1練馬清掃工場建替事業の環境影響評価書案への意見書環境アセスメント問題都民連絡会渡辺章東京都北区赤羽西6-29-15電話3909-65911、大気汚染について清掃工場建替事業による大気汚染の影響は、①工事中の建設機械を使用することによる大気汚染。②建替工事中に焼却処分する廃棄物を、練馬清掃工場に代わって処理を行う清掃工場周辺地域への運搬車から排出される排気ガスの影響。③清掃工場が再度稼動をすることで工場から排出される排気ガスの影響。④再稼動をした清掃工場に廃棄物を運搬する車から排出される排気ガスの影響です。今回の環境影響評価書案の第一の問題は、②建替工事中に焼却処分する廃棄物を、練馬清掃工場に代わって焼却処理をする清掃工場へ廃棄物を運搬車する車から排出される排気ガスの影響を無視しています。代わりに廃棄物の焼却処理をおこなう清掃工場名と処理量、そのために増加する運搬車の台数を報告し、関係住民にキチント通知する必要があります。その際、大気への影響は、どの程度になるかも提示する必要があと考えます。第二の問題は、清掃工場が再稼動することによる工場からの排気ガスの報告です。評価書案は、焼却炉内は850度で安定的に燃焼することを前提に排出される汚染物質の量を予測し、環境基準をクリアできると結論づけています。しかし、清掃工場の炉内は、そんなに単純に管理可能なのでしょうか。私は、世田谷の清掃工場を見学してきた人の話を聞いたことがありますが、その人が見学した時は、炉内温度は100度以上も下回っており、そのことをオペレーターに指摘すると慌てて操作を行い、その結果、徐々に温度が上昇したと述べていました。私の考えでは、いかに優秀な焼却炉でも、新規の廃棄物を投入した際は、当然、炉内温度は低下するはずです。大切なことは、そのことを当然の前提としてどのような工夫がなされているかということです。そうした工夫とともに、1日24時間の炉内温度を示すランニングデータを開示するようにすれば、こうした疑問に答えられるとかんがえます。同時に炉内温度が700度とか650度に低下した場合は、排気ガスの生成にどのような影響があるか、そうした場合でも汚染物質除去装置の働きで十分に除去が可能なのか、それともある程度は環境中に排出されるのか、実際の観測デ2ータで説明することを求めます。2、騒音・振動について大気汚染と同様に、建替工事中に焼却処分する廃棄物を、練馬清掃工場に代わって焼却処理をする清掃工場へ廃棄物を運搬車する車の騒音・振動の増加について予測評価することを求めます。3、アスベストについて練馬清掃工場が建設された時期は、今日ほどアスベストの使用について神経を使っていない時期ですから、当然、アスベストが各所に使用されていたと考えます。評価書案は、「一部配管等の接続部に非飛散製のアスベストを使用しているが」(これはバルカーパキンのようなものを指すのか)と極めて限定的にしか使用していないかの様に記述していますが、焼却炉そのものにも使用されているのではないかとの疑問を持ちます。それだけに使用状況を一覧にし、解体工事の際にどのような対策を行うのか具体的に説明することを求めます。4、地盤について評価書案は、地盤について「遮水性の高い山留壁を採用して周辺からの地下水の湧出を抑制するため、周辺の地下水位の及ぼす影響は小さい」と結論づけていますが、遮水性の高さは、地下水位を高めるという影響も生む可能性があります。大林組研究所報に次のような指摘があります。「近年,都市部での建築工事においては,地下空間の有効利用のため,大深度かつ敷地境界ぎりぎりの根切り工事が増加している。また,東京,大阪では1960年代からの揚水規制に伴い,被圧地下水位が上昇傾向にあり1),根切り底面地盤の安定のために山留め工法と地下水位低下工法を併用する工事も増加している。すなわち,地盤・地下水環境へ影響を与える事例が増加していると言える。また,環境問題に関する社会の関心も高まっており,当該工事の安全確保だけではなく,施工中あるいは竣工後の地盤・地下水環境を保全することも,建設業者としての社会的な責務になってきている。これらの検討・対策が疎かになると,補償問題や信用失墜に発展する恐れもある。したがって,以下のような意識を持って臨む必要があろう。1)永続的な地盤・地下水環境保全を目指し,環境影響を低減する工夫。2)工事場内の安全性・作業性確保。3)予算と工期が限られた中で,最大限に効果を発揮する地下水対策の選別。