報化、および、人・ロボット協調作業システムが安全上も有効なことを明確化した。併せて、必要要素技術の要求目標を実験室で達成するとともに、その代表的項目についてはモックアップ試験で検ⅲ-2-2-3証した。また、モックアップ試験で抽出された実用化上の設計課題を定量化した。(2)システム構築と事業性・天井部解体作業を主体に検討し、人・ロボット協調方式、超高圧ウォータージェットによる天井ボード解体手法を導入することによって、工数削減60%削減、工期削減30%、コスト同等以下となるロボット解体システム実現見通しを得た(図2-2)。そして、実物大部分モックアップ試験でその実現性を検証した。操作の簡素化(システムアップの完成度向上)と運用方式の昀適化が今後の課題である。図2-2ロボットシステムと操作概念(3)IDタグによる廃材情報化作業者によるIDタグ貼付工程を配置することで、工程を遅らすことなく廃材情報入力が可能となることを確認した。また、入力情報として、廃材の種類・履歴、ロボットへの作業指示情報、および、ロボット移動ランドマークとしての活用の有効性を確認した。(4)省エネルギ水圧ロボットの開発4軸水圧ロボットマニピュレータと全方位全方向移動ロボットを組み合わせた移動作業ロボットを開発した(図2-3)。このロボットにWJ天井や天井ボードを保持する軽量鉄骨を検出走査可能なWJ走査支援工具(天井倣い、軽鉄検出・倣い、軽鉄ネジ検出、)を試作開発(精度10mm以内)し、工具先端にシングル、回転のいずれかのWJノズルを実装した。これらの機能の性能評価を行うとともに、移動作業ロボットでモックアップ天井を走査切断し、天井ボードを容易に除去できることを確認し(図2-4)、実用機の設計手法を定量的に明確化した。実験を通じて設計仕様の妥当性を併せ確認するとともに、追従精度向上、配管・配線処理、シール構造、工具の頑強性等のプロトタイプマニピュレータに必要な要求仕様と設計ⅲ-2-2-4手法を明確化した。全体のシステムバランスとWJシステム等、本工事用に適性化された周辺機器の開発が残課題である。(5)人・ロボット協調システムの開発人・ロボット協調システムコンセプトを構築し、蛍光灯撤去、エアコンダクト取り外しの作業を市販マニピュレータで機能代用したモックアップ試験で検証し(図2-5)、協調制御手法の有効性を明確にした。また、同様に、モックアップ実験によって、軽量鉄骨ネジ除去のための基本機能(軽鉄とネジ検出)が実現できることを検証した(図2-6)。これらの技術はプロトタイプマニピュレータに実装し、1台の汎用的ロボットとして完成させることによって、実対象に適用可能であると判断される。図2-3移動作業ロボット図2-4天井ボード切断状況図2-5蛍光灯パネル撤去状況図2-6ネジ除去状況ⅲ-2-2-52)成果詳細2)-1建物解体時に発生する廃棄物材質の判定手法解体後に様々な材質が混在した廃材を分別するのではなく、材質ごとに順番に解体することで解体作業と同時にリサイクルやリユースのために廃材分別を行うための廃材の積極分別する方式を基本コンセプトとして提案し、解体対象に貼付されたIDタグの情報を活用することで解体分別の同時処理を可能とする廃材情報化技術を使った解体工法を案画した(図3-1)。図3-1廃材分別のコンセプト将来的には、すべての建材や設備にIDタグが埋め込まれる時代が来ることが将来予想されていることを想定すれば、この方法はリユース、リサイクル社会を構築する重要な技術であると考えられる。しかし、現状では、対象には廃材の情報がないため、熟練作業者が作業に先立ち、解体物を判定して作業指示を含めた情報を持つIDタグを解体物に貼付する、事前作業準備を行うシナリオが協調作業効果を高めるために有効であることを確認した。これらをまとめると、以下となる。(1)IDタグの材質情報により廃棄物材質を判定し廃材を情報化し、管理する手法を構築した。