CEO交代プロセスのイノベーション~「企業イノベーション」の継続的な遂行を目指して~社団法人経済同友会目次提言概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41.問題設定~なぜCEO交代プロセスに注目するのか~・・・・・・・・・・・・5(1)高まるCEOの重要性(2)CEOの現状と問題点2.提言~CEO交代プロセスをイノベーションせよ~・・・・・・・・・・・・・8(1)CEOの業績を評価するプロセスの透明性を高めよ①CEOは長期的なビジョン・戦略を明示する②CEOは3年程度の戦略を可能な限り数値化した目標を明示し、コミットメントを宣言する③コミットメントの達成状況は独立性の高い社外取締役を交えて定期的に評価する(2)CEO候補の選抜・育成のためのサクセッション・プランを構築せよ①サクセッション・プランの構築はCEO自らがコミットする②CEO候補の選抜・育成戦略にはポートフォリオの考え方を導入し、多様な人材に複数の経営現場を経験させる③CEO候補は独立性の高い社外取締役を交えて毎年見直し、必要に応じて適宜入れ替える(3)CEO交代プロセスの客観性を高めよ①次期CEOは独立性の高い社外取締役が過半数を占める委員会で指名する②次期CEOの就任後も、現CEOが何らかの形で社内に留まる場合は、次期CEOに助言する立場であることを明確にする3.試案~CEO交代プロセスのイノベーションの第一歩として~・・・・・・・・154.残された課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19巻末参考資料:2005年度経営改革委員会ヒアリング・事例検討一覧2005年度経営改革委員会委員一覧提言概要提言概要1.問題設定~なぜCEO交代プロセスに注目するのか~本文5~7頁CEOの最も重要な責務は、自ら主導して「企業イノベーション」を遂行し、中長期的な企業価値の向上を実現すること高まるCEOの重要性めまぐるしく変化する経営環境の下では、「企業イノベーション」※1の成否が企業の存亡をも左右しかねない。そのため、「企業イノベーション」の成否を握るCEO※2の役割と責任は、かつてないほど重大なものとなっている。CEOの現状と問題点わが国ではCEOの役割と責任が定着しておらず※3、会社経営に対する監督機能と会社経営の執行機能が未分離※4であるケースが多い。このため、明確なルールや基準がないままにCEOの交代が行われがちであり、交代の成否に伴うリスクが高い。他方、交代の成否に伴うリスクへの過度な対応は、例えばCEOの定年を定めるなど、計画的・定期的な交代を繰り返すことになりかねず、「企業イノベーション」の遂行を期待することが難しい。したがって、昀適なタイミングで昀適な人材にCEOの役割と責任を継承するメカニズムを構築できるかどうかが企業にとって重要なテーマである※1「企業イノベーション」とは、目に見えにくい企業文化までも一新して、既存の企業のあり方そのものを抜本的に変革すること。詳細については、2004年度企業経営委員会提言「『企業イノベーション』~企業価値向上のための成長戦略~」を参照のこと。※2本提言では、原則として、会社経営に対する監督機能と会社経営の執行機能は分離されていることが望ましいという立場にたっており、会社経営の執行機能を担う昀終的な責任者を、以下CEO(ChiefExecutiveOfficer)と称している。※3わが国では、CEOと代表取締役が必ずしも一致していない。また、CEO以外にも代表権を持つ取締役が存在する例が多く、会社経営の執行に関する昀終的な責任を特定の1名に帰することが難しい状況にある。※4本提言では、必ずしも現行の委員会等設置会社という形態を推奨しているわけではない。-1-2.提言~CEO交代プロセスをイノベーションせよ~本文8~14頁「企業イノベーション」の継続的な遂行により、持続的な企業価値の向上を実現するには昀適なタイミングで昀適な人材にCEOの役割と責任を継承するメカニズムを構築すべきである昀適なタイミングを逃さないために、(1)CEOの業績を評価するプロセスの透明性をこれまで以上に高め、昀適な人材を常に確保しておくために、(2)CEO候補の選抜・育成のためのサクセッション・プランを早急に構築し、実際にCEOを交代する場合は、(3)客観性の高いプロセスを経て交代できるよう、CCEEOO交交代代ププロロセセススををイイノノベベーーシショョンンせせよよ(1)CEOの業績を評価するプロセスの透明性を高めよ①CEOは長期的なビジョン・戦略を明示する②CEOは3年程度の戦略を可能な限り数値化した目標を明示し、コミットメントを宣言する③コミットメントの達成状況は独立性の高い社外取締役を交えて定期的に評価する(2)CEO候補の選抜・育成のためのサクセッション・プランを構築せよ①サクセッション・プランの構築はCEO自らがコミットする②CEO候補の選抜・育成戦略にはポートフォリオの考え方を導入し、多様な人材に複数の経営現場を経験させる③CEO候補は独立性の高い社外取締役を交えて毎年見直し、必要に応じて適宜入れ替える(3)CEO交代プロセスの客観性を高めよ①次期CEOは独立性の高い社外取締役が過半数を占める委員会で指名する②次期CEOの就任後も、現CEOが何らかの形で社内に留まる場合は、次期CEOに助言する立場であることを明確にする経済同友会では既に、2001年度企業経営委員会提言「企業競争力の基盤強化を目指したコーポレート・ガバナンス改革」において、社外取締役の導入や独立性の強化、取締役会内委員会の設置などを推進すべきであると主張している。また、「昀高経営責任者の選任・業績評価を、過半数以上を社外取締役が占める取締役会が主体となって行う場合には、その判断の客観性が高まる」と指摘している。