しかしながら,上記項目すべての要求に対して完全に対応することは困難で3あり,通常はいずれかを優先した場合,他に妥協点を見出さなければならない。また,地下水処理計画は,地盤・地下水等の自然条件のみによっては一義的に決まらず,社会条件,建物規模,コスト制約等の諸条件との組合せにより要求される性能が異なり,同一地域で同規模の工事であっても同じ計画が各々の最良案となるとは限らない。つまり,工事毎の諸条件を考慮に入れた総合的な計画・対策,即ち「地下水マネジメント」を講じなければならない。」この所報が指摘するように、根切工法は、どのようなことに重点を置くかで工法が変わってくるのです。練馬清掃工場の根切工事はどこに重点を置いて行うので、こうした工法を採用すると具体的に説明をしないと、説明したことにはなりません。地下水環境保全評価の事例(大林組研究所報から)建設地から半径500mの範囲内に,200本を超える井戸があるという状況で,約100m×110mの平面を深さ20mまで根切りする建築工事の例を紹介する。山留め壁は,ソイルセメント柱列壁が採用され,近隣の井戸が地下水を汲上げている帯水層を遮断する深さまで根入れされている。このことから,山留め壁により地下水の流動が阻害されダムアップ,ダムダウン現象が発生し,近隣の井戸が枯渇したり,水質変化を起こすこと等が懸念された。また,山留め壁施工時におけるセメント粒子による水質汚濁も懸念された。この工事では,建設敷地境界において地層構成と帯水層の規模,帯水層の水理定数,および地下水流況(流向・流速)の把握を目的としてボーリングによる地質,地下水調査を実施した。流速・流向試験では流速が測定精度の限界値1×10-3乗cm/sを下回り,この結果を用いて流況解析を行うことは困難であった。そこで,地形図や近隣井戸の構造と水位を基に,流動阻害の対象となる帯水層の広域的な地下水分布および流速を同定した。さらに,これらのデータを基に解析モデルを作成し,FEM解析を行い,山留め壁による流動阻害の影響を定量的に予測した(Fig.11,12参照)。検討の結果,山留め壁による流動阻害の影響(ダムダウン,ダムアップ)は小さく,また地下水の流速が遅いことからセメント粒子の移流・分散による水質汚濁もほとんどないと結論付けられた。まだ不確定要因もあることから,工事中は工事場内に設けた観測井戸および近隣井戸のモニタリングを行って,異状があった場合に対策を講じることとした。なお,別の某工事場では,周辺に湧水のある公園があり工事による流動阻害が学識経験者から指摘された事例がある。この工事場では先に示したFig.10の②の山留め壁外周に集水・涵養井戸を設置する対策工法を施工した。観測の結果,流動阻害が解消されていることが判明した。45、電波障害について電波障害については、この予測評価では役に立ちません。なぜなら、この予測評価はあくまでも、東京タワーから電波が送信されることだけを前提にした予測評価だからです。現在、進行している新・東京タワー(スカイツリー)が予定通り完成して供用開始(平成12年)されると、送信塔は墨田区押上に変更され、予測評価は全面的に変わることになるからです。この清掃工場の工事計画は、平成22年開始ですから、東京タワーからの電波障害と、新たに作られる新・東京タワーからの電波障害の2通りを予測評価する必要があります。6、温室効果ガスについて練馬清掃工場のような公共事業が自然エネルギーの利用に踏み出すことは、大変重要なことだと考えます。こうした発想が公共事業だけでなく民間の事業でも大いに生かされるキッカケをつくると思うからです。一方、「サーマルリサイクル」だといって廃プラスッチクを焼却処理することは、ゴミ分別の流れを壊し、CO2排出を増大させる逆流です。廃プラスッチクの製造及び使用に規制がかけられないのなら、廃プラスッチクも完全に分別して資源化を目指すべきだからです。このことをまず申し上げたいと考えます。この清掃工場から排出される温室効果ガスは、CO2換算で175,821t/年でごみ発電などの排出削減効果量を差っ引くと年間排出量は136,756t/年ということになります。仮に廃プラスッチクの焼却をやめるとCO2排出量はどのような数値となり、その際、ごみ発電がどの程度減るかを提示してください。また、この清掃工場の建替によって使用される建設資材の種類とその量にCO2の原単位をかけて計算した建替によって排出されるCO2の総量を明らかにしていただきたい。