(2)解体作業検証実験のための要素技術として、RTミドルウエアを使ったコンポーネント群を組み合わせてIDタグを使った解体情報データベースシステムを構築した。(3)タグリーダが付けられた携帯端末を使って非熟練作業者に作業指示情報を提供できⅲ-2-2-6図3-2試作マニピュレータることを確認した。2)-2解体・選別作業を効率よく、安全に、かつ高信頼度で行う技術IDタグを用いた解体作業支援として、解体物に貼付されたIDタグ情報により、非熟練作業者への作業指示や解体作業ロボットの自動化を支援する作業情報を提供して、人間と機械の協調作業システムによる新しい解体工法を提案した。(1)作業指示と微調整や細かな作業は人間に任せ、単純な繰り返し作業や力作業を作業支援ロボットでサポートするのが基本コンセプトとするのが、現実的・現場的であることを検証した。(2)事務所ビルの改装作業を想定し、天井ボードと照明器具を具体的なターゲットとして、具体的な解体工法を検討し、人と機械が協調して、効率性(高速性)・省人性・低コスト性に優れる分別システムを開発した。(3)熟練作業者が事前配置したIDタグ情報をもとにして、解体作業ロボットを自動誘導したり、照明機器の取り外しに際しては非熟練作業者に機器の取り外し方の情報を提示すると同時に解体作業ロボットに機器重量を支えるための情報を伝える手法を明確化した(人の能力活用)。2)-3解体現場で使用可能で、かつ、建設機械相当の耐環境性を持つ次世代マニピュレータの開発以下の設計方針に基づき開発を行い目標を満足する水圧駆動マニピュレータを世界に先駆けて試作完成した。(1)耐環境性ビル内装解体現場の劣悪な環境(頑強性、粉塵、噴霧水)に耐えられるものとして、市販パワーショベルをベースとした液圧駆動マニピュレータを開発した(図3-2)。(2)省エネルギ性作動液として水道水を活用し、省エネルギ性と清浄性、高精度位置決め性を備えた水圧マニピュレータを実現可能なことを計算で示した(従来比1/2以下)。(3)高精度位置決め性テーパースプールを有する小流量直動式水圧サーボ弁の機構と制御方法を開発し、サーボ位置決め精度1(5-10)mmを実現した。()内は要求仕様値である。ⅲ-2-2-7(4)設計の妥当性検証試作の移動式マニピュレータが実用的であることをモックアップ実験で確認した。また、このマニピュレータは重量物の操作能力が300(300)Nと大きく、天井走査工具やWJノズルの搭載にも十分耐えられることを検証した。すなわち、天井ボード解体をはじめとする多様な作業に適用できることが検証された。特に、移動ロボットの高速性0.5(0.5)m/sとマニピュレータの置決め性を組み合わせることで、広範囲と狭隘部両方の作業ができることが示せたことも大きな成果である。2)-4現場作業員でも使用可能なヒューマンインタフェースの開発ロボットは重量物等の支持等の人のできにくい作業を、細かい作業は人が分担し、省人化を図るシステムを開発した。下記に概要をまとめる。(1)操作性現場作業員がロボット操作に習熟していることは期待できないことから、人とロボットが協調作業を行いやすいインタフェースとして、直観的で操作性の高いインタフェースが望まれる。女性、高齢者も含めた操作性評価に基づき、確実かつ高速に対象物を教示できる手法としてトラックボールによる教示方法を提案した。トラックボールでのロボットアームの操作により作業目標を大まかに指示するだけで、ロボットアームのエンドエフェクタが対象物を保持するように位置決めされる。これにより、高齢者や非熟練者でもロボットアームが対象物を保持するように位置決めできるようになった。ロボットアーム手先搭載型カメラの取得画像を作業者に提示することにより、容易に対象物の確認と指示ができるようになった(図3-3)。(2)低負荷性解体対象とするランプパネルやエアコ