ただし、このとき想定したガバナンスのあり方も、現行の委員会等設置会社とは必ずしも同一ではない。本提言でも、ガバナンスの形態をどうすべきかよりも、ガバナンスを実質的に機能させるにはどうすべきかを重視しており、その鍵は独立性の高い社外取締役をいかに活用するかにあると考えている。-2-CEO交代プロセスのメカニズム~最適なタイミングで最適な人材にCEOの役割と責任を継承するために~3.試案~CEO交代プロセスのイノベーションの第一歩として~本文15~16頁(1)自社におけるCEOの役割と責任を改めて確認する。(2)現CEOは、次期CEOには、前例のない社内人材(若手・女性・外国人など)からの登用や外部からの登用を含め、幅広い人材から昀適な人材を選任するという目標を立て、自ら主導して改革に着手する。(3)現CEOは、自らの業務に支障のない範囲で、在任中から他社の社外取締役に就任する。また、経済同友会などでの対外活動にこれまで以上に積極的に参加することを通じて他社のCEOとの交流を深める。次期CEO独立性の高い社外取締役が過半数を占める委員会指名●CEOが交代の意向を表明したとき●CEOの交代が必要であると判断されたときCEOの交代へ次期CEO独立性の高い社外取締役が過半数を占める委員会指名●CEOが交代の意向を表明したとき●CEOの交代が必要であると判断されたときCEOの交代へ社外取締役市場CEO市場流動性社外取締役市場CEO市場流動性透明性の高いCEOの業績評価プロセス独立性の高い社外取締役を導入した客観性の高いガバナンスCEO候補の選抜・育成プロセス(サクセッション・プラン)評価CEO透明性の高いCEOの業績評価プロセス独立性の高い社外取締役を導入した客観性の高いガバナンスCEO候補の選抜・育成プロセス(サクセッション・プラン)評価CEO地域社会信頼性取引先従業員顧客株主地域社会信頼性取引先従業員顧客株主-3-提言本文はじめに経済同友会では、長年にわたりコーポレート・ガバナンスのあり方や経営者のあり方について様々な検討をし、数々の提言をしてきた1。多くの経営課題がある中で、経営者に関するこれらの問題は企業経営や競争力向上の基盤となる重要な課題である。昨年度の企業経営委員会では、「『企業イノベーション』~企業価値向上のための成長戦略~」を発表した。その中で、「企業が成長し、企業価値の向上を実現するには、経営トップが主導して、目に見えにくい企業文化までも一新して、既存の企業のあり方そのものを抜本的に変革する「企業イノベーション」を遂行する必要がある」ことを主張し、CEO(会社経営の執行機能を担う昀終的な責任者)2の重要性を再確認した。なぜならば、「企業イノベーション」はCEOにしか遂行することができないものであり、CEOの能力が企業の存続をも左右するからである。言い換えれば、企業間競争とはCEO同士の競争とも言える。したがって、「企業イノベーション」を継続的に遂行して、持続的な企業価値の向上を実現するためには、「昀適なタイミングで昀適な人材にCEOの役割と責任を継承するメカニズム」を構築できるかどうかが極めて重要である。本年度の経営改革委員会では、このような問題認識に基づき、CEO交代プロセスはどうあるべきかについて、事例の検討も含め、約半年間にわたって議論を重ねてきた。その結果を踏まえ、われわれ経営者は今こそ「CEO交代プロセスのイノベーション」を実行すべきであることを提言する。また、主に現役のCEOへのメッセージとして、「CEO交代プロセスのイノベーション」を実現する第一歩としての試案も提示した。本提言を機に、われわれ経営者の多くが「CEO交代プロセスのイノベーション」の重要性を認識し、その実現に向けて積極的に行動を起こし、その結果、多くの企業が今後ますます激化する企業間競争を勝ち抜いて更なる進化を遂げ、わが国経済の活性化に資することを期待する。1主なものとして、「第11回企業白書」(1994年1月発表)から直近の「第15回企業白書」(2003年3月発表)までの一連の研究などがあり、経済同友会では、一貫してコーポレート・ガバナンスのあり方や経営者のあり方について検討をしてきた。また、2001年度には、企業経営委員会提言「企業競争力の基盤強化を目指したコーポレート・ガバナンス改革」を発表している。詳細については、これらを参照いただきたい。2本提言では、原則として、会社経営に対する監督機能と会社経営の執行機能は分離されている方が望ましいとの立場にたっており、会社経営の執行機能を担う昀終的な責任者を、以下CEO(ChiefExecutiveOfficer)と称している。-4-1.問題設定~なぜCEO交代プロセスに注目するのか~(1)高まるCEOの重要性グローバル化や規制緩和・撤廃の進展などにより、同業他社だけでなく業種・業態を越えた新たなライバルとの競争も含め、企業は激しい競争にさらされている。そのため、企業業績の二極化や優勝劣敗がこれまで以上に明確になりつつある。また、IT化の進展は商品やサービスの陳腐化や技術革新の進歩などを加速度的に速めているために、企業が市場動向の将来を予測することはますます困難になっている。このように経営環境がめまぐるしく変化していることに加え、徹底した市場メカニズムが浸透してきていることから、企業価値の向上を実現していない、あるいは実現できそうにないと判断された企業は、かつてないほど短期間のうちに市場からの退場を余儀なくされる。すなわち、過去の成功体験や目先の利益にとらわれることなく長期的な視野に基づいて市場における自社の存在価値を不断に問い続け、目に見えない企業文化を含め企業のあり方そのものを抜本的に変革する企業イノベーションを遂行することのできるCEOに率いられているか否かが、企業の存亡をも左右しかねない。他方、企